夢を持とう。「バケットリスト」が思い出させてくれたこと

バケットリスト

プロ野球選手、世界一周旅行、世界を救うスーパーヒーロー…。

子どものころは、たくさんの夢を抱いていた。それが実現可能かどうか、周りからどう思われるか、そんなことは全く考えていなかった。自分の心に素直になって「これがやりたい」「これになりたい」と口にする。そのすべてが、キラキラと輝く夢だった。

周りの大人たちからは、夢を持つことの大切さを耳にタコができるほど、教えられていた気がする。学校の先生、親、近所のおじさん、おばさん。何かにつけて「将来の夢は?」と聞かれていたんじゃないかと思う。

いつからだろう、夢を尋ねられることがなくなったのは。自ら夢を語ろうものなら「現実を見た方がいい」「夢は諦めた方がいい」と言われるようになった。だから口をつむぎ、自分の内側に夢をしまいこんでおくようになった。そして、あんなにもキラキラと輝いていた夢は、いつの間にか埃をかぶってしまった。

「夢なんて持っていたって仕方がない

現実の厳しさに打ちひしがれ、もう夢なんて手放してしまおうと考えていた、社会人3年目。そんなときに出会ったのが“バケットリスト”だった。

バケットリストとの出会い

ぼくにバケットリストのことを教えてくれたのは、知り合いの経営者だった。

死ぬまでにやりたいことリストのことを“バケットリスト”って言うんだよ。100個書き出すのが一般的だね」

え? 100個も……。途方もない数で、そんなにあるかな、と疑問が頭をよぎった。

「別に大袈裟なことじゃなくてもいいんだよ。ニューヨークへ行くとか、有名店のコース料理を食べるとか、そんなものでいいんだよ」

やりたいことや欲しいものはぼくにもたくさんある。それなら100個くらいリストアップできるかもしれないと思った。

また知り合いの経営者は、2007年に公開された映画『最高の人生の見つけ方(原題:The Bucket List)』も紹介してくれた。

この映画は、ジャック・ニコルソンが演じる自動車整備工のエドワードと、モーガン・フリーマンが演じる実業家のカーターという2人の男性が余命6ヶ月の宣告を受け、バケットリストをもとに旅をするという物語だ。

せっかく紹介してもらったのだからと映画を観てみることにした。「スカイダイビングをする」「ライオンを狩りに行く」「涙が出るほど笑う」。

次々とやりたいことを実現させていく2人の姿に「なんて楽しそうなんだろう」と胸がときめいたことを覚えている。自分もこんなふうに生きたかったんじゃないかと心に火が灯った感じがした。

ちょうど経営者が運営する会社で「バケットリストを作ろう」というイベントが開かれる予定だった。迷うことなく、申し込みボタンを押した。

初めてのバケットリスト作り

イベントの参加者は大体30名ほど。「4、5人ぐらいのグループに分かれ、30分間でできるだけ多くの夢を出しましょう」とファシリテーターから説明があった。またいくつかのルールも設けられていた。

  • やりたいことの大小は気にしない
  • 実現可能性は考えない
  • とにかく頭に浮かんだら書き出す
  • 他人の夢をカンニングしてOK
  • それいいな、と思ったら真似してOK

ルールに則って、とにかく頭に浮かぶことを紙に書き出す「オーロラを見る」「欲しいブランドの服を買う」「毎日笑って暮らす」。30個ほど出たところで、手が止まりそうになる。

隣の人を見ると、ガリガリと書き出している。ぼくにも、まだまだあるはずだ。深く考えず、ただただ思いつくままにやりたいことをひたすら書いた。

そして30分が経ったとき、真っ白だった紙に100個を超えるやりたいことが並んでいた。

その後、参加者同士でお互いのバケットリストを見せ合い、感想を言い合う時間があった。「これ、自分もやりたいんですよ」「どうしてこれがやりたいと思ったんですか?」。共感の声や質問が飛び交い、いろいろな人のやりたいことについて話を聞いたり、自分のことについて話したりする。

「現実を見た方がいい」「夢は諦めた方がいい」なんて言う人は、1人もいなかった。

ふと懐かしさのようなものが込み上げてきた。小さいころは、こんなふうにやりたいことについて語り合っていたっけ。「いいね」と周りも褒めてくれたっけ。

大人になって忘れてしまっていた、このキラキラとした感じ。何かが実現したわけでもなく、書き出し、語りあっただけだったのに、とてもドキドキ、ワクワクした。

2019年3月に作ったバケットリストの一部を公開

それからぼくは計5回ほどバケットリストを作っている。ここで、2019年3月に作成したバケットリストの一部を公開しよう。

  1. 線香花火をしながら語り合う
  2. 毎日7時間の睡眠時間を確保する
  3. 風呂に毎日浸かる
  4. 複数拠点生活をする
  5. 一眼レフを買う
  6. ライターになる
  7. スーパー戦隊のブラックになる
  8. 石油王と友だちになる
  9. ピラミッドの秘密を解き明かす
  10. 猫と寝る

このときは合計で157個のやりたいことを書き出していた。「こんなことどうやって叶えるんだよ」という現実離れしたものもあれば、「あれ、これ、すでに実現しているのでは」というものもあった。

実現しているものを数えてみると、約15個ある。全てが書いたままの通りに実現してはいないけれど、似たような形で現実になっている。

バケットリストを頻繁に確認していたわけではない。書かれているものを意識して実現させようとしていたわけでもない。何の気なしに書いたバケットリストを数年ぶりに見返してみたら、実現していたのだ。

夢は案外、叶うのかもしれない

「バケットリストに書き出したものを夢とは言わないんじゃないの? 目標とか、欲望とか、そういったものなんじゃないの?」と思われる人もいるだろう。

でも、ぼくにとっては紛れもない「夢」である。どんなにちっぽけでも、ほとんどの人が実現していることでも、夢は夢だ。心からやりたいと思ったことは、すべて夢だ。

ということは、ぼくは少なくとも15個も夢を叶えている。5回のバケットリストすべてを合わせれば、50個ぐらいの夢は叶っているんじゃないか。

「夢なんて持っていたって仕方がない」

一度はそう思っていたけれど、夢を持つことはやっぱりいいものだ。叶えば嬉しいことはもちろん、たとえ叶わなくても、ただ書き出すだけでも意味がある。

ずらーっと並んだやりたいことを眺めていると、自分はこんなにもたくさんの夢があるのかとびっくりする。実現した未来を想像してワクワクする。自然と顔がほころび、胸が高鳴ってくる。できるかもしれない。そんな力がみなぎってくる。

改めて言いたい。夢を持とう。

あなたがもしバケットリストを作ったことがあるのだとしたら、ぜひ見せてほしい。一緒に夢について、語り合おう。

佐藤純平

ライター&コミュニティマネージャー。答えのないことを、ああでもない、こうでもないと考え続けるのが好き。足の臭さと猫背が悩み。