私は京都が好きで、京都に住む前からよく遊びに出かけていた。その楽しみのひとつに、京都での寺社巡りがあった。誰かと一緒にする寺社巡りもいいけれど、“ひとり寺社巡り”もおすすめだ。お寺や神社を見て、お参りをし、おみくじを引く。それだけでも十分ではあるけれど、その場所の空気、音、風、植物、景色などを思う存分、そして思いのままに味わうことができるのが、ひとり寺社巡りの魅力だと思う。
わたしのこと
- 年齢:31歳
- 性別:女性
- 職業:ライター
- ライフスタイル:一人暮らし、インドア派、出社、朝型、自炊派
行きたいお寺や神社の候補が増えていく、ひとり寺社巡りの手順
私がお寺や神社に行きたいと思って行き先を決めるときは、以下のことを調べたり考えたりすることが多い。
- 季節ごとのイベント
- 自分がどのように過ごしたいか
- どんな景色を味わいたいか
たとえば、2025年は巳年。蛇にまつわる神社を調べると、いくつか該当するお寺や神社が見つかった。お寺や神社のHPを見ながら、特徴や開催されるイベントなどをチェック。その次に、自分は何を重視して過ごしたいだろうと考えてみる。静かに過ごしたいなと思ったら、敷地が広くて、散歩コースや庭園があるところを探し、候補先を絞っていく。
以下のキーワードで検索してみるのがおすすめだ。
- 季節に関する花や植物:梅、桜、菊、紅葉、ツバキなど
- 干支
- 特別公開
- 庭園の景色
- アートイベント開催
- 御朱印(限定御朱印なども)
そうするといつのまにか、行ってみたい寺社候補がたくさんあがってくる。ときには、もっとラフな調べ方をするときもある。行きたいカフェやお店を先に決めて、その近くにある寺社をGoogle mapで探してみたり。インターネットで上記のようなキーワードで検索してもすぐには出てこないようなあまり有名ではない寺社の場合もあるけれど、そういった出会いも特別感がある。また、自分がよく通る道にお寺や寺社があったりしないだろうか。日常のなかに寺社参拝を取り入れてみるのも新たな発見があると思う。
さらに、寺社を巡っている証として、御朱印集めもおすすめだ。季節や干支限定のものがあったり、切り絵のようなデザインになっていたり、種類も豊富でいろいろと集めたくなる。形に残る思い出としてもぴったり。この御朱印が欲しいからこの寺社に行くといったような巡り方も楽しいこと間違いなし!
ひとり寺社巡りのメリットは、自分に集中できること
寺社の周りには、きれいな植物やお庭、庭園から見える風景や音、風、寺社周辺の街の雰囲気など、たくさんの魅力がある。ひとりで巡っていると、いろんなものに気づくことができる。ひとり寺社巡りのメリットのひとつに、それらを自分のペースで、思うままに味わうことができることがあると思う。
そして寺社に来ると、どこか清々しい気持ちになったり、癒されたりしないだろうか。景色を眺めたり、ゆっくりと境内を歩いたりしていると、自分の内側が変化していることにも気づく。たとえば、昨日仕事でミスしてしまって落ち込んでいたけれど、なんだか少し心が軽くなったように思えたり。日々の疲れが癒され、もう少し踏んばれる気がしたり。よく浄化されるという言葉を聞くけれど、それを実感できる。
誰かと一緒に巡ることも楽しいけれど、ついついおしゃべりに花が咲いて、寺社を見て、写真を撮り、お参りをして満足。「話したいことがいっぱいあるし、じゃあそろそろカフェに行こうか?」となってしまうことはないだろうか。それも仲睦まじくて、いいのだけれど、少しもったいない気がしてしまう。
自然や歴史を感じることができる場所で景色を楽しみ、ぼーっとする。誰かに気を遣うわけでもなく、ただただ自分のために時間が続いていくような感覚。そういった時間を持ちたいと思ったら、寺社巡りをぜひ取り入れてみてほしい。
お寺でアートを味わう
京都のお寺でアートイベントを実施されているところがあって、それは“ひとり寺巡り”にぴったりであり、初心者さんにもおすすめだ。鑑賞する対象があるので、ひとりでお寺に足を運ぶのに慣れていない人にとっても、はじめやすいのではないかと思う。
私が好きでおすすめするお寺が『両足院』だ。建仁寺の敷地内にある寺院で、こじんまりとした趣のあるお寺だ。書院から見える庭園はとてもきれいで、ゆったりとした時間が流れている。
両足院で行われた以前のイベントに、「『千年後の百人一首』原画展 ―糸で紡ぐ、歌人のこころ―」というものがあった。写真の上に、糸やビーズで刺繡を施すなどの繊細な作品をつくっておられる清川あさみさんという方と、詩人の最果タヒさんのコラボレーションでの展示だった。
おふたりは『千年後の百人一首』(リトルモア刊)を出版されており、最果さんは自身の感性で、百人一首の一首一首を現代語訳し、清川さんが糸や布、ビーズを用いて絵札をオリジナルで制作するというもの。それらを見ていると、心が洗われるような感じがするほど美しく、お寺の雰囲気とあいまって、とても印象に残っている。
このときはじめて、お寺でアートに触れたように思う。歴史ある場所でアートに触れることができる時間は本当に贅沢だと感じた。気になる作品は何度も見たり、自分ならどんな風に歌を詠むのかなと想像したりしながら鑑賞した。
両足院(京都)
京都府京都市東山区大和大路通四条下る4丁目小松町591
最寄り駅/京阪「祇園四条」駅から徒歩7分
https://ryosokuin.com/
庭園を眺めながらゆっくりと。滴る雨も魅力
雨の日のお寺や神社も実は悪くない。大雨なら大変だけれど、ちょっとの雨なら“ひとり寺社巡り”もまた違った楽しみ方ができる。
雨のときにおすすめなのは、庭園を茶室や書院などから眺めるということ。ずっと傘を持ちながら移動するのは大変だが、部屋から外の景色を楽しむことができるので、少し一息つくことができる。
先ほどにも名前があがった建仁寺だが、ここで雨の日を過ごしたときは、とても心が落ち着いた。庭を四方から見ることができて、人とほどよく距離感を取ることができる。木がたくさん植わっていて、向かいにいる人の顔が見えづらく、自分の時間に没入しやすい。私が訪れたときは冬だったので、木々の葉は完全に落ちてしまっており、少し寂しい感じもするが、静かで物悲しい雰囲気から詫び寂びを感じられた。
雨音を聴きながら、いつまでもずっとここに居たいような場所だった。出かけたいけれど、雨で億劫だなと思うときこそ、お寺や神社でゆっくりと考えごとにふけったり、何もせず無の時間を過ごしてみるのも、おすすめだ。
建仁寺(京都)
京都市東山区大和大路通四条下る小松町
最寄り駅/京阪「祇園四条」駅から徒歩7分
https://www.kenninji.jp/
毎年恒例行事。おみくじを引きに行く寺
ここ3年ほど、六波羅蜜寺のおみくじを楽しみにしている。六波羅蜜寺はどちらかというと、空也上人像が有名。「南無阿弥陀仏」を唱えると、その声が阿弥陀如来の姿に変わった様子を像にしたもので(口から、阿弥陀如来が出ている像)、教科書でもその像の写真を見たことがある人は多いと思う。
おみくじを引きにいくとき、誰かと一緒に行って、お互いのおみくじを見せ合うのもわくわくするが、たまにはひとりで、この1年をどんな風に過ごそうかと考えをめぐらせるのもいいのではないだろうか。
六波羅蜜寺のおみくじは、他の占いと違っていて、四柱推命をもとにした占いで、生年月日と性別から1年の運勢を見るもの。たいていのおみくじは、大吉、中吉などなっているが、六波羅蜜寺のは大吉などとは書かれていない。この1年の指針となるメッセージや注意すべきことなどが書かれている。自分に書かれた手紙みたいな感じがして、じっくりと何度も読んでしまう。
おみくじの内容をすべて鵜呑みにするわけではないけれど、背中を押してくれたり、気を付けるべきことを知り、あとは頭の片隅にでも置いておく。このように1年のはじめや節目のタイミングで、毎年行くというところを決めてみるのも、寺社巡りのひとつのきっかけになると思う。
六波羅蜜寺
京都市東山区ロクロ町81-1
最寄り駅/京阪「清水五条」駅
https://rokuhara.or.jp/
自分に没頭する時間を
寺社巡りはいろんな楽しみ方がある。誰かと一緒だから楽しい巡り方もあれば、ひとりだからこそ楽しめることもある。あまり気負わず、散歩に出かけるぐらいの軽い気持ちではじめてみてほしい。
ひとりの時間や何も考えない時間を持つことは意外と難しいと感じることはないだろうか。カフェにいてもつい、スマホが気になってしまう。何かとすぐに繋がれてしまう。今この時間を味わうことが、なかなかできない。そういう人にこそ、お寺や神社に足を運び、時間を忘れて、その場所に身を委ねてみてほしい。きっといつのまにかスマホのことを忘れて、自分に没頭できる時間を過ごすことができるはずだ。