散歩って、どうやって楽しめばいいの?

子どもが生まれるまで、散歩とは縁遠い暮らしをしていた。家から出るのは、あくまで移動のためであり、明確に目的地が存在している。

どうやら、散歩というのは、移動の過程そのものを楽しむことらしい。ぶらぶら歩くことで、気分を晴れやかにする。風景を眺めながら思索にふける。そんな時間の使い方は、性に合わないというのが正直なところだ。手段が目的化しているようで、なんだかおさまりが悪くて。

ところが、そんな私が散歩に“挑戦”することになった。生まれてから1ヶ月が過ぎた子どもを、外の空気に触れさせるためだ。我が子のため、という目的はあっても、やはり漫然と歩くだけではつまらない。散歩を楽しむために、試行錯誤する日々が始まった。

散歩コースを考える

散歩を始めるにあたって、まずすべきことは何か。それは、散歩コースを決めることだ。

せっかくメイクまでして外に出るのだから、1時間ぐらいは歩きたいところ。とはいえ、住宅街を歩き回っているだけじゃ、きっと飽きてしまう。お店がある程度集まっているような場所を通るコースにできないだろうか。

Googleマップを開き、家から徒歩約30分圏内のエリアを見てみると、最寄り駅以外にも歩いていけそうな駅がいくつかあることがわかった。駅前であれば、きっといろいろなお店があるはずだ。とりあえず、その辺りまで向かってみることにする。

ただ、どうしても具体的な目的地を設定せずにはいられなくて、道中にあるベーカリーを調べてから出かけることにした。出産後、突然パンに目覚めてしまった私。おいしいパンに出会えると思えば、散歩がますます楽しい時間になる。

そうやって始まった散歩習慣により、我が家の食生活は充実していった。訪れた町で買ったパンやスイーツが毎日のように食卓に並ぶ。行ってみたいお店も再訪したいお店もどんどん増えて、散歩へのモチベーションは尽きることがない。

とはいえ、そんな生活を続けているとお金が飛ぶように消えていく。そもそも、これは散歩と言えるのだろうか。徒歩で買い物に出かけているというだけではないのか?

お金を使わない散歩とは

具体的な目的地を設定するのはいいとしても、お金を使わずに帰ってくることはできないだろうか。そこでまず思いつくのは、図書館へ行くことだ。本を借りるだけじゃなく、館内に滞在して雑誌や写真集を眺めれば有意義な時間を過ごせるはず。

また、神社やお寺に行ってみるのはどうだろう。Googleマップで調べると、歩いて行ける場所にある神社仏閣の数は、思っていた以上に多かった。桜や紅葉が美しいと評判の場所もある。カメラを持って、境内の撮影をするのも楽しそうだ(もちろん撮影可能な場所で)。

時間に余裕がある日は、美術館や博物館へ行くのもいい。徒歩で行くには遠いところが多いので、電車に乗って向かい、鑑賞が終わってから周辺をぶらぶら歩いてみる。

美術館や博物館は、もちろん有料の場所がほとんどだけれど、無料で何度も常設展を観られる年間パスポートを用意している施設もある。子どもを連れていると、「ベビーカーで入れるか」「授乳室はあるか」など気にかけなければいけないことが多いため、同じ施設に通うのは気が楽だ。

通いすぎて飽きてしまったら、『東京・ミュージアム ぐるっとパス』を使ってみるのもいい。東京都内(および近郊)に限られるが、美術館、博物館、動物園、水族館、植物園の入場料が無料もしくは割引になる。2,500円で2ヶ月間使用できるので、短い期間でいろいろな施設を回りたいときにとても便利だ。2025年は、なんと102もの施設が対象になっている。対象施設の一覧には、初めてその名前を目にする施設がたくさんあった。生まれ育った場所なのに、東京のこと、意外と知らないものだなあ。

歩く時間も楽しむ

目的地のアイデアはこれで十分。何年だって散歩を続けられそうな気がする。

ただ、徒歩で移動する距離が延びれば延びるほど、歩いている間に退屈することが多くなってしまった。子どもが起きていれば話しかけることもできるが、まだ生後3ヶ月なので大抵寝入っている。

そこで導入したのが、骨伝導イヤホンだ。ベビーカーで子どもを連れているため、周囲の音を完全にシャットアウトしてしまうイヤホンは使用がためらわれるが、骨伝導イヤホンであれば耳を塞がずに済む。

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車や自転車の走行音なども聞こえるぐらいの音量に設定し、Podcastを流す。これで、移動の時間を有意義に使えるようになった。聴くのは英語のニュースが多い。ヒアリングの練習と、最新トピックのキャッチアップが同時にできて一石二鳥だ。

子どもがもう少し大きくなったら、歩くだけの時間もきっと賑やかになるのだろう。そのときが来るのが楽しみだ。

おわりに

散歩を始めてから、自分の暮らす町をより好きになれた。外に出れば、必ず何か新しい発見がある。いつもと違う道を通るだけで、町の新しい表情を見つけることもある。

そして、散歩は、小さな幸せの景色にも出会わせてくれる。たとえば、夫と夜に食べるためのスイーツを買って帰路につく夕暮れどきの、淡い桃色の空のような。

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執筆:山下 健太さん

東樹詩織

食や旅の領域でPR・ブランディングに携わる傍ら、執筆活動を行う。アートと本にのめり込み、「as human footprints」名義でZINE出版を開始。写真と動画の撮影・編集も。最近の関心事は、アジア各国のカルチャー、映画、海外文学、批評、3DCG、AI。キャンプ好きが高じて、東京↔︎信州・上田で2拠点生活中。