母になったあなたへ。これからも「ありがとう」を言葉にする家族でいよう

中山拓哉(なかやまたくや)さん

WAQMIEL代表

会社員として勤務しながら、個人で「日本の隠れたワクワクを見える化する」を掲げて、全国の農家や漁師、自治体とともに特産品の開発やPR支援などをおこなっている。自称「日本一多くの農家さん漁師さんに出会っている人」。野菜ソムリエでもある。趣味は料理、キャンプ、旅行。ひとつ年上の妻と、2024年8月で3歳になる長男との3人家族。

「妻が教えてくれた『思いを言葉にすることの大切さ』を、自分もかたちに残したい」。そんな思いを胸にお話を聞かせてくれたのは、中山拓哉さん。学生時代に知り合い、社会人となり、結婚。ふたりは一児の親になりました。人生のなかでもライフステージに大きな変化がある10年をともに過ごした今、母の日を前に、母となった妻に伝えたい思いとは?

ふられつづけて、4回目の告白でやっとつきあってもらえた

2023年に行った宮古島で

──奥様とは大学時代からのおつきあいだそうですね。

彼女は大学入学後に参加したサークルのひとつ上の先輩でした。まじめでしっかり者、勉強もできる“高嶺の花”的な存在でしたが、ふたりきりで話してみるとおっちょこちょいでかわいいところがすごくある。みんなの前で見せる顔と素の部分とのギャップに惹かれて、僕から告白したんです。でもふられてしまいました。

それでもあきらめられず、またふられて、つきあってもいいと言ってもらえたのは4回目に告白したとき。それから大学を卒業し、社会人になり、1年の同棲を経て結婚しました。つきあってからかれこれ10年。お互いにライフステージが大きく変わる期間を一緒に過ごせたのはとてもよかったですね。

──奥様がひとつ年上ということは、大学生と社会人の期間もあったのですね。

はい。彼女が先に社会人になり、僕が大学生という1年間がありました。すれ違わずに済んだのは彼女のおかげかなと今になって思います。学生の僕に、仕事の話や「大変」「疲れた」という言葉をあまり口にしなかったのは、彼女なりの配慮だったのかもしれません。

プロポーズは僕からしました。どうすれば彼女が喜んでくれるか、どんなシチュエーションがいいのかがまったくわからなかったので、インターネットで見つけたレストランのプロポーズプランを頼りました。あとになってそのことを打ち明けたら、妻は「あなたらしい」と笑っていましたけどね。

あなたから学んだ、思いを言葉にすることの大切さ

──奥様はどんな方ですか?

しっかり者で、まじめ、几帳面という言葉がぴったりの人。家事の分担はエクセルにまとめていますし、結婚式の準備においては引き出物や曲選び、祝辞の依頼などを「これを、誰に、いつまでに頼む」とタスクに落とし、プロジェクトのように取り組んでいました。

そんな彼女なので、きちんとした仕事ぶりも想像ができます。僕は自分が実現したいことを優先して仕事も変えていますが、彼女は転職経験ゼロ。感情的な僕に対し、彼女は人や物事とちゃんと向き合って丁寧に解決していくタイプ。泣いている子どもにさえ、なぜ泣いているのか、何がいやなのかを理解してあげようとする。やさしい人です。

あと、彼女は「気持ちを言葉で伝えてくれる人」。感謝の気持ちもそうですし、大切に思っている、応援している、尊敬しているという気持ちもちゃんと言葉にしてくれますね。

そんな妻が素敵だなと思い、僕も気持ちを言葉にすることを意識して、折にふれて彼女に手紙を書くこともありました。でも子どもが生まれてから、そのような機会が減ってしまっていることが気になっていました。母の日を前に、彼女への感謝をかたちにできたらと思い、今こうしてお話しさせていただいています。

人に誠実に向き合うこと、気持ちを言葉にすること、彼女から学ぶことはとても多いです。

僕は自由奔放なほうですが、迷ったら「彼女だったらこうするだろう」「このやり方は、彼女は嫌がるだろう」と心で頼ることもあります。逆に、僕から「そこは、もう少しゆるくていいと思う」と伝える場合もあるので、バランスは取れているのかもしれませんね。彼女もそう思ってくれているとうれしいです。

すっかりママっ子になった息子。それはそうだよね

──2021年に息子さんが生まれたそうですね。

この夏で3歳になります。コロナ禍での妊娠・出産で、妻は大変だったと思います。検診も出産も立ち会うことが許されず、生まれたという知らせは仕事中にLINEで受け取りました。

妻の母親ぶりは見事なものです。先ほども少しお話ししましたが、子どもを子どもとしてではなく、ひとりの人として丁寧に接するところは、ほんとうにすごいと思いますね。

中山さんの地元、福岡県の水族館で

だから息子はママが大好きで、お風呂も寝るのもママと一緒じゃなきゃイヤという感じ。あの接し方を見ていると、それはそうだろうと思います。でもちょっとうらやましいので、「パパとお風呂に入るなら、好きな入浴剤を選んでいいよ」「お風呂上がりにおいしいフルーツあげるよ」とモノで釣っています(笑)。

息子はまだ夜にぐずるときがあって、先日は僕が抱っこしたら「ママがいい」って大泣きされました。僕の出番は、自転車の練習のときぐらい。ここぞとばかりにパパぶりを発揮しています。

──今回はテーマが「母の日」ですが、息子さんだったらママにどんな感謝の言葉を伝えるでしょうか。

そうですね、まだ2歳半なので使える言葉は限られていますが、「ママありがと〜」「いつもごはんつくってくれてありがと〜」でしょうか。あとは「ママ、すき〜」もよく言っていますね。

息子はわんぱくで、家では大きな声で歌ったり活発に遊んだりするのですが、外で知らない子どもに会うと恥ずかしがって話せなくなってしまうタイプ。内弁慶というのでしょうか。僕の親いわく、僕も同じだったそうです。似ちゃいましたかね。

最近は料理を手伝おうとしたり、読んでほしい本を持ってきたりと意思のある行動が増えてきて、成長を実感しています。

──お子さんの育て方について、ふたりでよく会話されますか?

とにかく元気に育ってくれることを願うばかりですね。計画性を重んじる妻ですが、教育に関しては今は「子どものさせたいようにするのが一番」と思っているようです。それは私も同じです。ただ、選択肢は用意してあげたいという気持ちはあるので、いろんなものを見せたり、経験させたりしようとは考えています。

仕事柄、農家さんや漁師さんから大きな野菜や魚が届くことがあるのですが、調理する前に見せながら食べもののありがたみを伝えることもあります。また近所を散歩しているときに、彼が足をとめることがあれば、できるだけつきあうようにはしています。

私たちは旅行が好きで、子どもが生まれる前はふたりでいろいろなところへ行きました。僕にとって印象深いのは、フォトウェディングのために訪れた石垣島。いつか子どもが生まれたらまた一緒に写真を撮りにこようと心に決めた場所であり、妻との関係がより強くなったと感じさせてくれた旅でした。妻にとってもいい思い出として残っていたら幸せです。

このメッセージを通じて、思いの答え合わせができたら…

──中山さんにとって、そしてご家族にとって、奥様はどのような存在ですか?

そうですね……(と少し考えて)、「みちしるべ」かな。「なんとかなる、どうにでもなる」という僕とは違って、妻はいろんなことを考えてくれて、進むべき道を照らしてくれるような人。そんな彼女がいつも笑顔でいられるように、ときに「そこまで考えなくても大丈夫だよ」と安心させてあげられるような存在でありたいですね。

──今回このインタビューを通じて、奥様にどのようなメッセージが伝えたいですか?

これまでのこと、いまのこと、これからのこと、お互いの気持ちの答えあわせになったらいいと思っています。

最近は思いを言葉で伝えられていなかったので、いつも感謝していると伝えたいです。それと、子育てや仕事で忙しいけれど一緒にがんばっていこうね、これからも仲良くしていこうねと。妻にもそう思ってもらえたらうれしいですね。

先ほど、妻がどんな人かを聞かれましたが、ひとつお伝えし忘れました。彼女は友人や家族をとても大切にしている人。お互いの両親はもちろん、祖父母にも会いにいったり誕生日に電話をかけたりといつもやさしさを届けています。僕はそんな彼女を見習いつつ、息子を含めて僕たちもそんな家族になれたら思っています。

みっちゃん、いつもありがとう。

土屋 りえ

アパレル、出版社を経てフリーランスのライターとなり、インタビュー記事を中心に執筆。これまでに経験したインタビューは約4,000件。多くの方の人生にふれられる仕事に喜びを感じている。