習慣化のコツは、自分との約束を大切に、変化を恐れないこと

これをやると決めて習慣化することが、昔から苦手だった。ところが、これは自分との約束だと思って、自分を信じて委ねてみたら、心地よい習慣化する生活リズムを見つけられるようになった。

やりたいことのはずが義務だと感じてしまって

やりたいことは無限にあるのに、いくら時間があっても足りない。そんなふうに感じる人は私だけではないはずだ。私の場合、やりたいこととして、読書、ストレッチ、料理、ドラマや映画鑑賞などが挙げられる。他にも、美術館や展覧会に行きたい、あのカフェに行きたい、旅行に行きたい、習い事をしてみたい、といったように家から一歩踏み出す必要があるものも、ランクインしている。さらには、日々のもっと小さな望みもある。こうしてやりたいことは増えていくばかり。

やりたいことを思い描くのは、とてもワクワクする。日々の希望だ。けれども、やりたいことにプラスして、日常にはやらないといけないことがたくさんある。すると、やりたいことをする時間がうまく取れず、なんだか心のもやもやを感じてしまうことがある。やりたいことを日々に落とし込んで、習慣化していきたいのに、続かない。そんな自分に対して、なんでできないの? といったように自分を責めてしまう。

感情に負の連鎖が起こると、いつのまにかやりたいことが、「しなければならない」にすり替わってしまうようになった。料理をしたいはずだったのに、料理をしなければならない。読書をしたいのに、読書をしなければならない。といったように、義務のように感じてしまうようになった。また、私はちゃんとできるのだろうかと自分を疑ったり、もっとちゃんとしないとと叱咤して、自分が自分の監督者になっていた。

To Do リストではなく、自分との約束

日々の「やらないといけないこと」と「やりたいこと」を手帳やメモ用紙に書いたりしている。いわゆるTo Doリストだ。可視化することで、いったん自分の頭の中から出すことができるので、すっきりする。おもしろいことに、書き出すことで、逆に自分の中に再インストールされたような感覚になって、今日自分が向きあうべきことに意識が向くようになる。

だから書くことは大事だと思っている。でも書くだけでは、達成できない。時間管理や行動力も必要になってくる。けれども、もっと大事なことは自分に向ける感情のような気がしている。私は先ほどもいったように、自分を疑って「これができない自分はだめだ」と自身を責めてしまう。その感覚が自分をどんどん追い込んでいく。信じてくれない人のために頑張ることは難しいように、自分のことを信じていなかったら、行動するパワーが生まれないのは当然のような気がしたのだ。

自分を大事にするというニュアンスを含んだ問いかけで、「人との約束は守れるのに、自分との約束は守れていますか」というのを耳にすることがある。例えば、人との会う約束や頼まれごとは守れるけれど、今日は早く帰って映画を観るぞと決めていたのに、同僚にご飯に誘われて、断れず行くことになってしまった、みたいなこと。

耳にしたときからなんとなく気になっていたのだけれど、今になってTo Doリストは「自分との約束事」なのかもしれないと思うようになった。やらないといけないことではなく、自分を信じて託してみる。信じてくれたのなら、それを裏切らないように、約束を守れるように、精一杯取り組む。

大げさなように聞こえるかもしれないけれど、捉え方を変えることで、まったく違う景色が見える瞬間があるのだと感じた。今日しようと思っていた数々のリストが、やらないといけない重苦しいものから、少し柔らかさを持った大切なものへと変化したように思う。意識がチェンジしたことで、私は少しずつ自分との約束を果たせるようになっていった。

明日の自分に託してみる

「約束を守れるようになった」というのは、私にとってふたつの意味合いを持っている。ひとつは、自分のやりたいことを自分のために叶えてあげようと思って行動できるようになったこと。もうひとつは、たとえ約束を守れないことがあっても、自分を信じることをやめず、また明日の自分に託すことができること。

もちろん、すべての約束を守ることができたらうれしいし、なんだか誇らしい。でも、また次の日の自分に委ねることも、大事な選択なのではないかと思う。明日もよろしくといって、明日の自分に期待する。約束を守る、守らないではなく、どのようにその約束を果たしていくのかに向き合い続けていくことが大切なのだと思うようになったのだ。

例えば、私の場合、夜にストレッチをしようと思っているけれど、結局その時間がうまくとれなくて、朝にしてみたら意外とできたり。夜に読書をしようとして机に向かっても、どこかで早く寝なければと気がせいてしまって、結局うまく読書を楽しめなかったりもした。そこで、布団に入ってから少し読むようにしてみたり、隙間時間で読むようにしてみると、いいなと思えた。どうたら心地よく過ごすことができるのかを考えて試行錯誤するのも、自分への信頼へとつながっているのだと思う。

自分なりのゴールデンタイムを見つける

私はずっと夜型だと信じて疑わなかったのだけれど、あるときふと、朝型にシフトチェンジできないだろうかと思った。夜だと朝を迎えるまでに時間がたっぷりあるような気がして、それがうれしくて、夜にいろいろと取り掛かることが多かった。けれども、それを続けることは難しく、次第に朝起きるのが辛くなっていき、知らないうちに疲れが蓄積されていく。結果、夜の集中力はどんどん落ちていき、何かしようとしてもすぐにベッドに倒れ込んでしまうようになった。

そこで、生活を変えたいと思い、朝型への一歩を踏み出すことになったのだ。朝に時間を持つためには、24時までには必ず寝るように心掛けている。朝に30分でも1時間でも出社前に時間をつくることで、やりたいことを習慣化しやすくなった。そして、意外と私は朝の方が向いていると思うようになった。

これは自分でも驚きだ。短い時間で何かしようとすると集中力が上がるような気がする。朝に行動できると、仕事前のウォーミングアップができたり、いいリフレッシュになる。自分にとってのゴールデンタイムを見つけられた気がしてうれしかった。それは、以前の私のように、自分が自分との約束を破らないかと怖がるのではなく、自分の約束を叶えるためにはどうしたらいいかと考えられるようになったから、見つけることのできたちょうどいい生活のリズムなのではないかと思う。

気持ちのいいペースを見つけられても、それが崩れてしまうこともある。仕事の忙しさ、心身の健康状態、取り巻く環境などによって、生活も自身も変わっていく。私たちは日々変化のなかにいる。だから今心地いいと思っているものが、ずっといいとは限らない。うまくバランスが取れなくなったり、心地が悪くなることもある。変えることを怖がらないで、自分のいいなと思える生活を探し続けていきたい。積み上げてきた習慣がたとえ壊れてしまったとしても、きっといつでもはじめられると思っている。

“習慣化”の関連記事

筆者:東樹詩織さん
筆者:杉浦百香さん

はしもとかほ

「誰かの人生のものがたりを紡ぎたい」をテーマに、インタビューライターとして活動中。趣味は京都散策、読書、写真、食、アートに触れること。いつか書評を書くのが夢。