忘れられた記憶を求めて。香りだけではなく、絵や言葉で選べる「ERAM」の香水

20世紀を代表する長編小説のひとつ、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』。

第一篇「スワン家のほうへ」には、主人公が紅茶に浸したマドレーヌを口にした瞬間、その味や香りから幼いころの記憶が鮮やかに蘇ってくるシーンが記述されている。これに由来して命名されたのが“プルースト効果”だ。

プルースト効果とは、特定の香りを嗅いだときに、その香りに紐づいた過去の記憶や感情が自動的に蘇ってくる現象のことである。また味覚や嗅覚などの感覚によって、偶然蘇った記憶のことを“無意志的記憶”とも呼ぶ。

ぼくは香りに対して、プルースト効果のような“偶然記憶を思い起こす機能”を期待している部分があるかもしれない。

香りにより、偶然蘇る、家族との苦い思い出

たとえば、日が暮れたときにどこかの家から漂ってくるカレーの香り。「うわぁ、いい匂いだな。お腹空いたな」と思うのと同時に、子どものころの記憶が蘇ってくる。

シングルマザーだった母が、仕事から帰ってきて「今日忙しかったから手抜きでごめん。カレーでいい?」とぼくと兄に問いかける。それに対してぼくは「えぇ、またカレー」なんて文句を垂れてしまっていた。

「忙しいのに、ありがとう」と感謝の言葉のひとつでも伝えればよかった。そんな懐かしさと後悔が入り混じる思い出のひとつである。

ほかにも、部屋やトイレに置く芳香剤からラベンダーの香りがしたとき、昔、初夏に家族でラベンダー畑を見に出かけた記憶が蘇ってきた。

とても暑い日だった。そこで涼しさを求めて、標高千数百メートルの牧草地にあるラベンダー畑に、家族で出かけることになった。学校の校庭よりも遥かに広い畑に、数万本のラベンダーが咲き誇っていた。

そんな紫の絨毯を目の当たりにし、「涼しいし、いい香りだし、綺麗だね」と深呼吸をしたり、ラベンダーソフトクリームを食べて、「ちょっと寒いね」と震えていたりする母。そんな姿を見て、とても嬉しい気持ちになったのだけれど、素直になれず、冷たく当たってしまった。これも苦い思い出のひとつだ。

どちらもいい思い出とは言えない。ただ思い出すと胸がギュッとなり、忘れてしまうのはどこか寂しく思う。

もしかしたらこれらの記憶は、いまの自分を構成する大切な一部なのかもしれない。だからこそ、自分の奥底に眠っていた記憶を蘇らせてくれた香りに、少しばかりの感謝の念を抱くこともある。

それに、思い出そうという意志を持って思い出せる記憶とは違い、その香りを嗅がなければ思い出すこともできなかったかもしれない。その偶然性がとても貴重で、尊く感じるのだ。

香りだけではなく、多感覚で選べる「ERAM」の香水

これからも、香りによって「こんな日もあったな」と昔のことを愛おしめるように、香りをまとうことを考えてみたい。なんらかの香水を日々つけておけば、きっとプルースト効果は起きやすいはずだ。

どんな香水がいいだろうと調べる中で、「ERAM(エラム)」というブランドを見つけた。“自分勝手に香りを楽しむ、感性が味方するフレグランス”をコンセプトにしている、日本のフレグランスブランドである。

「ERAM」では、古典文学に着想を得て作られた香水を16種類展開。香りだけではなく、絵や言葉などを通じて、自分の感性に合うものを選ぶことができる。

各ボトルに描かれた絵には、どれも色がない。色でイメージが固定化してしまうのを避けるためらしい。また、どの古典文学を参考にしたかについても、まったく記載がない。

そういったところから、「自分の感性で自由に選んでほしい」という想いが伝わってくる。

出典:ERAM

試しに『徒(いたず)ら』の商品ページを見てみたら、以下のような言葉が書かれてあった。読んだとき、ぼくは真っ先に“春”が思い浮かんだ。

さよならとまたねを繰り返す

曖昧に

なるべく曖昧に

実際、サクラやピオニーなど春を思わせるようなフローラルな香りであるらしい。

もしかしたら『徒ら』という香水の香りを嗅ぐことで、忘れてしまった春の思い出が蘇ってくるかもしれない。あるいは、この香水をつけて過ごす日々のことを、いつかの春に思い起こすことがあるかもしれない。

香りに偶然記憶が蘇る効果を期待するのなら、こういう絵や言葉との偶然の出会いに身を任せてもいいはずだ。

本をジャケ買いするかのように

本屋さんに行ったときたまに、どんな著者のどんな内容かはまったく知らずに、装丁や質感、タイトルだけを見て、本を買うことがある。いわゆる“ジャケ買い”というやつだ。

そのようにして手に入れた本を読んでみると、自分がまさに悩んでいたこと、考えていたことに直結するよう内容だったということが不思議とあるものだ。

そのようなシンクロニシティ(意味のある偶然の一致)を「ERAM」の香水に期待してもいいかもしれない。

絵や言葉を見て、なんとなく良さそうと思って買った香水の香りが、忘れてしまっていた大切な記憶を思い起こすきっかけになる。

そんな偶然も香りをまとう楽しさのひとつだ。

大阪でポップアップが開催中

そんな「ERAM」のポップアップストアが、現在大阪で開催中だ。香りとの偶然の出会いを求めて、立ち寄ってみるのもいいかもしれない。

【POP-UP STOREスケジュール】
8月6日(水)~8月12日(火)
会場:阪急メンズ大阪 1Fメインステージ
販売商品:フレグランス全16種、アートボード全16種
価格:香水 30mL 13,200円、インプレッションキット9,900円、アートボード(数量限定)550円

【特典】
商品1万円以上(税込)ご購入のお客様には、16種類の中からお好きな2mlサイズをプレゼントいたします。
※香り各種に上限がございますので、あらかじめご了承ください

【営業時間等】
阪急メンズ大阪
平日 11:00〜20:00
土・日・祝 10:00〜20:00
〒530-0017 大阪府大阪市北区角田町7番10号
阪急メンズ大阪
Official WEB:https://web.hh-online.jp/hankyu-mens/contents/osaka/
Instagram:https://www.instagram.com/hankyu_mens_osaka/

佐藤純平

ライター&コミュニティマネージャー。答えのないことを、ああでもない、こうでもないと考え続けるのが好き。足の臭さと猫背が悩み。