暦の上では春が近づく2月だが、宮城県在住のわたしにとって、冬はここからが本番だ。冬の外出は常に寒さとの戦いである。しかし、ただ闇雲に厚着をすればいいわけではない。大切なのは、室内外の激しい寒暖差に惑わされず、いかに体力を温存するかだ。
東北暮らしでたどり着いた、自分をいたわるための“ロールキャベツ方式”防寒術を分かち合いたい。それは、寒さに耐えるためではなく、疲れをためないための工夫である。

わたしのこと
- 年齢:30代
- 性別:女
- 職業:ライター
- ライフスタイル:誰かと同居、インドア派、リモートワーク、朝型、自炊派
- 住居地:宮城県
- 出生地:青森県
冬は“一枚で頑張らない”ほうが、体はずっと楽
冬の外出から帰宅した際、どっと押し寄せるような疲労感に襲われたことはないだろうか。外の寒さに身を縮め、重いコートを肩に食い込ませて歩く時間は、想像以上に体力を消耗させる。
思えば若い頃は、重くてもデザインが気に入ったウールコートや、多少の寒さを我慢してでもシルエットを優先した薄着のおしゃれを楽しめていた。
しかし、30代も後半になり、日々を仕事や子育てに奮闘している今のわたしにとって、無理は禁物だ。寒さに耐えるためにエネルギーを使い果たし、家族に迷惑をかけては元も子もない。今、若い頃のような冬のおしゃれをすれば、確実に体力を削られるだろう。
そこでたどり着いたのが、防寒の“ロールキャベツ方式”である。これは、分厚いアウター1枚で寒さを防ごうとするのではなく、アイテムを組み合わせることで、状況に合わせて細かく温度調節を行う考え方だ。

一般的に重ね着は“ミルフィーユ”に例えられることが多いけれど、わたしのなかでは少しニュアンスが違う。隙間なく層を積み重ねるよりも、もっと柔らかく、中身である自分をスープで煮込むようにふんわりと包み込みたい。
中身の具(自分)を何層もの葉(服や小物)で優しく守る。それは単なる寒さ対策を超えて、変化の激しい環境から自分をいたわるための、切実な選択なのである。
東北・車社会ならではの冬の防寒対策は、“脱ぎ着できること”
わたしは現在、宮城県に住んでいる。『Sense of…』のライターのなかでも、かなり北側に位置する場所に身を置いているはずだ。北国の冬と聞くと、常に氷点下のなかを震えながら歩く姿を想像するかもしれない。しかし、実際の日常は少し違う。
また、わたしの住んでいる地方都市は、完全なる車社会だ。移動のほとんどが自家用車であるため、外気を浴びる時間は駐車場から目的地までのわずかな数分ということも少なくない。
冬の休日はショッピングモールで過ごすことも多いが、屋外が刺すような寒風でも、一歩建物のなかに入れば暖房が効きすぎていて、汗ばむことすらある。

電車のドアには、寒気が入り込まないようにするための“開閉ボタン”が付いている。ドアが自動では開かないので、乗車する人が開閉ボタンを押すシステムだ。そのおかげでドアが開きっぱなしにならず、電車内は温かく保たれているが、いざドアが開いた瞬間に流れ込む冷気はすさまじい。
つまり、北国の生活において“屋外の寒さ”だけを前提とした鉄壁の防寒は、実は相性が良くない。室内外の激しい寒暖差こそが自律神経を乱し、体力を奪う本当の原因なのだ。
だからこそ、状況に応じて簡単に“脱ぎ着できること”が最優先条件。ロールキャベツのように服の層を作り、環境の変化に合わせて一枚ずつ剥いだり重ねたりすることが、冬の健やかさを守るポイントである。
“ロールキャベツ方式”レイヤードをするために、アウターを軽くする
“ロールキャベツ方式”を実践するうえで、わたしがもっとも重視しているのは、アウター選びの基準を“暖かさ”と同じくらい“軽さ”に置くことである。なぜなら、多層構造のレイヤードにおいて、アウターが重いことはマイナスになってしまうからだ。
室内でアウターを脱いだとき、それがずっしりと重い荷物になってしまっては、せっかくの身軽さが損なわれてしまう。また、重いアウターを着て歩くこと自体が肩こりを引き起こし、疲れの原因となる。
アウター選びでは、デザインだけでなく、ぜひ重量もチェックしてみてほしい。標準的なウールコートは1〜2kgほどあるが、1kg以下のものを選べば、脱いで持ち歩く際も負担にならない。
そこでおすすめしたいのが、アウトドアブランドの活用。過酷な環境を想定したアウター作りの技術は、圧倒的な軽さと保温性を両立してくれるのだ。
わたしは現在、モンベルの『スペリオダウン ラウンドネックジャケット』と『コルチナ ダウンコート』をシーン別に使い分けている。

左:スペリオダウン ラウンドネックジャケット(旧モデル)
右:コルチナ ダウンコート
『スペリオダウン ラウンドネックジャケット』は、主に車移動のときに重宝している。薄手ながら800フィルパワー※の高品質なダウンを使用しているため、暖房の効きが悪い場所でも十分に暖かい。
(※フィルパワー:羽毛のかさ高性を示す単位。数値が高いほど空気を多く含み、保温性に優れる)
何より、付属の収納袋に入れれば約Φ9 x 16cmと、驚くほどコンパクトになる。500ml缶に近いサイズ感で、買い物の荷物や子どもの着替えを抱えなければならない場面でも、邪魔にならないのがうれしい。
一方、公園などで子どもを遊ばせる際は『コルチナ ダウンコート』の出番だ。親は動かずに見守る時間が長いため、防風性と高い保温性が欠かせない。先ほど紹介したコートよりも長めな膝丈なので、腰回りをしっかり温められる。
こちらも800フィルパワーのダウンがたっぷり入っているのに、平均重量はわずか491g。500mlペットボトル1本分よりも軽い。まるで羽毛布団に包まれているような心地よさで、冬の屋外活動がぐっと楽になった。
軽いアウターを選び、体力を温存すること。それが、冬を健やかに乗り切るための第一歩となる。
“ロールキャベツ式”レイヤードは、小物が重要
屋外では、一歩外に出れば刺すような冷気にさらされる。しかし、ひとたび室内に入れば、そこは上着を脱ぎたくなるほど暖かい空間だ。こうした環境下では、一度着たら脱ぎにくい厚手のセーターよりも、状況に合わせて細やかに着脱できる小物こそが重宝する。
バラクラバ

左:H&Mのバラクラバ
右:THE HOOD WARMER MIX COLOR
今シーズン、もっとも重宝しているのがバラクラバだ。ネックウォーマーと帽子が一体化したようなこのアイテムは、首元の隙間を埋めてくれるだけでなく、荷物を減らせるという利点がある。
屋内に入って暑さを感じたら、フード部分をサッと後ろに外すだけでいい。マフラーのように解けてかさばることもなく、首元を温めるレイヤーとして機能し続けてくれる。一見、取り入れるのが難しそうに見えるアイテムだが、ベーシックな色を選べばファッションになじみやすい。
わたしはまずH&Mのプチプラアイテムで試してみた。オールブラックのアクリル素材はどんな服にも合わせやすく、使い勝手の良さを実感した。
その後、より機能性の高いものを求めて、THE(ザ)の『THE HOOD WARMER MIX COLOR』も購入。ネック部分を折ることで高さが変えられるので、より細かな温度調整が可能だ。
スマートフォンが操作できる手袋

冬の外出時の小さなストレスといえば、スマートフォンの操作だ。「手袋を外したら結局寒い」「外したら手袋をなくした」といった経験は、誰しもあるのではないだろうか。
そこでいくつかの“スマホ対応手袋”を試してみたが、指先に特殊な生地を使っているタイプは、意外と反応が悪くイライラしてしまうことも多かった。
今のわたしが愛用しているのは、以前購入した無印良品の『再生ポリエステル混 半指フード付き手袋』だ。残念ながら今期は取り扱いがないようだが、似た形状のものは他でも見つかるはずだ。
これは半指手袋に、指先をおおうミトンカバーが付いているタイプである。操作するときだけ指を出せば、直接スマートフォンに触れるので動作がスムーズ。また、半指手袋の上にミトンが重なる構造のため、指先に空気の層ができて温かいのもメリットである。
足元のレイヤード

冷えは足元からくる。だからこそ、下半身はもっとも“ロールキャベツ”を意識すべき場所だ。わたしの定番は、タイツ、レッグウォーマー、パンツ、そしてブーツを重ねる4層構造である。
特にレッグウォーマーは、上げ下げすることで細かな温度調節ができるため、冬のレイヤードには欠かせない。ワイドパンツの下に仕込めば外気の侵入を防げるし、外出先のトイレでは、パンツの裾をレッグウォーマーに入れ込むことで、裾が床に付くのを防止してくれる。
個人的に愛用しているのが、無印良品の『あったか綿 手にも使える レッグウォーマー』だ。比較的薄手なので、ブーツのなかに仕込んでもシルエットに響きにくい。吸湿発熱性のある“あったか綿”の生地が、冷えやすい足元を確実に温めてくれる。
寒暖差を制する者が、冬を制する
防寒とは、環境に抗うことではなく、いかに適応するかという工夫の積み重ねだ。東北ならではの気密性の高い暖かな室内と、刺すような屋外の寒さ。この極端な二面性に対応して、一日の終わりの疲労感を軽減したい。
“ロールキャベツ方式”で細やかに温度を調整することは、今の自分の体が何を求めているかに耳を傾け、大切に扱うことでもある。
1枚で頑張るのをやめて、何層もの優しさで自分を包んでみよう。無理をして体力を削る代わりに、知恵を絞って自分を労わる。その先には、冷えによる強張りがほどけた、心穏やかな時間が待っているはずだ。





