ひとりラーメンのすすめ。自由気ままに、おなかいっぱい食べるなら

ラーメンの食べ歩きを始めて、15年ほどになる。誰かと一緒にラーメン店に行くこともあるが、ひとりで食べることも多い。

世間には「ひとりでラーメン店に入りたいけど、ちょっと恥ずかしい」と感じる方もいると聞く。特に、女性の方がそう感じやすい傾向があるようだ。

しかし、そもそもラーメンは黙々と啜るのが向いている料理。同行者がいたとしても、スープが冷めないうちにおいしく食べようと思うと、会話なんてしている時間もない。つまり、ひとりで行っても誰かと行っても、体験は大して変わらないのだ。

町を歩いていておなかが空いたときに、ひとりでもふらっと入れる気軽さがラーメン店の魅力。さらに、気になるラーメン店を目的地のひとつにすれば、ひとり旅もうんと楽しくなるはず。この記事では、自由気ままな“ひとりラーメン”の魅力を紹介したい。

わたしのこと

  • 年齢:30代
  • 性別:女
  • 職業:PRプランナー
  • ライフスタイル:夫と同居、インドア派時々アウトドア派、リモートワーク、夜型、ラーメンはこってり派

ひとりラーメンのメリットとは

まずは、ひとりラーメンの利点をいくつか挙げてみる。

自分のペースで食べられる

ラーメンを食べる速さは、人によってまちまちだ。複数人でラーメン店に入ると、食べ終わるタイミングがずれてしまうことがよくある。

行列ができているような人気店では、次の人のためになるべく早く席を空けてあげたいところ。しかし、先に食べ終わったからといって同行者を店に残していくのはためらわれる。結果「急がなくていいよ」などと言いつつ、席で所在なさげに待つことになる。一方で、まだ食べている側は焦ってしまい、慌てて麺を口に押し込むようなことになりがちだ。

ささっと食べるか、ゆっくり味わうか。ひとりで行けば、自分の気分に合わせてペースを決められるのがいい。

人気のラーメン店にも早く入りやすい

人気のラーメン店は、長い行列ができることも多い。少しでも早くラーメンにありつきたいなら、ひとりで行くのがおすすめだ。

店の座席配置にもよるが、ひとりの方が早く店内に入れることが多い。ふたり以上で行くと、人数分の席が並びで空くまで待たないといけないからだ。おなかが空きすぎて耐えがたいときに、お客さんの回転が遅いラーメン店に複数人で並んでいると、「あそこに空席が1席あるのに…」と歯がゆい思いをすることはままある。

ラーメン店をはしごしたいとき、自分のペースで回れる

ラーメン沼にはまると、一日に何店舗も食べ歩く機会が増えてくる。旅行などで知らない町を訪れる場合は特に、だ。食べログやGoogle Mapに保存していた気になるラーメン店を、できる限り回っておきたくなる。

しかし、胃の容量は人によってばらつきがあるので、自分よりも少食の人とラーメン店をはしごすると、行きたい店を回りきれない可能性がある。逆に、自分よりもよく食べる人と行くときは、気を遣って少し無理をしてしまうことも。

ひとりであれば、おなかと相談しながら自分のペースでラーメン店を回ることができる。「もともと予定にはなかったお店だけど、気になるから入ってみようかな」なんていうことを、自分の一存で決められるのもいい。

ひとりラーメンはこんな人におすすめ

誰でも楽しめるひとりラーメンだが、こんな人には特におすすめしたい。

忙しいときに、おなかいっぱいおいしいものを食べたい人

混雑具合やラーメンの提供スピードにもよるが、早ければお店に入ってから30分以内で出てこられるのがラーメン店のいいところ。仕事の合間のひとりランチにもぴったりだ。

しっかり食べたいときは、大盛りにしたりライスをつけたり。量を柔軟にコントロールできるお店が多いので、おなかも十分に満たされる。忙しいときに「コンビニ弁当でさくっと済ませるのはなんだかなあ…」と思いがちな人には、ひとりラーメンをおすすめしたい。

ひとりの時間を楽しく過ごせる人

冒頭でも触れたように、そもそもラーメンは黙々と啜るのに向いている料理だ。店の営業スタイルにもよるが、同行者と喋りながらゆっくり滞在するお客さんは多くない。できたてのラーメンをおいしいうちに食べようと思えば、必然的に会話もなくなる。

ただ、行列店に並んでいる間や、席でラーメンの提供を待っているときは、やや手持ち無沙汰になることもある。そんなとき、本を読むなどしてひとりでも楽しく過ごすことができれば、待ち時間もまったく苦にならないはずだ。

新しい町を訪れる機会が多い人

仕事で全国各地へ出張に行く機会が多かったり、ひとりで新しい町を散策するのが好きだったり。そんな人には、ひとりラーメンを心からおすすめしたい。

どの町にも、大抵ラーメン店がある。まずは、訪れる町の人気店を調べておけば、心躍る目的地がひとつ増えることになる。また、レビューサイトで高評価がついていなくても、地元の常連さんに愛されているような、おいしくて記憶に残るラーメン店に出会えると喜びもひとしおだ。

ひとりラーメン旅に行ってみよう

「ひとりラーメンが楽しくなってきた!」という人には、“ひとりラーメン旅”をおすすめしたい。ここからは、私の実体験を交えて、ひとりラーメン旅の魅力をご紹介する。

日帰りの旅

まずは、気軽に日帰りで。気になるラーメン店を目的地にして、遠くの町を訪れる旅だ。行列店の場合は食べ終わる時間が読みにくいので、ラーメンを食べることを最優先にして旅程を組み立てた方がいい。混みがちな休日を避け、平日に有給休暇を取るなどして決行するのもおすすめだ。

日帰りひとりラーメン旅の目的地で記憶に残っている場所のひとつは、湯河原の大人気店“らぁ麺 飯田商店”だ。今はインターネットでの事前予約制になっているが、私が訪れた当時は行列に並ぶスタイルで、どのぐらい待つのか不安になりながら向かったことを覚えている。

東京から2時間ほど電車に揺られ、着いたのは夕方だった。町は自然が豊かで、ずいぶん遠いところまで来たような気がした。

平日に有給を使って訪れたためか、幸いあまり並ばずに入ることができた。「遠くまでわざわざ来た甲斐があったな」と、10年近く経った今でも感動の余韻が残っている一杯だ。

泊まりがけの旅

数日かけて各地のラーメン店をめぐる、ひとり旅もおすすめだ。ラーメンは地域ごとに異なる文化が発展しており、その場所に行かないと出会えない味もある。

最も記憶に残っているのは、24歳のときに小さなリュックだけを背負って出発した、6泊7日のひとりラーメン旅だ。東京から博多に飛行機で飛び、そこから熊本、大分、徳島、香川、愛媛、広島を、電車やフェリー、自転車などを駆使しながら回った。

旅の最大の目的地は、徳島だった。当時住んでいた高円寺に“中華そば JAC”という徳島ラーメンの店があり(現在は閉店)、その味にはまってしまったのだ。通っているうちに、どうしても本場である徳島県でラーメンを食べてみたくなって、この旅を決行した。

徳島ラーメンのスープは、茶系・白系・黄系という分類があるが、私はこってり濃厚な茶系が好きだ。少し甘みもある豚骨醤油スープで、味が濃いのでライスにもよく合う。具には豚バラが使われており、生卵を乗せて食べるのも特徴だ。

移動の関係で徳島での滞在は4時間ほどだった。車もないため、徳島駅周辺で3軒のラーメン店を回った。ラーメン3杯に、ライスは2杯。最後の1軒は、満腹すぎてライスを諦めざるを得なかった。おなかははち切れんばかりだったが、店舗ごとに雰囲気もラーメンの味わいも異なり、楽しい食べ歩きとなった。

初日に訪れた博多も印象深い。到着したのは夕方で、そこから3軒のラーメン店を回った。最後の1軒は屋台で、男性客しかいなかったためさすがに緊張したが、いま思えば忘れがたい体験だ。東京ではなかなか出会えない、強い豚骨の香りに胸がときめいた。

四国から広島には、自転車を借り、しまなみ海道経由で渡った。オープンと同時にレンタサイクル店に飛び込み、必死でペダルを漕いだ。なんとしても、尾道にあるラーメン店が閉まるまでに到着したかったのだ。へろへろになりながらなんとか営業時間内に辿り着き、啜った尾道ラーメンの味は忘れられない。ちなみに、しまなみ海道の途中の伯方島には「伯方の塩ラーメン」があり、こちらもおいしかった。

気が赴くまま、食べたいときに食べたいものを食べる。振り返ると、ひとりだからこそできた旅だと思う。ひとりラーメン旅は、底抜けに自由だ。

まとめ

「ひとりラーメンは少し恥ずかしい」と二の足を踏んでいる人も、まずは入りやすそうなラーメン店でぜひチャレンジしてほしい。いまは女性客が集まるラーメン店も増えてきている。また、大きな駅の構内にある店舗などは、新規客が多く空間も開放的だったりする。一度入れば、二度目は身構えることもなくなるはずだ。

自由気ままなひとりラーメンは、忙しい日の味方であり、旅の大きな目的にさえなる。ライフスタイルに合わせて、ぜひ思い思いにひとりラーメンを楽しんでいただきたい。

東樹詩織

食や旅の領域でPR・ブランディングに携わる傍ら、執筆活動を行う。アートと本にのめり込み、「as human footprints」名義でZINE出版を開始。写真と動画の撮影・編集も。最近の関心事は、アジア各国のカルチャー、映画、海外文学、批評、3DCG、AI。キャンプ好きが高じて、東京↔︎信州・上田で2拠点生活中。