ブラウザ上で開きっぱなしのタブを整理する、“今日のタブ閉じ”

後で読みたい記事、いつか行きたい場所、よく検討してから買いたい商品。興味の赴くままにスマホのブラウザでページを開いていくと、タブがすぐに上限数に達してしまうことが長年の悩みだった。

そんな状況から脱却するために始めたのが、“今日のタブ閉じ”だ。開きっぱなしのタブを見直す時間を設け、1ページずつ消化して閉じていくルーティン。それはまるで、タイムカプセルを開けているかのような、過去の自分の関心に出会い直せる刺激的な試みだった。

日々増えていく、ブラウザのタブ

私が使っているスマホはiPhoneで、ブラウザはSafariを使用している。ブラウザのタブを日々整理されている方はご存知ないかもしれないが、Safariで次々にタブを開いていくと、500個に達したところで上限が来てしまう。

私は常に上限ぎりぎりまでタブを開いているので、新たに何かを調べたくても、これ以上ページを立ち上げられない、ということがよくある。後でゆっくり読むつもりだった記事、慎重に検討してから買おうと思っていた商品のページ、空いた時間に深く掘り下げる予定だった検索結果画面…。それらを、すべてそのまま放置してしまっているのだ。

Safariには“リーディングリスト”という機能があるので、開いているタブのうち、記事などの読み物をすべてリーディングリストに入れる、という整理をしてみたこともある。さらに、Evernoteに「買いたいもの」「行きたい場所」などと題したノートを作成し、該当するページのURLをノートに集約することも試みた。

ところが、そうやって情報を仕分けた結果、二度とそれらの情報にアクセスすることはなかった。棚の奥にしまいこんだものは、私にとってもう存在しないに等しい。もはや何がしまわれているかもわからないのに、わざわざ覗き込んだりはしない。

開きっぱなしの500個のタブは、すぐ手に届くところにあるからいいのだ。アクセスしようと思えば簡単にできる、という状態が、私を安心させてくれる。

なお、Safariではタブグループを新たに作成すれば、新規グループ内でさらに500個のタブを開けるらしいが、これも、手の届きにくい場所に情報をしまいこむのと同じことなので試してはいない。

“今日のタブ閉じ”スタート

とはいえ、足の踏み場もないほど散らかった部屋で過ごし続けるのにも限界がある。そこで、開きっぱなしのタブを見直し、日々1ページずつ消化して閉じていく、というルーティンを作ろうと決めた。その名も、“今日のタブ閉じ”だ。

ひとりで黙々と取り組むのもなんだか寂しいので、ハッシュタグ「#今日のタブ閉じ」をつけて、閉じるページのURLをXに投稿することにした。古いタブの中には数年前の記事などもある。埋もれていた面白い情報に再度スポットを当て、誰かの役に立つことができたら、この試みにも意義があるというものだ。

早速“今日のタブ閉じ”を始めてみると、タイムカプセルを次々に開けていくような感覚があり、なかなか面白い。「このテーマに興味津々だった時期があったな」とか、「そういえばあの出来事がきっかけで、このタブを開いたんだよな」といった具合に、懐かしさが込み上げてくる。

本棚を見ると、本の所有者の内面がよくわかると言われるが、開いているタブもまた然り。タブを見直すことで、過去の自分の関心に、ひいては自分自身に出会い直すことができたような感覚がある。

こんなタブを閉じました

開きっぱなしにしているタブは、記事や商品ページ、検索結果画面など多岐にわたるが、まずは10分程度の時間を確保して読めば閉じられる、短めの記事のタブ閉じを中心に進めている。

実際に閉じたタブをいくつか紹介したい。

旅をしていると、これまで知らなかったことに触れる機会が多い上に、それらについて深掘りをする時間も取りにくいため、必然的にタブが増えることになる。旅先で開いたタブ群を見返すと、旅のアルバムを眺めているかのような懐かしい気持ちに包まれる。旅の間に関心を持ったテーマを振り返る機会なんて、“今日のタブ閉じ”でもしない限り、そうそうないのではないだろうか。

美術館や博物館でも、鑑賞中に深堀りしたいテーマが次々に生まれてくる。ただ、鑑賞の余韻が冷めると開いたタブを放置しがちだ。帰宅後に、展覧会の内容を振り返りながら、興味を持ったテーマの深堀りをするということを習慣化できるとよいのだが。

「いつか買いたいもの」のタブ閉じは難しい。片っ端から購入していったら出費が嵩んでしまう。そのため、問題を先送りにするようだけれど、Amazonのほしい物リストやInstagramのウィッシュリストに保存して閉じることが多い。ただ、こうやって少しでも迷いが生まれるということは、心からほしいものではないんだろうな、と最近は思っている。

興味関心を深堀りする

日々、新たな関心のタネが生まれ、閉じたタブの数だけ新たにタブを開いてしまう。一進一退。さながらラットレースのようだ。

自分の好奇心に従ってあらゆる方向にアンテナを伸ばしていくことも大事だが、やはり立ち止まって深堀りする時間も必要だと痛感している。“今日のタブ閉じ”を継続することで、興味関心を向けた対象をしっかりと自分の血肉にしていきたいものだ。

東樹詩織

食や旅の領域でPR・ブランディングに携わる傍ら、執筆活動を行う。アートと本にのめり込み、「as human footprints」名義でZINE出版を開始。写真と動画の撮影・編集も。最近の関心事は、アジア各国のカルチャー、映画、海外文学、批評、3DCG、AI。キャンプ好きが高じて、東京↔︎信州・上田で2拠点生活中。