【旅×本】本と出会える新しい場所。念願のブックホテルに泊まってみた

本はネットで買うよりも、偶然の出会いを楽しみたい派だ。

ネットの画面越しでは感じられない、紙の手触りや香り、表紙の色味を確かめてから選びたい。本そのもの“物体としての本”に惹かれているのだと思う。

そして、本を読むのも好きだが、それ以上に本に囲まれている時間が好きだ。本がある場所にいると心が落ち着く。

そんな私が今回訪れたのは「ブックホテル」。新しいかたちの“本との出会い”を体験してきたので、シェアしたいと思う。

本と出会える場所としての新たな選択肢

本屋やブックカフェ、図書館など、本と出会える場所はいくつもある。そんな中、ネットを眺めていたときに偶然「ブックホテル」の存在を知った

本がたくさんあるホテルとはどんなところだろう…。ちょうど東京へ行く予定があったので、思い切って泊まってみることにした。

<今回泊まったブックホテル>

出典:BOOK HOTEL 神保町 

ホテルの玄関ドアを開けた瞬間「この空間、好き」と思った。
壁いっぱいに本が並んでいる。これがブックホテルか!とワクワクが止まらない。

今回泊まったホテルはBOOK HOTEL 神保町

“「わたしの本」を見つけるホテル”がコンセプトで、本と出会うための仕掛けがいたるところに散りばめられていた。そのうちのいくつかを紹介したい。

本との出会い

◯1階

出典:BOOK HOTEL 神保町 

フロント横の壁だけでなく、ほぼ全ての壁が本棚になっていて、テーマに沿った本が並んでいる。どの本も背表紙ではなく、表紙が見えているのでわかりやすい。ほとんどの本にコメントが書かれているのも、本に対する愛を感じる。

第一印象で決めるもよし、気になるテーマがから選ぶもよし、コメントを読むもよし。眺めているだけでも充分に楽しめる。

◯エレベーター前

撮影:小雪(以下同様)

366日BOOKSと呼ばれるコーナーで、日付順に本が並んでいる。

本を日付で選ぶコンセプトがユニーク。自分の誕生日はどんな本がセレクトされているのだろうとワクワクする。まさに偶然の出会いを楽しめるコーナーだと思う。誕生日だけではなく、記念日で選ぶのも楽しそう。

◯部屋

部屋に入ると、すぐに本が目に飛び込んできた。クローゼットスペースの横に棚があり本が置いてある。私が泊まったのは“猫”がコンセプトの部屋だったので、猫がテーマの本が2冊と、猫のぬいぐるみも置いてあった。猫好きにはたまらない。

猫以外にも、大好きな伊坂幸太郎さんの小説があり、私の心を見抜いてくれたようでテンションがあがった。

◯階ごとのテーマ

階ごとにテーマが決まっていて、それぞれのフロアにテーマに沿った本が置いてある。自分が宿泊していない階に行き、その本を部屋に持っていくこともできる(3冊まで)。

たとえば10階のテーマは“優しい気持ちになりたくて”。小説や実用書だけでなく、漫画などもあり、今の自分にぴったりの1冊を選ぶことができる。

撮影:小雪
各階の手書きのコメントも楽しい

本に関するサービス

通常のホテルと大きく違ったのは、本に関するサービスが充実していることだ。今回はBOOKマッチングサービスとブックペアリングを利用してみた。

◯BOOKマッチングサービス

BOOKマッチングサービスとは、その人に合った本を用意してくれるサービス。宿泊2日前の22時までにアンケートに答える必要がある。

アンケートの内容は、本を選ぶ基準・好きな本のジャンル・興味があること・お悩みや解決したいことなどだった。

チェックイン時に選書してくれた本を渡してもらう。中を確認すると2冊入っていた。

『北欧フィンランド 食べて♪旅して♪お洒落して♪』てらいまき(実業之日本社)

1冊目はヘルシンキ&サンタクロースの街を旅するコミックエッセイ。私が趣味にスキー・旅行と記載したのを見て、選んでくれたようだ。

この本を選書した理由は、「雪&旅行というキーワードから、『犬ぞり』体験について読んでいただきたい!と思った」とのこと。

つねづね「スキーに関する本は、技術本やスキー場・スキー用具の紹介以外、あまり見かけたことがない」と思っていたけれど、まさかの犬ぞりを選んでいただけるとは想像しなかった。発想の転換がすごい、さすが選書のプロ!とうなった。

しかも、イラストがほんわかと可愛くて癒されるし、犬たちがかわいいし、漫画だから夜疲れて帰ってきた後でもスラスラと読むことができた。

二冊目は、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』吉田 篤弘(中央公論新社)

路面電車が走る町に越して来た青年が出会う、愛すべき人々とのささやかであたたかい物語。

これは、私の悩みである「決断に時間がかかる」に対して、「いっそそればかり考えて突き詰めてみるのはどうですか?」という趣旨で選んでくれたそうだ。

悩みに関する選書といえば、悩みそのものを解決する本を提示してくれるとばかり思っていた。が、突き詰めて考えてみるという逆の発想が自分では思いつかないし、Webで検索してもたどりつかない。この発想の転換や、想像力こそが、ブックマッチングサービスを頼む面白さだと感じた。

一冊はコミックエッセイ、もう一冊は小説と、ジャンルが違う本が選ばれているのも、バラエティに富んでいて素敵だなと思った。

選書サービスで選んでもらった本は、チェックアウト時に返却する必要があるので、その点は注意したい。

※BOOKマッチングサービス2025年10月時点の価格:500円

◯ブックペアリング

ブックペアリングとは、一冊の本に合わせて、その本と一緒に味わいたいコーヒーを選んでくれるサービスのことだ(かわいいチョコレートのおまけもあり)。事前の予約は不要で、当日フロントで「ブックペアリングをお願いします」と伝えるだけでよいので、気軽に試すことができる。

イメージカラーGREEN、○WHITE、PINK、●BLACKから好きな色を選ぶと、それに合った本とドリップコーヒーがついてくる。

カラーによって、選書テーマとコーヒーの味わいが異なってくるようだ。どのカラーがどんなテーマに紐づいているかは、ぜひ行って体験してみてほしい。

私はWHITEをチョイスした。袋に入っていて、中身は見えない。わくわくしながら封を開ける。
(手前に置いてあるのがチョコレート)

『世界から猫が消えたなら』川村元気(小学館)スペシャルブレンドが入っていた。

BOOKマッチングサービスと違って、選んでもらった本は持ち帰ることができるので、秋の夜長にコーヒーとともに読書を楽しみたいと思う。

※ブックペアリング2025年10月時点の価格:500円

泊まってみた感想

たとえば私の場合、夜遅く疲れて帰ってきた後に「文字が多いのは疲れるな」と思ったけれど、コミックエッセイはスラスラ読めたし、写真が多い本だと読みやすかった。「そうだ、これ読みたいと思っていたんだった」という出会いもあったし、普段は興味を持たない本を手に取ったりもした。

本屋やブックカフェとは違って、気になった本を部屋でゆっくり読めるのが最高だった。私が泊まった部屋はマッサージチェアがあったので、マッサージをしながら本を読んだり、ベッドに寝転びながら読んだり、自宅にいるような感覚で読書を楽しめた。

多彩な本との出会いがあり、まさに、このホテルのテーマである“「わたしの本」を見つけるホテル”にふさわしい場所だった。また機会があればぜひ泊まってみたいと思う。

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執筆:杉浦百香さん

小雪

会社員として働きながら、いつかはライター専業になりたいともっぱら奮闘中。興味ある分野は旅行・グルメ・喫茶店など。