感性は日々の積み重ねで育つのか? 2週間の“実践”で見えた小さな変化

Sense of …という感性にフォーカスしたメディアで執筆しているのに、心の機微にうとい私。というか性格が大味なのだ。もっと感性を磨きたいと思っているけれど、感性を磨くってそもそもどうやって?という壁にぶち当たってしまった。

私が思う感性とは「季節を大切にした手料理が得意です」とか「持ち物やインテリアはこだわっています」などのイメージで、そのどれもが私とはほど遠い。もはや諦めかけたときに、本屋で目に留まったのが『感性のある人が習慣にしていること』SHOWKO(クロスメディア・パブリッシング)だ。

感性という捉えどころのない言葉を具体的な習慣にまで落とし込んでくれただなんて、私のための本だ!といそいそと購入した。

せっかくなので、この本に書かれている習慣を実践すれば、感性を磨くことができるのか?を検証してみたいと思う(検証期間は2週間)。

そもそも感性って?

感性のある人とは、「答えを出せる人」のこと

引用:『感性のある人が習慣にしていること』SHOWKO(クロスメディア・パブリッシング)

冒頭に書かれた言葉に「えー、そうなの?!」といきなり度肝を抜かれた。感性のある人とはセンスがいい人、すなわち“とにかくおしゃれで目利きな人”のイメージだった。筆者が言うには、そういう表面的なことではなく「自分をよく知り、自分の価値観で選択ができる」「自分に必要なものを見極めて決断をくだせる」などの、自分で答えを出せる人こそが“感性のある人”なのだそう。

そして感性はもともとの能力や環境ではなく、習慣によって高めていけると筆者は言う。なぜなら、筆者自身が日々の習慣の積み重ねが感性を育ててきたと実感しているからだ。
そんな背景から、感性を身につけるための5つの習慣がこの本にはまとめられている。

「観察する習慣」は、日常の細部にまで目を向け、これまで気づけていなかったことにも気づくための習慣です

「整える習慣」は、身の回りや自分の心を整える習慣です

「視点を変える習慣」は、これまでとは異なる面から事象をとらえて、ものごとを解釈する習慣です

「好奇心を持つ習慣」は、これまで気にかけていなかったものにも興味をもつための習慣です

「決める習慣」は、日常の細かいことにも自覚的に選択する意識を持つ習慣です

引用:『感性のある人が習慣にしていること』SHOWKO(クロスメディア・パブリッシング)

早速実践する習慣を選んでみた

この5つに沿って書かれた具体的な行動の中から、実際に試してみたいものを3個選んでみた。

  1. 「季節を表す言葉」を覚えてみる(観察する習慣)
  2. 「財布のなか」を整えてみる(整える習慣)
  3. 「20年使えるもの」を買ってみる(好奇心を持つ習慣)

(1)「季節を表す言葉」を覚えてみる

出典:Unsplash

私の周りの感性が豊かな友人は、季節のうつろいを感じながら日々の暮らしを楽しんでいる。彼女を見ていると、季節の言葉をひとつひとつ覚えていくことが、感性を育てる手掛かりになる気がする。本書では季節の言葉として、二十四節気七十二候が紹介されている。

◎二十四節気とは

春夏秋冬をさらに6つにわけた、約15日ごとの時節を表す表現のこと。

春分、夏至などは二十四節気の言葉である。

◎七十二候とは

二十四節気をさらに約5日ずつの3個にわけたもの。

二十四節気のような熟語ではなく詩的な文章で表現されている。

例えば、二十四節気の立夏は5日ごとに下記3個の七十二候にわけられている。

・5月5日頃 蛙始鳴(かわずはじめてなく):田んぼや水辺ではカエルが鳴き始める頃。

・5月10日頃 蚯蚓出(みみずいづる):蚯蚓(ミミズ)が冬眠していた土の中から出てくる頃。

・5月15日頃 竹笋生(たけのこしょうず):たけのこが生えてくる頃。

詩的な表現なので、イメージがしやすいだけでなく「私の住む地域では、5月5日時点ではまだカエルは鳴いてないな」と比較もしやすい。その数日後の雨が降った日に、今年初めてカエルの鳴き声を聞いた。意識していなければきっとスルーしていただろう。季節の言葉を読んだだけなのに、たった数日の間の季節の変化に気づくことができた

季節についてあれこれ調べていると、二十四節気・七十二候の季節の名前が短冊に書かれた「歌こころカレンダー」を発見した。2025年分は完売していて買えなかったが、2026年こそは買って、日々の季節をもっと身近に感じたいと思う

→はたして、感性は豊かになったのか?(観察する力はついた?)

カエルの鳴き声をきっかけに、うぐいすが「ホーホケキョ」と上手に鳴いたのも聞き逃さなかったし、音だけでなく毎日見ている桜の葉がどんどん大きく、緑が濃くなるのを感じることができた。季節に敏感になることは感性を豊かにする第一歩な気がした。

(2)「財布のなか」を整えてみる

せっかくのチャレンジなので、検証期間2週間のうち、毎日できることはないか?を考えた。キャッシュレス時代だが、私はまだ長財布を使っているので、毎日使う財布の中を整えてみることにした。

◎1日目 クレジットカード、銀行のカードなどの必要なカードに混じって、レシート3枚、お店のポイントカード3枚、診察券が入っていたので財布から出した。必要最低限のカードのみを入れ、お札は種類や向きも揃えるようにする。

◎2日目 昼食時、いつもよりスマートにお会計を済ますことができた。すっきりした財布は単純に気持ちがいい。

◎5日目 忘れないようにスマホのリマインダーに入れていたが、リマインダーがなくても整理することができるようになり、習慣化できているような気がする。

◎9日目 毎日整理しているとお札の向きを整えるくらいしかやることがないので、これを機に、アウトドア用に使っている三つ折り財布に切り替えてみることにした。カードは3枚に厳選し、レシートも極力もらわないようにする。

◎10日目 長財布に比べると、お金の出し入れが面倒だった。ただ、財布が小さくなったおかげでかばんを小さくすることができ、デメリットよりメリットの方が大きい気がした。

◎14日目 検証期間終了。お札の出し入れも多少は慣れた。カードは3枚あれば問題なかった。念のためといろいろと持ち歩いていたモノは不要だと気づいた。

財布はかなりコンパクトになった 撮影:小雪

→はたして、感性は豊かになったのか?(整える習慣はついた?)

とてもよかった。お財布が小さくなると、物理的に入れる場所がないので不要なレシートはもらわなくなる。何より身軽になったおかげで、スマホと財布だけ持って出かけられるのでフットワークが軽くなった

(3)「20年使えるもの」を買ってみる

出典:Unsplash

手元にあるもので、20年使い続けているものがあるかと考えてみたところ、思い浮かんだのはスキー板だった。正確には15年ほどだが、私はスキーが趣味で、冬になると雪山に通っており、毎年欠かさず同じ板を使い続けている。

このスキー板に出会ったのは忘れもしない2009年、場所はニセコ。当時、粉雪を快適に滑るための太めの板を探していたところ、ちょうど気になっていたブランドの試乗会が開催されていたのだ。

スタッフさんに薦められるままに乗ったのが今の板だった。滑り出した途端「浮く!」と思った。一緒に滑っていた友人も「今までと滑りが全然違う!」と驚いていた。色もグレー×ピンクというかなり好きな配色だった。試乗を終えて、値段を確認。私には高級すぎていったん購入を見送ったが、翌年、スポーツショップで同じ板を発見し、幸運にもその板の作り手のご本人とお話しすることができた。国産であることやブランドストーリーを聞かせてもらい、すっかり惚れ込んでその場で購入してしまった。

もう寿命かなと思いつつも、まだ現役で使えるし、他の板もはいてみたがしっくりこない。何より気に入っているので、この先5年もまだ使うだろう。

出典:PIXTA

そして、もうひとつ、検証期間の2週間で買ったものがある。

出会いは、友人に連れて行ってもらったアパレルショップだった。

スリランカの小さなアトリエで、一着ずつ丁寧に仕立てられた服たち。染めに使われるのは薪火の熱だけで、1日に染められるのは、たった1着分の布なのだそう。

生地にもこだわり、職人がひとりで1着を最初から最後まで担当して仕立てているとのこと。

1着1着見ていると、黒のオールインワンに目が留まった。オールインワンはボーイッシュなイメージがあり、似合わないと決めつけていたので1枚も持っていなかったが、憧れもあった。

ひとめ見て形がかわいいと気に入り、軽い気持ちで試着してみたら、自分で言うのもなんだが意外と似合っていた。前も後ろも深いVネックになっているのと、生地にほのかに光沢があったため、きれいめにも着られるのが良かったようだ。

即決できないお値段だったのでそのときは買わなかったが、友人の「すごく似合っていたよ」の言葉と、試着時に撮ってもらった写真の私の表情がとても嬉しそうだったので後日購入を決めた。

生地をお直ししたり、染め直しをすることも可能で、これから長く愛用できそうだ。できたら、20年後も、オールインワンを素敵に着こなせる自分でありますように。

→はたして、感性は豊かになったのか?(好奇心をもつ習慣はついた?)

これは3個の習慣の中で、いちばん今の自分にフィットしていた気がする。このふたつの出来事の共通点を見出せば、今後何かを購入するときの私なりの軸になりそうだ。

ふたつの共通点

  • 作り手から直接話を聞けたこと
  • 丁寧にこだわって作っていること
  • 今までの自分が持っていない(自分を変えてくれそうな)ものであること
  • 先を見据えた価値があると私が判断できたこと(長い相棒になってくれそう)

モノがあふれる時代だからこそ、偶然の出会いがまるで奇跡のように感じられた。まさに一期一会。「これだ!」と心が動いた瞬間を大切にしようと思った。

感性を養って、どうしたい?

この本のおわりには、「『養われた感性を用いて、あなたはどう生きますか?』を考えていただきたい」と書かれている。

私は、自分が好きなものを見極めて心地よく過ごしたい。決断力を鍛えて悩む時間を少なくして、自分が本来やりたいことに集中したい。

検証期間を2週間としたので実践できることは限られていたが、季節の移り変わりを感じるという新たな視点や、モノ選びの基準がわかったことは今後の人生にも影響を与えると思った。少しずつ実践していけば、感性が豊かになっていくのではないかと思う。

今後も本に書かれた習慣を試していき、少しずつ自分をアップデートしていきたい。

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執筆:はしもとかほさん

小雪

会社員として働きながら、いつかはライター専業になりたいともっぱら奮闘中。興味ある分野は旅行・グルメ・喫茶店など。