冬は、静かな季節だ。朝、目が覚めると、部屋はしんと静まり返っていて。時折窓の外から、鳥の控えめなさえずりが聞こえる。空気は冷たく、雲一つない青空の日でさえなんだか物悲しい。
音楽は、そんな静かな冬の日々を彩ってくれる。クリスマスやお正月など、イベントに合わせて聴きたい曲もある。今回は、冬にぴったりの曲を紹介していきたいと思う。
冬のイベントを盛り上げる曲

冬はイベントが目白押しだ。クリスマス、お正月、バレンタインデー…。イベントの雰囲気を盛り上げるために、音楽は欠かせない。
クリスマスにどの曲を流すか、は悩ましい問題だ。クリスマスソングが無数にあるせいで、いつも迷ってしまう。だから、我が家ではここ数年、Apple Musicの公式プレイリストに頼りがちだ。『定番洋楽クリスマスソング』は、聴いたことのある曲ばかりが入っていて外さない。イブから当日にかけては、朝からこのプレイリストをBGMとして流しておけば、クリスマス気分も高まる。
定番のクリスマスソングの中でも、特に思い入れのある曲は人によって違うはずだ。私にとっての特別なクリスマスソングは、山下達郎さんの『クリスマス・イブ』。聴くと、大学生の頃の切ない恋愛の記憶が呼び起こされる。
当時、なぜだかわからないが、「イブの夕暮れ時にひとりでタクシーに乗って、山下達郎さんの『クリスマス・イブ』を聴きながら、首都高からの景色を見たい」という願望があった。切ない気持ちにどっぷりと浸りたかったのかもしれない。かなり具体的にイメージができていたのに、お金がかかるので結局やらなかった。それから数年後のイブの日に、今の夫と首都高ドライブをしながら『クリスマス・イブ』を聴いた。ふたりで聴くのも、悪くなかった。
洋楽がよく似合うクリスマスとは打って変わって、年末年始は“和”を感じさせる曲を聴きたくなる。そんなときは、雅楽師の東儀秀樹さんの曲をよく流す。
東儀秀樹さんは、宮内庁楽部に在籍されていた方。篳篥(ひちりき)や笙(しょう)などの伝統楽器で演奏される曲は、年末年始のどこか厳かな雰囲気にぴったり合っていると思う。
いつかの冬を思い出す曲

音楽は、思い出と密接につながっている。イントロを聴くだけで、当時の感情が鮮やかに蘇る。だから、10代の頃に聴いていた冬がテーマのJ-popは、私にとってタイムカプセルのような存在でもある。
高校時代を思い出して胸がギュッと苦しくなる、レミオロメンの『粉雪』。同年代であれば、この曲に心をかき乱される人は多いのではないだろうか。当時は、カラオケに行く度に必ず誰かが歌っていた。
BoAさんの『メリクリ』も同様に、高校時代の思い出に紐づいている。当時、音楽系の部活に入っていた私は、ライブでこの曲を歌った。同じ部活の先輩と付き合っていたから、練習にも気合いが入ったことを覚えている。
もう少し時を遡ると、中島美嘉さんの『雪の華』が印象深い。当時はどこに行ってもこの曲が流れていたような気がする。この曲がリリースされた当時は中学生で、歌詞に自分の恋愛を当てはめながら、何度も何度も聴いた。確かあの頃は、MDで聴いていたのではなかったか。エアコンの効きが悪い、実家の北向きの子ども部屋で、寒さに震えながらイヤホンを耳にさして。
冬をテーマにした曲は、どこか切なさをはらむラブソングが多い。再生すれば、過去の恋愛の幸せだった記憶や辛かった記憶が一度に蘇って、胸の中がざわざわする。大人になった今は、心が大きく揺れ動くことも少なくなったから、懐かしい冬の曲を流して切なさに浸ってみるときもある。
冬の静けさを楽しむ曲

冬の静けさを、存分に堪能したい。でも、無音だと味気ないから、ほんの少しだけ音が欲しい。そんな日は、ピアノ曲を流すことが多い。日常のBGMとして、うっすらとかけておくのにぴったりだ。
よく流すのは、坂本龍一さんのアルバム『Opus』。これは一年中聴いているのだけれど、静かな冬には特によく合うと思う。今年の2月に出産したときにも、分娩室や個室で流していたアルバムだから、思い入れは強い。息子との初めての冬を彩ってくれた曲たちだ。再生ボタンを押して「Lack of Love」が流れ始めると、個室の窓から見えた冬の美しい朝焼けを思い出す。夜間授乳が辛くて、冬の遅い日の出が待ち遠しかった、あの日々。
もう少しパンチが欲しいときには、生ピアノとエレクトロを融合させた音楽を奏でるTWO LANESの曲を聴く。冬らしい物悲しさに、エレクトロによる疾走感が加わり、よく晴れた日の昼に聴くのにぴったりだ。冬のドライブでもよく流す。TWO LANESはドイツ出身の兄弟ユニットで、YouTubeでは大自然の中で演奏している姿も見られる。
おわりに
蝉の声で騒々しかった窓の外が、だんだんと静かになり、気づけば冬がすぐそこまで来ている。「この季節ならではの曲を聴く」というのは、四季のある日本ならではの楽しみ方だと思う。
今年の冬も、きっとあっという間に終わってしまうだろう。それまでに、聴きたい曲をどれぐらい聴けるだろうか。



