ハンガリー、それは円安にやさしい国。今こそ旅情あふるる中欧へ。

円安が過ぎる。
この記事を書いている6月下旬。ついに1ドル=161円台を突破。
コロナ禍が落ち着き、やっと自由に海外に飛べるようになったというのに、こうも円安が過ぎると自称・旅ジャンキーのわたしとて、気持ちがひよる。

直近の旅、グレートブリテンを4月に訪れたときの為替は1ポンド=197円。
ロンドンで食べたフィッシュ&チップスは18.95ポンド、日本円にして約3,700円。
わたしにすればちょっとしたディナーの値段だ。
泣ける(哀)。

そんな円安の最中、トラベラーにやさしい国がある。しかも、アジアではなくヨーロッパに!
泣ける(歓)。

ハンガリー。
この中欧の小さな国には、美しさと儚さ、そして美味しいがたくさん詰まっているのだ。

ハンガリーの基本情報

正式名称:ハンガリー共和国  Republic of Hungary
首都:ブダペスト
人口:約970万人(2021年時点/在ハンガリー日本大使館PDF参照)
面積:約9.3万km²
人種・民族:ハンガリー人、その他
宗教:カトリック、カルヴァン派など
公用語:ハンガリー語
通貨:フォリント(1フォリント=0.43円/2024年6月28日現在)
時差:-8時間(サマータイム期間は-7時間)

ヨーロッパの中のアジア系民族の国・ハンガリー 。
首都ブダペストは20世紀初頭までヨーロッパ最大の王朝を誇っていたハプスブルク家の下で繁栄。かつて、“ドナウの真珠”と称えられた中世の面影は、建物、街並み、ドナウ川の美しさに見ることができる。

わたしがブダペストを訪れたのは、ほんの思いつきだった。
2018年11月、クロアチアからオーストリア、プラハを旅する途中、ウィーンからブダペストへは高速鉄道でわずか2時間半で行けることがわかり、急遽、日帰り旅行に出かけることにしたのだ。

ハンガリーの物価は日本の1/3。

ハンガリーの物価は日本の3分の1から半分程度。500mlのミネラルウォーターが約25円、タクシーの初乗りは200円程度と、物価はかなり安い。他国同様、観光客向けのレストランは割高傾向にあるが、それでもほとんどの場合は日本より安い。

なお、ハンガリーはEU加盟国だが、独自の通貨“フォリント(HUF)”を使用しているので注意を。
日本で日本円をフォリントに両替をするのはレートがあまりよくないので、現地で日本円から両替、または国際キャッシュカードなどを使って現地のATMで引き出すことをすすめる。

これぞ、旅情。ブダペスト東駅

国際列車の場合、その多くはブダペスト東駅(Keleti Pályaudvar)に到着。ヨーロッパ特有の頭端式ホームに降り立つと、その“濃さ”に胸がきゅっとした。それは少し、息苦しさを感じるほど。

ドーム型の屋根と太陽の光が遠慮がちに降り注ぐ大きなガラス窓。まるで映画のワンシーンのような美しくも儚げな佇まい。降り立ったその瞬間からすっかりこの国の虜になってしまったわたしは、日帰り旅行であることを激しく後悔した。

世界一美しいマクドナルドがあるブダペスト西駅

ブダペストの駅を象徴するもうひとつの駅、ブダペスト西駅(Nyugati Pályaudvar)。パリのエッフェル塔と同じ、エッフェル氏による設計の駅舎もまた、旅情がむんむん。

構内にはマクドナルドがあり、高級感漂う内観と照明から、“世界一美しいマクドナルド”と、言われているのだとか(なお、世界一美しいマクドナルド、スターバックス、図書館etc.は、世界のありとあらゆるところにある)。

世界一美しかろうが、旅情にあふれていようが、店内は世界のマクドナルド共通の、ポテトを揚げる香ばしいにほいに包まれている。
そのアンバランスさもまた、旅情。

無料スポットの駅舎を存分に楽しんだところで、ブダペストが“ドナウの真珠”と称されるゆえんを確かめに出かけた。

ハンガリー国会議事堂

ハンガリー国家議事堂(Országház)は、ヨーロッパでは2番目、世界では3番目に大きい巨大建築物である。1904年の建設から100年以上経った今でもこの地で政治が行われている。

議事堂内には聖イシュトヴァーンの王冠や宝石などが保管・展示されており、国会閉会日にはツアーを通して見学することができる。

ブダ城

街全体が世界遺産のブダペストは、街を北から南へ流れるドナウ川を挟んでブダ地区とペスト地区に分かれている。

西岸に位置するのが丘陵地のブダ地区。丘に上ってすぐ見えるのがブダ城(Budavári Palota)だ。13世紀初頭に建てられたブダ城は、もともと諸外国からの侵略に対する要塞として建立。今はその役割を終え、ハンガリーの歴史を学ぶ資料施設や観光スポットになっている。

セーチェーニ鎖橋

ブダ地区とペスト地区をつなぐ架け橋、セーチェーニ鎖橋(Széchenyi Lánchíd)。第二次世界大戦でドイツ軍により破壊されたものの、1949年に復興。以後、ブダペスト市民の交通の要となっている。

夕暮れが近づくと、どこからともなく三脚とカメラを携えた人たちが集まってくる。それもそのはず。ブダペストは黄昏時から夜までの、刻々と変化するわずかな時間が最も美しいのだ。

ウィーンに戻る予定の列車を、1本遅らせてでも見たかったブダペストの真珠たち。できることなら時間など気にせず、心ゆくまで眺めていたかった。
ああ、日帰り旅だったことが悔やまれる。

ハンガリーは、フォアグラがお安いんです。

美しい景色に黄昏ているだけのわたしではない。
日帰りしてまでハンガリーを訪れた理由のひとつは、フォアグラである。
そう、ハンガリーはフォアグラ天国なのだ!

マッシュポテトにフォアグラのソテーがたんまり。チェリーソースでいただくその味は…
アメージング!
こってりこてまろなフォアグラを、チェリーの酸味がやわらげているから、全くしつこくない。

でも、お高いのでしょう?
驚くなかれ。これだけフォアグラがのっていながらなんと、4,490フォリント。
日本円で約2,000円こっきり。
アメージング!

ハンガリー名物をもうひとつ。「グヤーシュ」 と呼ばれるパプリカが効いているらしいスープ。
“らしい”というのは、パプリカがどう効いているのかよくわかんなかったから。
メニューの説明によると、
「パプリカとタマネギをラードで炒め、牛肉、ジャガイモを加えてつくられる煮込み」。

訪れた11月。冷えたからだに染み入るグヤーシュのお値段は、
1690フォリント、日本円で約660円!
ハンガリー、最高か。

実は日本とよく似た国・ハンガリー。

北海道より少し大きいハンガリーには、約1300 か所の源泉があり、それぞれ違った効能と特徴を持っている。

同じヨーロッパでも華やかな西欧とは異なる中欧・ハンガリーは、どこの国とも似ていない。なのに、なぜか親近感を覚える。

それもそのはず。一説によると、4世紀後半にアジアからの民族がハンガリー付近に移り住んだとされ、日本人とハンガリー人は共通のルーツを持っているかもしれないのだ。
たとえば、日本人の幼児に多く見られる蒙古斑がハンガリー人にもある。
ハンガリー語と日本語は苗字と名前の順番が日本と同じ。そして温泉好きという共通点も。

円安の最中、できるだけ費用を抑えて旅をしたい、できればヨーロッパという方は、ハンガリーを検討してはいかがだろう。
お値段以上の感動と美味しさが待っている。

もちろんわたしも、再訪を心に決めている。
今度は、数日滞在し、ハンガリーにどっぷり浸かるつもり。

おだりょうこ

猫と旅、音楽と映画で形成されたライター&エディター。旅欲が止まらない旅ジャンキー。雑誌編集、テレビ局勤務を経てフリーランスに。料理は作るの食べるのも得意だったりする。