こだわりなんてないほうが自由でいられる。好きな場所で暮らしながら働く、デジタルノマドという選択

ふみ

WEBデザイナー

大阪府出身・41歳、WEBデザイナー・国際唎酒師。キャンドル作家、日本酒バーでのアルバイトを経て35歳からWEBデザインを学ぶ。コロナ禍を機に拠点を持たないノマド生活を始め、2022年以降はフィールドを世界へ。行きたい場所、見たい景色のなかで、暮らしながら働く日々を送っている。現在、デジタルノマド生活5年目。

「きれいな景色を見ながら仕事がしたい」。ふみさんがパソコンひとつ持って日本を飛び出したのは2022年。以来、アジアや南米に拠点を移しながらデジタルノマド生活を送っている。

なぜ、海外?なぜ、ノマド?思いきった行動に対して、人は何かと理由を求めがち。

でも、ふみさんの考えに触れると、それがどれだけチープな質問であるかがわかる。現在、メキシコで暮らすふみさんの“いままでとこれから”。そこには、しなやかな生き方があった。

いつでも、どこにでも行ける

――ふみさんは今、どこにいらっしゃるのですか?

メキシコのサンクリという街です(2025年2月現在)。Airbnbで見つけた部屋でWEBデザインの仕事をしながら暮らしています。

――デジタルノマドを始めたきっかけとは?

アルバニアの海辺の街で借りたアパートの部屋からの風景。

離婚を経験し、自立するために手に職をつけたいと思って35 歳からWEBデザインの勉強を独学ではじめました。並行してアルバイトをしていた日本酒バーが、コロナ禍で閉店したのをきっかけに、WEBデザイン一本でやっていこうと思ったんです。

そのときに「パソコンひとつで仕事ができるんだから、働く場所は(地元の)大阪じゃなくてもいいんだ」と気づいて、ホテルサブスクの「HafH」を利用したりしながら、日本各地を転々としながら働くノマド生活を始めました。海外での生活にも興味はあったんですが、ノマド生活を始めた当時はコロナ禍で海外渡航への制限があったので、実際に行けたのは2022年になってからでしたね。

――ノマド、しかも海外というのは、大きな決断だったのでは?

ハンガリーのプダペストで借りたアパートの部屋。

私にとっては決して特別なことではなくて、気がついたら飛行機に乗っていた感覚なんです。海外に行くための準備をしていたわけでもないし。

強いて理由をあげるなら、モニターから視線をはずしたときに、きれいな景色があるといいな、そんな生活がしたいなと、ふと思ったからです。もともと旅行好きということもあって、パソコンとチェンマイ行きの片道航空券を持って、日本を飛び出したのが2022年。それからはベトナム、ブルガリア、メキシコなど、拠点を変えながら海外でデジタルノマド生活を送っています。

働き方も暮らし方も、自分次第

メキシコ、グァナファトの街並み。

――海外で拠点を移す際、どんなことを基準に選んでいるのでしょう。

一番は気候です。雨季は避け、過ごしやすくて暖かい場所を選ぶようにしています。次に治安と物価。特別な理由はなくて、旅先を選ぶ感覚と似ているのかな。

拠点を移す理由は、一言で言うなら気分転換です。居心地が良ければ数ヶ月滞在することもありますが、そこにルールは設けていません。滞在する部屋はAirbnbだったり、シェアハウスやゲストハウスだったりとまちまちです。

メキシコのグァナファトで借りていた部屋。

ネット環境があって、居心地が良いこと。宿を選ぶときに条件を上げるとすればこれくらいです。こだわりやルールを設けしまうと、選択肢を狭めてしまう気がするので。働き方も暮らす場所も、自分でコントロールできるけれど、コントロールしすぎないほうが楽しいと思っています。

私は、海外での暮らしに強いこだわりがあるわけではないんです。飽きたらいつでもやめようと思ってますし(笑)。行きたいところがあったら行く、ただそれだけです。

誰かと話したくなったら、人が集まる場所に行ってお酒を飲んだりすることもあります。そこで親しくなった友人もいますが、それって海外に限ったことじゃない。場所が違うってだけのことなんですよね。

海外ならではの不便も楽しむ!

ベトナムのハノイのカフェにて。ネット環境があればどこでも仕事ができるのが強み。

――海外での暮らしで不便に感じること、トラブルの経験はありますか?

お湯が出ない、電気が止まる、Wi-Fiが安定しないなんてことは日常茶飯事です(笑)。日本と違うことにいちいち目くじらを立てるより、その不便さをも楽しめる自分でありたいと思っています。だって、いちいち腹を立てていたらキリがないですから。

日常での不便はそんな感じで受け入れてられるんですけど、大好きな日本酒が飲めない不便さだけは、時々つらいときもありますね。飲めてもびっくりするほど高かったり、そもそも売ってなかったりするので。

健康面でのトラブルは、もともと体が丈夫なこともあって一度も経験していません。気をつけていることは生水を飲まないこと、フルーツをよく食べることくらいです。

――もしかしてその美肌はフルーツのおかげ!?(ふみさんはすごい美肌の持ち主)

あはは。乾燥している地域に行っても肌トラブルがないのは、もしかするとフルーツのおかげかもしれませんね。

優等生時代も、今も、私は何も変わらない

マレーシアのペナンで借りたコンドミニアムでの仕事風景。

――行動力のあるふみさんは、どんな子ども時代を過ごしたのですか?

ふふふ。意外に思われるかもしれませんが、めっちゃ優等生でした。勉強もスポーツもできたので、自分で言うのもなんですが、いつも頼られていましたね。バスケットボール部だったのですが、陸上部よりも走るのが速かったので、大会の助っ人に呼ばれるなんてこともよくありました。

――すごい。まるで少女漫画の主人公みたい。

今思えば、子どもの頃から向上心と好奇心は人一倍あったように感じます。優等生だった学生時代しか知らない人から見れば、髪をピンクや青に染めて、海外を転々としている今の私を意外に思うかもしれません。でも、根本にあるものは、いつの時代も変わってはいないんです。

どこにいたって「好き」を諦めない

メキシコ、サンクリストバルデラスカサスの街。

――鮮やかな青い髪、とてもお似合いです。

ありがとうございます。ノマド生活を始めるタイミングで、まずピンクに染めたんです。たぶん、生活をガラッと変えるための勢いが欲しかったのかな。それからはずっとピンクだったのですが、海外ノマドを始めて半年後くらいに青にしました。理由は、髪が伸びたときに根本の黒髪が目立ちにくいから。

美容院の質や技術に関しては日本に勝るものはないと思っているので、そろそろ髪を染めたいな…と思ったときが一時帰国のタイミングだったりします。

――海外での美容やファッションって、どうされていますか?

マツパもネイルも行きますよ!海外にいるからといって、きれいでいること、好きなことは妥協しません。というよりも、日本であたりまえにやっていたことを、海外でもあたりまえにやっているだけと言った方が私にとってはしっくりきます。日本のような手厚いサービスは期待できませんが(笑)、それも楽しみたいと思っています。

ファッションに関しては、シーズンでテーマを設けたり、そのときの気分に合わせて服を選んでいます。滞在する土地の風土や文化に合わせるのも楽しいです。これも日本にいたころと同じで「海外に行ってからファッションも美意識も変わった!」なんてことはないですね。

海外にいるからといって、何かを無理に変えたり、合わせたりする必要はないと思うんです。もちろん、感化されることはあります。でも、だからといってこれまでの人生を否定したくないし、海外ノマド生活を人にすすめるのも、なんか違うと思うんですよね。向いていない人もいると思うし。人それぞれに合う生き方があって、それが私はたまたまノマドだっただけなんです。

人生の休暇も、キャリアアップも

メキシコ、メリダで出会った野生のフラミンゴ。

――次の拠点はもう決めていますか?

メキシコ南部のアオハカと、グアテマラを考えています。その後は3ヶ月ほど仕事を休んで、ちょっとのんびりしようかなと。理由はとくになくて、純粋に旅を楽しみたいなと思っただけです(笑)。

――今後のノマド生活での目標をお聞かせください。

ひとつは、海外の企業と仕事をすることです。私の仕事は成果物がすべてなので、どこに住んでるかはもちろん、国籍も人種も関係ありません。それを最大限に生かすためにも、いろいろな国の文化に触れて、技術と知識を磨いていきたいです。

ふたつめは英語力を上げること。友人とのコミュニケーションや買い物に必要な会話などは問題なくできても、仕事となると複雑な会話も出てくるので。私のような技術職は、言葉以上に感性やスキルを重視される場合もありますが、いい仕事をするためにはある程度の英語力は必要だと思っています。

私が私であることを楽しみ続けたい

――こだわりやルールは設けないとのことでしたが、生きるうえで、大切にされていることはありますか?

どんな選択をしたとしても、自分らしくありたいと思っています。今が一番楽しいと言えるけれど、キャンドル作家だったときも、日本酒バーで働いていたときも、その時々を楽しいと思って生きてきました。それはこれからも変わらないし、変えたくないと思っています。

――これからのふみさんが、目指す姿はありますか?

これからもやりたいことを、やりたいときに、思いっきり楽しめる自分であり続けたいです。それが、私が目指す私かなと思います。

おだりょうこ

猫と旅、音楽と映画で形成されたライター&エディター。旅欲が止まらない旅ジャンキー。雑誌編集、テレビ局勤務を経てフリーランスに。料理は作るの食べるのも得意だったりする。