いくつになっても、動物園が楽しすぎる

いくつになっても、動物園は気持ちを高揚させてくれる。普段は目にすることのない動物たちと出会える、非日常の空間。彼らは、訪れる度に違った姿を見せてくれる。

サバンナで暮らすシマウマ。氷上で暮らすホッキョクグマ。地球のあちこちから集められた動物たちを眺めていると、世界中を旅しているような気分になれる。今回は、そんな動物園について語ってみたいと思う。

動物園の匂い

夏、0歳の息子と一緒に上野動物園を訪れた。何年ぶりになるのだろう。子どもの頃は果てしなく感じられた園内は、大人になってみると意外と小さかった。

閉園ギリギリの15時頃に到着したため、展示が終了してしまっている動物も多く、鳥と猿ばかり見ていた。気温は30度を超え、太陽がさんさんと照りつけている。とにかく暑くて、逃げるように近くの東京国立博物館へ移動した。

ああ、でもこの匂いは懐かしい。動物たちの、濃い匂い。ほぼ匂いがせず、美しさが全面に押し出されている水族館と違って、動物園からは“生”を感じる。

たとえば、ペンギンは動物園でも水族館でも飼育されているけれど、動物園ではその強烈な匂いに意識が持っていかれる。生きるって、美しいことばかりではない。動物園の匂いは、嘘がない感じがして好きだ。

動物園をめぐる

夏の夜には、よこはま動物園ズーラシアの夜間開園があった。普段は見ることのできない、夜の動物園。園内をただ歩くだけで、その非日常感に心が躍った。夜の闇の中では見えにくい動物もいたけれど、それがまたリアルでよかった。

よこはま動物園ズーラシア

一番気に入ったのは、多摩動物公園だ。ここは、動物園というより山だった。東京ドーム約11個分の敷地面積を誇る園内を、ひたすら歩く。さまよい歩いていると、時折動物に遭遇する、という感覚。

展示方法にも工夫が凝らされていて、野生の動物たちを覗き見しているような気分になれる。何頭ものライオンがのんびりと過ごしている中を、バスで通り抜ける“ライオンバス”にも興奮した。車体に生肉をつけて走るので、ライオンの食事シーンを目の前で眺めることができる。

多摩動物公園

動物を間近で感じる、という意味では、井の頭自然文化園のリスの小径も印象深い。金網で囲われた小径に入ると、数え切れないほどのリスがあちこちを走り回っている。まるで、森の中に迷い込んだかのようだ。隣で写真を撮っていた男性のブーツを、リスがガリガリとかじっていた。

井の頭自然文化園

また、雪印こどもの国牧場にある、こどもどうぶつえんでは、セキセイインコが暮らす大きなバードケージの中に入ることができた。美しく鳴きながら頭上を飛び交うインコたちの可愛らしい動きを、息子と一緒にずっと眺めていた。

こどもどうぶつえん

野生の動物たち

動物園では、どんな動物も安全な環境で観察することができる。けれど、世界のどこかでは、野生の彼らに遭遇することもあるのだ。

想像を巡らせてみる。歩いていった先に、突然キリンやシマウマが現れたら。フラミンゴのような美しい鳥に出くわしたら。それは、一生忘れられない瞬間になるだろう。もちろん、肉食獣との遭遇は避けたいけれど……。

世界の限られた場所でしか見られない動物たちを、日本にいながらにして一度に見られるというのはありがたいことだ。動物たちや、その飼育場所を観察していると、なんだか世界を旅しているような気分になる。

動物たちを前に、野生の彼らのことを想像してみる。軽やかに、どこまでも駆けていくところを。彼らにとって、動物園はどのような場所なのだろうか。飼育員さんたちに愛情を注がれて、幸せに暮らしているのであればいいな、と思う。

動物園の楽しみ方

動物園には、絶対にカメラを持っていく。動物たちのいろいろな動き、表情。とにかくたくさん写真におさめる。夫には「そんなに撮って、何に使うの?」と言われるけれど、特に写真の用途があるわけではない。見返すこともあまりない。けれど、面白い表情や美しい姿を写真に収められるとなんだか嬉しい。

大学生の頃は望遠レンズを持っていて、海外の動物園で一度使ったことがある。遠くにいたゾウの顔の皺まではっきり写せて楽しかった。そろそろ、今使っているカメラに合う望遠レンズも欲しいところだ。

食事も、動物園での楽しみのひとつだ。レストランで食べることもあれば、お弁当を買って持っていくこともある。屋外の席があれば、そこで食事を取りたい。動物の匂いが流れてくることもあるけれど、鳴き声を聞きながら食事ができるのは、動物園ならではの楽しみだ。

おわりに

子どもが生まれたことをきっかけに動物園を巡るようになり、その面白さをひしひしと感じている。今はまだ「かっこいい!」「かわいい!」ぐらいの感想しか持てないのだけれど、動物の生態を勉強したら、さらに観察が楽しくなる気がしている。

何度通っても“まったく同じ”ということがなく、動物たちがいつも違った姿を見せてくれるのが動物園の魅力だ。子どもと一緒に、これからもたくさん通いたい。

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執筆:織詠 夏葉さん

東樹詩織

食や旅の領域でPR・ブランディングに携わる傍ら、執筆活動を行う。アートと本にのめり込み、「as human footprints」名義でZINE出版を開始。写真と動画の撮影・編集も。最近の関心事は、アジア各国のカルチャー、映画、海外文学、批評、3DCG、AI。キャンプ好きが高じて、東京↔︎信州・上田で2拠点生活中。