行きたい場所は時に、アクセスが難しいことがある。特に海外では公共交通機関が脆弱な場所に行くためには個人でガイドを頼んだり、車をチャーターしたりしなければならず、費用もかさむ。
でも、行きたい。どうしても行きたい。
そうだ!レンタカーがあるではないかっ。
チキンハートな旅ジャンキーが海外のロードトリップにはまった理由は、ひとえに諦めの悪さである。
日本とは異なる交通事情とルール、保険、免責に関する複雑な英語の書類…。
海外レンタカーのハードルは確かに高い。
が、しかし、それを乗り越えるとプライスレスな感動と体験が待っている。
直近の旅、約1週間かけて巡ったスコットランドロードトリップと過去の体験から、海外レンタカーの醍醐味を紹介しよう。
2024年4月のスコットランドロードトリップ
2024年4月。わたしはスコットランドのローランドとハイランドをレンタカーで約1週間をかけて巡った。グラスゴーを起点にハイランド地方を周遊するなら、交通機関を使いこなせばできないこともないけれど、その場合、交通網が発達している主要の街にしか行けない。
スコットランドの魅力はなんと言っても雄大な自然である。それを満喫するにはロードトリップしかない。という結論に至ったことが、レンタカーを選んだいちばんの理由である。
旅先での移動をほぼ車にしたのはスコットランドがはじめて。過去の旅では滞在先からほんの数時間離れた小さな街や美術館を訪れるためにだけ、レンタカーを借りた。この積み重ねが自信となり、今回の冒険を決心させた。
案ずるより産むが易しとはよく言ったもので、何事もトライしてみることって本当に大事。その一歩が最高の体験になるかもしれないのだから。
ロードトリップでしか出会えなかった景色
これらは全て、道中で偶然に出会った景色である。ガイドブックには載っていない小さな村の牧場やファームショップ、港町。現地の人との交流や、美しい景色は、わたしという小さな人間を少し、ほんの少しだけ大きくしてくれた。それは瞬きほどの小さな変化かもしれないけれど。
スコットランドの魅力は語るに尽きないので、別の機会にしっかり書こうと思う。
母を連れてフランス・アルザス地方へ
2022年秋、母を連れ立ってのフランス旅行では、パリから郊外列車でドイツの国境にある街、ストラスブールに移動。レンタカーをピックアップしてコルマールへプチトリップに出かけた。
公共機関ではアクセスが難しい『ロンシャンの礼拝堂』。ル・コルビュジェ建築の最高傑作とされるこの場所を訪れることができたのも、レンタカーを選択をしたから。
ドライバーの運転が荒いことで知られるフランスでの運転はなかなかスリリングだったが、行きたい場所に行くことができたし、母も楽しそうだったので、結果、思い出深い旅となった。
オランダ・クレラー・ミュラー美術館へ
世界で2番目の規模のゴッホコレクションを誇る『クレラー・ミュラー美術館』。珠玉のゴッホコレクションをひと目見ようと、世界中から観光客が訪れるというのに、美術館はアムステルダムから約100キロ離れたデ・ホーヘ・フェルウェ国立公園内にあるため、公共交通機関でのアクセスが悪いのが難点。
電車やバスを乗り継いだり、現地ツアーに参加したりするのが一般的だが、時間に追われることなく、自由に絵画を堪能したかったので、レンタカーを日帰りで借りた。なお、日本とは異なり、海外でのレンタカーの単位は半日でも数時間でも1 日に換算される。
Googleマップがあれば迷わない。
見知らぬ土地、しかも海外。道も交通ルールもわからない。ナビは必須だが海外では別料金が発生する。純正ナビが付いていても当然ながら英語、もしくは現地の言葉でのナビゲートである。
ただでさえ慣れない海外の運転。日常会話ができる程度の英語力があったとて、無機質な英語音声で高速道路の出入り口や合流を案内されるとパニックになること請け合い。
大丈夫。われわれにはGoogleマップがあるではないか。
最近はApple Car Play対応のレンタカーが増えているので、スマホで行き先を設定し、Bluetoothを接続するだけでスマホ画面がナビに表示される。ドライブに欠かせない音楽だって、スマホのプレイリストをカーオーディオに接続することができる(音楽のないドライブなんてあり得ない)。
Apple Car Play非対応だとしても、持参したスマホホルダーにスマホを固定すればナビとして使える。
気になる通信料金は現地でSIMカードを購入するか、eSIMを事前に購入しておけば安心だ。
もちろん、ナビはスマホの言語、日本語で話す。海外の厄介なラウンドアバウト(※)も、「ロータリー2番目の出口を進みます」と、わかりやすく案内してくれる。
(※)ラウンドアバウト:ヨーロッパ発祥の環状交差点
海外での運転は国際運転免許証が必須です。
海外で運転するためには国際運転免許書が必要。
有効な日本の運転免許証を所持し、海外に渡航する予定がある人であれば誰でも取得が可能で、有効期限は1年。
海外でレンタカーを借りる際は「パスポート+国際運転免許証+日本の運転免許書」に加え、支払いとデポジット用のクレジットカードが必須。デポジットはレンタカー会社にもよるが、料金の2倍〜5倍ほどかかる場合があるので、カードの限度額は余裕を持っておくと安心。
海外レンタカーの注意点
海外での運転は、普段から日本で運転していればさほど問題はない。右側通行や左ハンドル、ラウンドアバウト、一般道でも平均100キロという制限速度もそのうち慣れる。どんなに周りがばんばん飛ばそうが、ブレない鋼の心を持って、走行車線を制限速度内で走ればいいのだ。
運転同様に気をつけなければならないのが保険など書類の確認である。
- 加入保険はフルカバーになっているか
- ガソリンの種類と給油口の確認
- トラブル時の連絡方法
- 返却方法と場所(海外ではオフィスと駐車場が離れていることが多く、その場合は自分で車を探さなければならない)
- デポジットの確認
特に保険はケチらずフルカバーの保険に加入しよう。わからないことは納得するまで何度も聞くこと。
英語がわからない時はスマホの翻訳機能を使うといい。
ネットで海外レンタカーを検索すると、格安料金のレンタカーがヒットする。格安レンタカーを謳っている会社の中には、オフィスまでのアクセスが不便だったり、走行距離が決められていたり(これをオーバーすると高額請求される)、車が小汚かったり、追加の保険に加入されたりすることがあるので要注意(事実、過去に痛い目にあった)。多少割高でもHertzやAvis、Alamoなど大手レンタカー会社を選ぼう。
ちなみにスコットランドではVolkswagen傘下のチェコの自動車メーカーŠkoda Auto(シュコダ・オート)のディラーが提供するレンタカーサービスを利用した。自社の車を提供することでコストを削減していると思われるが、サービス、対応共に本当に素晴らしかった!
■グラスゴーのおすすめレンタカー会社
VOLKSWAGEN FINANCIAL SERVICES
どこで借りるにしても事前に条件を確認し、価格とのバランスを吟味するようにしたい。
普段、運転はするけれど得意とは言えないわたしが、フランス、オランダ、スコットランドと、ここ数年レンタカー旅が気に入っているのは、多少割高だとしても時間を効率かつ、自由に使えることに味をしめてしまったから。
公共交通機関のアクセスが難しいところにも、「えいやっ」と行ける。思い立ったその時に「よっしゃっ」と、気合いと勢いで行ける。
車を運転して見たい景色、行きたい場所に辿り着くと、翼を手にしたような気分になる。
翼を手に入れたとて、それをどう使うかは自分次第。
交通ルールと安全をしっかり意識することを肝に銘じながら、これからもロードトリップを楽しみたい。