20年ほど読書から離れていたが、最近また、本を読むようになった。
理由はふたつあって、どちらもすごく単純なものだ。ひとつは、よく利用する駅でスマホの電波が繋がりにくいことが多々あり、待ち時間を持て余すようになったから。もうひとつの理由は、SNSと距離を置こうと思ったからだ。
SNSの情報はどんどん流れてきて、きりがない。意志をもって見ているなら良いが、惰性でただ眺めている時間がもったいないと感じるようになった。
「読書をしたいのに時間がない」と思い込んでいたけれど、SNSを見ている時間を充てればお釣りがくるかもしれない。そう思って再開した20年ぶりの読書は、思わぬ喜びをもたらしてくれた。今回はその魅力についてお話ししたい。
読書の思い出
小さい頃は読書が大好きで、4歳のころから絵本を自分で読んでいた。小学2年生のときには学級文庫をほとんど読み尽くし、最後に手に取ったのは、文字数が多くて読むのをためらっていた『大きな1年生と小さな2年生』古田足日(株式会社 偕成社)だった。内容はもう思い出せないが、数日かけて読み終えたときの達成感は今でも覚えている。
学級文庫を制覇したあと、もっと本が読みたくて図書室に行った。高い本棚のすみずみにまで、ずらりと並ぶ本。見たことのない世界と、読んだことのないたくさんの本にワクワクした気持ちは、今でも覚えている。そんな原体験があるからこそ、今また、本に還ろうと思ったのかもしれない。
やっぱり紙の本が好き!

原体験が紙だからというのも大きいが、読書は断然、紙派である。電子書籍では感じられない、紙の本の良さをお伝えしたい。
- 物としての魅力
- 五感を刺激する
- 集中しやすい
- 自分好みにカスタマイズできる
◼️物としての魅力
本屋で本を選ぶとき、見た目はとても大切だ。
あらかじめ買う本が決まっていない限り、無数に並ぶ中から「これは」と感じる一冊に出会えるかどうか。まず装丁やデザインにビビッと来なければ手に取らないし、ネットや書評で知った本でも、タイトルより書影の印象が残っている場合が多い。
本を開き、紙の質感・インクの色・文字の大きさや書体・図や挿絵などを確認する。それぞれに著者やデザイナーさんのこだわりが詰まっている。
そんな“本の世界観”をまるごと味わえるのは、紙ならではの楽しみだし、読む前から読書は始まっていると感じる。
◼️五感を刺激する
私にとって特別なのは、刷り立て特有の紙とインクの香りだ。本を開いた瞬間、ふわっとただようその香りに出会えると、幸せな気持ちになる。
香りは時間とともに少しずつ薄れ、やがて消えていく。その儚さにも、思わずキュンとする。
紙だからこそ感じる手触りも魅力だ。読書しているときはあまり意識しないが、実は手の大半は表紙に触れている。ちょっとざらっとしているとか、滑るようにつるつるとか、本によってさまざまだ。質感やページをめくる音も含めて楽しみたいなと思う。
そして読み終わったあとの、裏表紙をそっと閉じる瞬間。余韻とともに、本の重みが手に伝わってきて、じんわりと達成感が押し寄せてくる。その豊かな瞬間がたまらなく好きだ。
◼️集中しやすい
タブレットやスマホの場合は、通知や広告が突然入り込んできて、集中が途切れてしまうことがある。でも紙の本の場合は、その心配がない。
本を手に取って、ページをめくる。その行為そのものが「これから読書をするぞ」という自分自身への宣言のようで、自然と心が読書に向かっていく。
◼️自分好みにカスタマイズできる
紙の場合、気になる箇所にふせんを貼ったり、マーカーを引いたりできる。電子書籍でも可能だが、ふせんやマーカーのサイズや色にこだわったり、お気に入りのしおりやブックカバーを使ったり、自分好みにカスタマイズできるのは、紙ならでは。
時間とともに開きぐせや折り目がつく。汚れたりするかもしれない。それも含めて、だんだん自分のものになっていく。その過程も楽しみたいなと思う。
読書のメリット・デメリット

20年ぶりの読書は、忘れていた喜びを取り戻してくれた。読書を再開したことで感じているメリットと、ちょっとしたデメリットを紹介する。
読書のメリット① すきま時間の活用
待ち時間が苦にならなくなったし、すきま時間を持て余すこともない。続きが読みたいがために、ほんのわずかなレジ待ちやエスカレーターに乗っている間でも、本を開くようになった。
読書のメリット② 没入することで満たされる
目で文字を追って、さらにページをめくる。本の世界にどんどんのめり込んでいく。
気がつけば現実の時間や雑念を忘れて集中している。
そんな良い意味での現実逃避ができるのが、読書の魅力だと思う。
読み終えたあとは、頭も心もすっきりして、満たされた気持ちになる。
読書のメリット③ 思考の旅ができる
「私の場合はどうだろう」と自分に置き換えたり、「私もそんなことあったな」と思い出したり、「なるほど、こんな解決策があったか」と思考が深まったり。
と思えば、書かれた一文をきっかけに、全然違うことを考えてしまって読書がはかどらないこともある。
とにかく集中して、一冊をすぐに読み切ってもいいし、思考を飛ばしてちょっと寄り道してもいい。その人にしかできない、思考の旅を楽しめるのが、読書の醍醐味だと思う。
読書のデメリット
読書は良いことばかりだが、デメリットもある。まず紙にしてもタブレットにしても、持ち歩く荷物が増える。小さなカバンには入らないこともあるし、重い。
私の場合は、『感性のある人が習慣にしていること』SHOWKO(クロスメディア・パブリッシング)を読んで財布を三分の一の大きさにしたおかげで、カバンに余裕ができ、本を持ち歩くのも容易になった。
そしていちばん大きな問題は、支出が増えることだ。それに本棚にも限りがあるので、置き場所にも困る。この点を解決すべく、今後は図書館も活用していきたい。
最後に
昔は「趣味は読書です」と簡単に言っていたが、今は意識しないと本を読む時間さえとれなくなってしまった。本は私を知らない世界に連れて行ってくれる。歩めなかった人生を歩ませてくれる。たった一度の人生を、2倍にも3倍にもふくらませてくれるのが読書だと思うのだ。