きちんと手をかけてあげると、大切なモノがもっと光りかがやく

気乗りがしないことや忙しさにかまけて、ろくにお手入れをしていない雑貨類。
わたしの家にはそんなモノが多くあり、ずっと気になっていた。

そう、気にはなっていたのだが、どうにもやる気が起きずにいたのだ。

それが先日ふいとやる気になり、ついに懸案のお手入れをすることができた!
やり始めれば興に乗ってすいすいと手が動き、終わってみれば目の前には装いも新たなモノたちが…。

今回はそんな、長年のしこりを解消するに至った経緯や、やり終えてみての感想などを綴ってみようと思う。

わたしのこと

  • 年齢:28歳
  • 性別:女
  • 職業:少女漫画ライター
  • ライフスタイル:誰かと同居、インドア派、リモートワーク、夜型、外食派

面倒だったモノのお手入れを、する気になったワケ

使うばかりできちんと手入れをできていない、革のかばん。
雑貨屋さんでひと目惚れして買ったものの、綺麗にしなきゃなーとそのままになっている真鍮の香炉。
使わないからと放置していて、どんどん黒ずんでいく銀食器。

家の中に散らばるそういったあれこれを目にする度に、少し後ろ暗い気持ちになっていた。

モノのお手入れや片付けをきちんとできない、だらしない自分が嫌だ。
もっとモノを大切にできる人でありたかったし、気に入って買ったのに扱いがぞんざいになってしまうのはモノに対しても申し訳なかった。
それでも面倒臭さが勝って、ついつい後回しにし続けてきた。

けれど、今年の年末は例年より時間に余裕ができた。
しかも、来年は30歳になる節目の年。
30の大台を目前にして、「もっと自分を好きになりたい」「好きでいられる自分でいたい」という思いがむくむくと湧いてきた。

特別大きなきっかけがあったわけではない。
やりたい気持ちが少しずつ溜まっていって、ようやく満ちた。そんな感じだ。

お手入れをしたい雑貨は他にもあったけれど、今回は初手ということで欲張りすぎず先に挙げた3つのモノに着手してみることにした。

10年来の憧れに一歩近づく

やらなければと思いながら重い腰が上がらなかったのは、ひとえにわたしが怠惰だから。

だがそもそも、どうしてきちんとできない自分に罪の意識を感じてしまうのかと考えてみると、大学時代のアルバイトの思い出が一因だった。

渋谷にあったアルバイト先。
土地柄と、アート系の仕事だったこともあり、先輩はオシャレな人が多かった。
なかでもひとり、モデルをやっているファッションも物腰もカッコいいお姉さんがいて、わたしの憧れの存在だった。

その人がよく、仕事の休憩時間に革のベルトや金属のアクセサリーなどのお手入れをしていたのだ。
わずかな時間を無駄にせず、自分やモノを大切にしている姿は印象的で、ますます尊敬の念を抱いたものだ。

アルバイトをやめてからも、そのお姉さんのことがずっと頭の片隅にあった。
ああいう人になりたい。「それなのに自分は…」と我が身を振り返っては幻滅してしまう。
理想と現実の差が、罪悪感を生み出していたわけだ。

お手入れの仕方

ここで、それぞれのモノをどうやってメンテナンスしたか、簡単に記しておこう。
革や金属の扱い方はまったく知らなかったので、いくつかのインターネットサイトなどを参考に、自宅で簡単にできる方法を選択した。

赤い革のかばん

  • 1 乾いた布で拭いて、埃を落とす
  • 2 軽く水拭きする
  • 3 メンテナンスオイルを全体に馴染ませる
  • 4 少し時間を置いてから乾拭きする

オイルを塗る前に、かばんについている汚れを落とす。
それから、固く絞ったタオルで、さっと水拭きする。

革にとって、水は大敵。シミの原因になってしまう。
だがそれを逆手にとって、すでにできてしまったシミと周りの色を馴染ませるために、軽く水拭きをするという手法がある。
このかばんは裏面に大きくシミができてしまっていたので、試してみることにした。

だが、拭き始めてすぐに赤い染料が落ちてきてしまった。
水拭きは早々に切り上げ、家にあったメンテナンスオイルを、付属のスポンジを使って全体に塗っていく。

使うオイルの量の目安は、触ったらしっとりするくらいとのこと。
いまいちどんな感じかピンとこなかったが、これまで全然オイルを塗っていないので多めに塗ってみた。
2時間ほど日陰に吊るしたあと、再度乾拭きをして終了だ。

真鍮の香炉

  • 1 素材を確かめる
  • 2 乾いた布で拭いて、埃を落とす
  • 3 食器用洗剤をつけた綿の布で拭く
  • 4 水拭きして石鹼分を落とす
  • 5 しっかり乾燥させる
  • 6 シールの糊をベンジンで落とす

本物の真鍮だったら磁石がくっつかず、真鍮塗装をした他の金属であればくっつく。
金属の種類によってお手入れの仕方が変わるため、まずはこれが本当に真鍮であることを確かめた。

それから軽く綿の布で拭いてみると、それだけでくすみが取れて輝きが増した。
さらに食器用洗剤を混ぜたぬるま湯に浸した布で、表面の汚れを落としていく。

この香炉はラッカー塗装がされており、その上から拭いていくだけで簡単に汚れを取ることができた。
ラッカー塗装されていない真鍮や、ラッカーをはがして中を綺麗にしたい場合は、もっと複雑な工程が必要なようだ。

水拭きで石鹸分をしっかり落とし、1日ほど放置して乾燥させる。
これで終わりかと思いきや、値札シールが貼られていた所がまだべたべたしていたため、ベンジンを使って糊を落とした。

銀食器

  • 1 食器用洗剤で洗う
  • 2 塩を溶かし、アルミホイルを敷いた鍋で、銀食器を5分ほど煮る
  • 3 水ですすぐ
  • 4 やわらかい布で優しく磨く

何年も使っておらず、真っ黒に変色していた銀食器。まずは普通に洗って埃などの汚れを落とした。

お皿が完全に浸る量の水を鍋に沸かし、沸騰したところでアルミホイルを敷いて小さじ一杯ほどの塩を溶かす。
そこに洗ったお皿とスプーン、フォークを並べて入れ、5分ほど煮る。

重曹やシルバークリーナーを使う手もあるが、それらは銀の表面を削って綺麗にする方法。
今回は食器を傷つけない塩を用いることにした。

塩水から取り出した食器は、水ですすいでからやわらかい布で磨き上げる。
鍋には黒いカスなどが残っており、食器を拭くとさらに黒い汚れが取れた。
丁寧に磨き上げてみると大分輝きを取り戻したが、まだ少しくすんでいる印象だ。
しかも数日放置しただけで、みるみる黒ずんできたため、再度塩を入れたお湯で煮た。

2度目は鍋に入れただけで輝きが増し、磨き上がりも1度目よりもっと美しくなっていた。
何度でも塩と一緒に煮たいくらいだが、今回は一旦これで終了とした。

モノと向き合う充実した時間

じっくり見るだけでも、そのモノに対する気持ちが変わるものだ。
モノと向き合い集中的にお手入れをしてみたら、それぞれへの愛着が深まった。

かばんは拭きながら「こんなに傷があったなんて」と驚いた。シミも思っていたより大きかった。
ついてしまった傷は消せないし、水拭きをしても今回はシミを目立たなくさせるような効果は得られず…。
だがオイルをたっぷり塗り込んだことで、全体の艶が増し、佇まいに品格が出た気がする。

真鍮は、軽く拭いただけでも台座部分が光り出し、感動した。
あまりピカピカになりすぎても、新品のようで味がないかもしれないと心配していたが、ほどよく経年変化の風合いも残り、満足のいく仕上がりだ。

銀食器は、作業が特に楽しかった。
磨いている間は無心になれて、食器とともに心もすっきりリフレッシュできたようだ。
とはいえ、磨いてもちょっと放置しているとまたすぐくもってしまうので、本当に毎日のお手入れが大事なのだなと実感させられた。

また、二度目の時にちゃんと塩が溶け切っていなかったのか、鍋の中に入れている時間が長すぎたのか、お皿の表面に黒い斑点が出てしまった。
次に磨く時にすんなり落ちてくれればいいが、もしかすると塩以外の方法も検討する必要があるかもしれない。
とりあえずしばらく使う予定もないので、なるべく空気に触れない方法で保管しておきたい。

思った以上に綺麗になったものも、大きな変化はなかったものもあるが、手をかけたことで、これからも長く大切に使っていきたいとしみじみ感じた。
何より、そのモノに集中してお手入れをしている時間は、とても充実したものだった

無理なく、お手入れを習慣づけ

手をかければかけただけ、モノは美しくなり、大事にしたい気持ちが高まる。

もちろん、一度だけでは駄目だ。
習慣づけて、お手入れを継続していくことが重要になる。

毎日コツコツというのは、わたしにはまだちょっと無理だけれど…心とモノのバランスを上手くとって、無理のない範囲で大切に扱っていきたい

皆さんも、身近なモノのお手入れをサボりがちだな、と思ったら、気が向いたときに手をかけてみてあげてください。
きっとそのモノのことがもっと好きになるはず。

逆盥水尾

さかたらいみおと読みます。昭和の少女漫画が好きで、最近はもっぱら漫画を読みふけりながら普及活動をする日々です。