暑い。とにかく暑い。
朝起きた瞬間から、すでにもう疲れているような気がするのは、たぶん気のせいじゃない。
そんな夏に、なぜか毎年作ってしまうのが、赤紫蘇のジュースだ。
目覚めたてのぼんやりした頭で、冷蔵庫を開けて、ルビー色の液体を見つけたときの「勝った」感。
効能?整う?なんかすごく健康に良さそう?
そういうのは、たいてい後付けだと思っている。
ただ、この色と香りに、毎年また惹かれてしまう。今回はそんなお話。
紫蘇ジュースがくれるもの(たぶん)
「アントシアニンが〜」「クエン酸が〜」みたいな話は、たぶんもっとちゃんとしたサイトに書いてある。私はそれを読んで「へえ〜」と思いながら、翌年には忘れている。
でも、紫蘇の香りを煮出したときの、あの湯気に包まれる感覚だけは、ずっと覚えている。
どこか懐かしくて、でもちょっとクセのある青い匂い。
それが部屋に満ちてくると、なんとなく、整う。
いや、整ったような気がする。
紫蘇ジュースの材料(というほどのものでもない)
材料(だいたい)
- 赤紫蘇の葉:袋いっぱい(300gくらい?)
- 水:1.5リットルくらい(鍋に入りきるだけ)
- グラニュー糖:手に余らない程度(300〜400g)
- リンゴ酢:20gくらい(なければ酢でもOK)
紫蘇ジュースの作り方(やってみればわかる)

1.赤紫蘇の葉を洗う。ものすごい量なので、ここでちょっと後悔する。
2.大きな鍋でぐつぐつ煮る。家中が「青じその湯」に包まれる。
3.葉を取り出して、砂糖を入れる。気がついたら味見しすぎている。
4.火を止めてクエン酸を入れると、どぎつい紫が一瞬で透明感のある赤に変わる。この瞬間、毎年ちょっと感動する。
冷めたら瓶に入れて、冷蔵庫へ。冷やしただけで自分を褒めてあげたくなる。
大人になると、だれも褒めてくれないからね。
飲み方の自由さがうれしい
- 水で割って、ほっと一息
- 炭酸水で割って、なんかおしゃれっぽい感じに
- アイスにかけて、罪悪感をごまかす
- 凍らせて、あっという間に忘れる(そして数ヶ月後に発見する)
味は、毎年ちがう。気分も、ちがう。
でも、「この色の飲みものがある生活」ってだけで、なんとなく生きてる感じがするのは不思議だ。
ちゃんとできない自分を許せる飲みもの
毎日きちんと整えて、栄養バランスの取れた食事をして、ゆるぎないメンタルで夏を乗り切れるような、そんな人には、このジュースは必要ないのかもしれない。
私は無理。無理すぎる。
だから、こういう「ちょっとだけ頑張る」手仕事が、夏のささやかな支えになる。
うまくできてもできなくても、自分で煮出して作ったという事実が、なぜか心のどこかに効いてくる。
「まあ、わたしも悪くないじゃん」とか思えてくるから不思議。
冷蔵庫の奥に、夏のしるし

今年も、冷蔵庫のいちばん奥に、紫蘇ジュースの瓶を置いている。
赤い色が、暗がりのなかでぼんやり光っている。
開けるたびに、「あ、わたし今年もやったんだ」と思う。
それだけで、なんとなく、夏を乗り切れる気がしてくる。
気がするだけかもしれないけれど、気がするって、案外だいじなことだ。