運命の出会い。11階のベランダに突然やってきたきみは

がうらさん夫妻

がうらさん夫妻。娘さん2人とアカハラウロコインコのプコさん(推定6歳)との5人家族。

がうら家の家族の1人であるアカハラウロコインコのプコさん。プコさんとがうら家の出会いは衝撃的で運命的なものでした。その出会いを振り返り、プコさんとの笑顔の絶えない日々についてお話しいただきました。

プコさんとの出会い

缶で遊びたがるプコさん。扇風機を止まり木に

――プコさんとの出会いについて教えてください。

がうらさん 5年前のある日曜日、家族4人で出かけようとしていたんです。身支度が終わって、よし出かけようとなった時に長女が「ベランダからプコプコって音がする」と言い出して。我が家はマンションの11階で、これまでベランダになにかが入ってくることはありませんでした。恐る恐るカーテンを開けてみたら、網戸にカラフルな鳥がへばりついていて(笑)。保護して警察署に届けなくては!と思い、予定していたお出掛けを中止して、急いで鳥カゴを買いに行きました。

――みなさんで鳥かごを買いに行ったんですか?

がうらさん 主人と次女が買いに行きました。その間私は「ちょっと待ってね、ちょっと逃げないで」と、怖くて触れないので必死に話しかけて(笑)。

ご主人 長い間なにも食べてないかもしれないし、ペットショップの人に聞いて、水入れや餌入れ、餌も購入して。

がうらさん 主人と次女がカゴを買ってきて、満を持して扉を開けあたらすぐに肩に止まってきたんです。「すごく人懐こい子だなあ~」と思いましたね。それで、体をみてみると刻印が入った鉄のリングが足についていたので、飼い主を見つける手掛かりになるのでは?とSNSに何枚か写真をアップしました。

プコさんとの出会いの日。「南国の鳥が来た!」とびっくり

――そして警察署に行かれたんですね?

がうらさん そうなんです。そうしたら「虐待目的で飼い主のふりをする人もいるから、SNSにアップした情報を取り下げてほしい」と言われて。ただちに取り下げました。そして、警察署にしばらく預かってもらうことも検討しましたが、アカハラウロコに限らずインコは1日2回程度放鳥させてあげないといけないらしく。そのまま警察署にいたら、ただ餌と水が与えられるだけ。カゴから出してもらえることもなく、かわいそうではないかと。そこで、以降は自宅で預かることにしたんです。

警察署に言われてSNSから取り下げたものの、プコの足首についてる鉄の足輪からブリーダーさんはわかっていましたので、飼い主さんと連絡がついたらこちらに連絡するか警察署に出向くかしてほしいと伝えていました。そして、うちにプコが来て1ヶ月ほど経ったある日、警察署から「飼い主さんが見つかった」との連絡が。プコを引き渡す条件として、本当の飼い主さんなら必ずわかるであろう”足輪に刻印されてるアルファベットと番号を言っていただく”ようお願いしました。

――その時はどんな気持ちでしたか?

がうらさん 飼い主さんが見つかってよかったなあと安心した反面、正直ショックでもありました。その時すでに1カ月ほどお世話をして愛着が湧いていましたから、「うちの子になっちゃえばいいのにね」なんて話も出ていました。

ご主人 私は飼い主さんが見つかった直後、プコと離れるのがいやで食事が喉を通りませんでした(笑)。

――ところがプコさんをがうら家で飼うことになったんですね?

がうらさん そうなんです。飼い主さんから「鉄の足輪に書いてある番号がわからないので、もう(引き取らなくても)いいです」って返事が来たというんです。あまり愛着がなかったのかわかりませんが、すぐにスッと諦められた感じだったそうで、警察署の方も「がうらさんが引き取ることになってよかったと思っています」と言ってくれました。それで、うちで引き取ることになりました。

どこからどう逃げて、どのような生活をしてからうちにたどり着いたのかは分かりませんが、「この家の人ならお世話をしてくれそう!」とプコに伝わったのかもしれません。

プコさんのクセ

――そもそも鳥を飼うことに抵抗はありませんでしたか?

がうらさん 昔、九官鳥を飼っていたので抵抗はありませんでした。インコを飼ってみたいと以前から思っていましたし。ただ、最初はやっぱり怖かったです。この子はじゃれてるつもりだけど、力加減がわからないから噛まれると血が出ることがあるんですよ。噛んだ後に少し捻るから、内出血になるんです。普通に痛い(笑)。最近は、噛むと怒られるっていうのを学んでくれたようですが。

――噛まれることがなくなったんですか?

がうらさん 甘噛みになった…という感じですかね。でも、びっくりさせると本気で噛まれます。先日は肩に乗っているのを忘れていて、プロテインのシェイカーを振ったら驚いて思いっきり噛まれました。あと、美顔ローラーを顔にコロコロしていたら「別のやつと遊んでいる!!」と怒っていましたね。飲み物を飲もうとした時も勘違いして挑んできたことがありました。嫉妬深いんです(笑)。

――なんだか、かわいいですね(笑)。

がうらさん 洗濯をしようとした時もキャップに嫉妬したのか突然噛んできて、こちらがびっくりして、プコに洗剤がかかってしまったことがありました。無理やり水浴びさせると大乱闘になってしまうので(笑)、濡れタオルで拭いて水浴びしてくれるのを待ちましたね。

ご主人 インコってカーテンとかをボロボロにしがちなんですけど、うちの子はイタズラとかしないタイプなので、物が壊されるようなことはあまりないんです。なぜか子どもの2段ベッドの柵だけはめちゃめちゃ齧ってましたけど。

ベットの柵をカジカジ…。蛍光灯のヒモで遊ぶのも好き

がうらさん そうだったね(笑)。あとはトイレに必ずついてきてくれますね。「あ、トイレ行くの?一緒に行きますよ」って感じでついてきて、トイレでなにをするでもなくキョロキョロ周りを見渡しています。

――今もがうらさんをツンツンついばんでいますよね。

がうらさん ちょっとイライラしているみたいです。まあまあ痛いです(笑)。

プコさんとのコミュニケーション

がうらさんをメロメロにする、プコさんの上目遣い

――たまに鳴き声もあげますね。

がうらさん アカハラウロコインコは普通のインコのようにおしゃべりはできないんですが、鳴き声で大体なにを言っているかわかりますね。人が帰ってきたときに発してくる鳴き声は「おかえり」だということはわかっています。

ご主人 「おかえり」に「ただいま」って返すとまた「おかえり」っていうので、「ただいま」って返すとまた「おかえり」って……このやりとりを数十回繰り返すこともできます(笑)。

――コミュニケーションをしっかり取れるようで驚きました。毎日肩に乗せてるんですか?

がうらさん 朝30分、夕方1時間くらいは乗せていますね。カゴから出してくれって態度の時があるので、その時に。しばらく遊ぶと「飽きたからもういいわ」って感じで勝手にカゴに戻っていきます(笑)。カゴに戻るタイミングで大好きなひまわりの種をあげてます。

――ひまわりの種が好物なんですか?

がうらさん そうなんです。すごく喜んで食べるんですよ。食べ過ぎるとよくないので、カゴに戻った時にだけ3粒ずつくらいあげています。カゴに戻るとひまわりの種がもらえるとわかっているので、カゴから出たり入ったりして「カゴに戻ったから“アレ”もらえますよね?」みたいな態度をとってくるのが可愛いんですよ(笑)。

「カゴに戻りましたけど…もらえますよね?」アピールが実り、世界一大好きなひまわりの種をゲット

――今こうしてインタビューしている間も、話を聞いているような態度をしますね。

がうらさん 自分の話をしているのはわかっていると思います。怒られている時は明らかに目を背けますしね。撫でて欲しい時は胸の上に乗って上目遣いをしてきます。それがめちゃめちゃ可愛いんです(笑)。

プコさんと一緒に長生きを

――プコさんがお家にきて、何か変化はありますか?

がうらさん 外出したときに「プコが寂しがっているとかわいそうだから早く帰らなきゃ!」と思うようになりました。あとは、いろんなところにフンをされるので掃除する意欲がなくなりましたね(笑)。飛ぶためにお腹を軽くしたいんでしょうから仕方ないと諦めています。

ご主人 正直、これほどインコとコミュニケーションが取れるとは思っていませんでした。人間でいうところの、3歳児くらいの知能はあるそうです。言葉は通じませんが、ワンちゃんネコちゃんと同じようにスキンシップで愛情をしっかり受け止めてくれてます。夫婦ですっかり鳥好きになりました(笑)。

がうらさん プコを飼うまでは鳥にそこまで興味がなかったのですが、今は鳥全般が可愛くて可愛くて(笑)。動物園に行っても鳥コーナーに長居してしまうようになりました。もちろん、一番可愛いのはプコなんですけど。

――今後はプコさんとどう過ごしていきたいですか?

がうらさん アカハラウロコインコって、寿命が10年から30年だと言われているんです。だからまだまだ長生きしますよね。今大体6歳なので、もしかするとあと20年以上生きるかもしれません。なので、プコのために、私も長生きしなきゃなと思っています。元々私は長生きしたいタイプではなかったんですが、プコを置いて死ねません。

プコがなぜうちに来て、今どう思っているかは分かりませんが、「この家に来てよかった」って思ってくれていたら嬉しいですね。

ゆう

農学博士ライター。民間企業でイチゴの研究・栽培に携わった後、フリーランスライターとして独立。取材記事をメインに執筆している。人の価値観や考え方に触れるのが好き。