冬の公園で一人佇む

みなさん、こんにちは。
音楽ユニット「鼻ホームランの森」の山下です。
冬になると毎年歌いたくなる大切な曲があります。
『ひなたぼっこ』という曲です。

この曲を作ったのは恐らく、もう15年くらい前になると思います。
高円寺で暮らしていた頃、真冬に、高円寺と阿佐ヶ谷の間にある馬橋公園という公園で作りました。
この曲と馬橋公園は、自分の中では密接に繋がっていて、『ひなたぼっこ』を歌うたびに、馬橋公園の風景が脳内に広がります。

そんなわけで今回は、自分と馬橋公園の思い出の話などについて書いてみたいと思います。
高円寺駅からも阿佐ヶ谷駅からも、おおよそ徒歩12分、住宅街の中にある馬橋公園。ベンチが点在していて、いろんなスポットで休憩が出来ます。

馬橋公園の近くで暮らしていた頃の自分の話

と言いつつ、更に遡って書いてみたいと思います。

僕は富山県出身です。
音楽が大好きで、東京で音楽がやりたくて、大学に通うのを口実に関東の方に引っ越してきました。
埼玉の大学に行かせてもらい、そこで恋人ができました。
高校卒業までも、いくつもの恋をして、告白するとか、されるとか、そういったこともあったのですがうまくいかないことばかりで。

大学1年のときにできた恋人が、ほぼ初めて、しっかり踏み込んだ関係性で交際できた恋人でした。
初めての人。
とにかく一緒にいるのが楽しくて、大好きで、死ぬまで一緒に居たいと思ってました。

大学を卒業して、一緒に阿佐ヶ谷のアパートで暮らしました。その際、両親から結婚前の恋人との同棲について当然の如く賛同を得られなかったので、建前上の住所を確保しておくために家賃27000円の高円寺のアパートも借りました。阿佐ヶ谷の方も格安で見つけて、確か5万円台。1人あたり4万円程出し合って暮らしてたように記憶してます。

そして、大学生時代を含め、同棲から6年程経過していた2007年の夏。
ある日突然恋人がアパートに帰って来なくなりました。
自分にとっては、何の前触れも無く、本当に突然でした。

何かの事故や事件に巻き込まれたんじゃないかとか、とにかく不安で不安で、あたりを探し回ったり共通の友人や知人、恋人の妹さんや、思いつく限りの人に聞いて回ったりしたのですが、全然情報を得られず。
数週間経った後に、新しい恋人ができて、その人のところに行ってしまったのだということが判明して、泣き崩れました。
仕事をしていても涙が溢れてきたり。

最後に、恋人の新しい彼氏と、恋人と、僕とで話をする場が設けられたのですが、僕はわけがわからない状態になってしまって、全然ちゃんとうまく話ができないままに、お別れの言葉も伝えられないままに解散となり、それきりもう二度とお話ができない状態になりました。
その恋人のことは、何度夢に見たことでしょう。

阿佐ヶ谷のアパートにあった自分の荷物をまとめて、自転車で高円寺のアパートに荷物を運びました。真夏の暑い日にひとりで汗だくになりながら、何度も何度も往復もして。

この自分史上最大の、あまりにも絶望的な大失恋がきっかけで、自分の歌を歌いたいと強く思い、自分で曲を作って歌い始めました(それまでは、専らエレキギターやベースでバンドに参加していて、歌はほとんど歌っていませんでした)。

そして、この失恋の大きな痛みや、そこから自分なりに学んだことが、間違いなく今の自分を形作る非常に大きな要素になっていると思います。今自分が奥さんと幸せに暮らせているのは、このときの失恋の経験のおかげと言っても全く過言では無いと思います。
その経験が無かったら、自分は今以上にもっともっと至らないところだらけの、ろくでなしな人間だったんじゃないかなと思います。

本当に本当に、大切なことをたくさん教えてもらったと思います。感謝してもしきれません。
池があるのも、馬橋公園の魅力のひとつ。鴨や鯉に癒されます。
話が大分脱線してしまいましたが、仲良く付き合ってた当時、馬橋公園には何度となくふたりで訪れていました。ふたりの思い出もたくさん詰まった場所なのです。

そして、高円寺に引っ越してから。
高円寺という街で暮らす自分にとって、自然が豊富な馬橋公園はオアシスのようでした。
まだ若かったので、雑多な、ぎゅぎゅっと非常に濃密な高円寺の街は、それはそれで居心地が良かったというか、寂しさを紛らわすにはうってつけだったのですが、それでも田舎者の自分には自然に包まれることができる場所が必要でした。

ただただ散歩したり、ちょっとしたご飯を食べたり、友だちとおしゃべりをしたり、何もせずにぼーっとしたり、曲のアイデアを考えたり。

当時暮らしていたアパートから徒歩5分ほどと、凄く近くにあったこともあり、何かにつけて本当によく行ってました。

たしか2月くらい。
太陽は出ていて、日向はわずかにあったかいような日。
子ども連れの家族が楽しそうに遊んでいる幸せそうな風景を見て。
幸せっていろいろだけど、客観的に見ると今この自分も幸せの景色の一部なのかもなー、といったことをふと思って。
そのことがきっかけとなって、この曲ができました。

『ひなたぼっこ』作詞/作曲:山下健太

何度と無く来た近所の公園で
いつものようにいくつもの幸せを見ながら
静かにギターを爪弾く私も同じように
幸せの景色の一部
枯れた木々も今にまた
葉をつけたり花を咲かせたり
するつもりだよ
みんなもうすぐの春を待っている
寒いからね
陽の当たるところで眠ろう
風が吹いてもここは温かい声も聞こえる
あの日の君を膝に乗せて
笑顔に触れる
ほらまだ太陽はあそこに見える
良い天気だね
青空につられて
ららら

自分にとって馬橋公園は
とても大切な公園です。
同じようにきっと、みなさんそれぞれにとって
大切な公園があるんじゃないかな、と思います。

大切な人と訪れたり。
ひとりで訪れたり。
色んな思いがあって。
とてもとても大切な場所。

身が縮こまるような寒い時期にはまたより一層
思いが膨らむのかもしれません。
そんなときの太陽や、人々の楽しそうな声は
とてもあたたかく、自分の心に沁みてきます。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
ごきげんよう。

※2024/12/24に、馬橋公園に行って写真を撮ってきました。2024年5月頃に、新しく芝生広場が増設されたようで、より一層楽しみ方が広がる公園になっていました。遊具、野球場、池、水場、東屋など、さまざまなエリアがあり、自然も豊かで、素敵な公園です。

山下 健太

音楽ユニット「鼻ホームランの森」のギター&ボーカル。作詞作曲や、自主レーベル「鼻ちょうちんRECORDS」での音源制作等も担当。井の頭公園アートマーケッツ所属。お酒、料理、散歩、サイクリング、海水浴など好きな事がたくさん。基本的には端っこで静かに佇んでます。