圧倒的インドア派でも心が引かれる。この夏おすすめの展覧会3選

私は、休みの日に丸一日、家にこもってダラダラと過ごしても、「時間を無駄にしてしまった」とか「何かすればよかったかも」とか、罪悪感や焦燥感を覚えるタイプではない。

元来、インドアでものぐさな性質なので、ベッドの中でゴロゴロしながら、配信ドラマや映画をエンドレス再生したり、SNSや動画サイトを漁ったりして一日が終わっても、「自分の思うままに過ごせた!」と、むしろ充足感が湧いてくる。

そもそも、人が多いところは苦手だし、暑すぎるのも寒すぎるのも嫌なのだ。趣味も、読書や映画鑑賞、手芸やコラージュなど、自宅で完結するものばかりだ。

でも、そんな私が、積極的に外出したいと思えることがある。ひとつは、推しのコンサート。そしてもうひとつが、魅力的な展示系のイベントだ。

展示系イベントはインドア派でも楽しめる

展覧会や企画展は、インドアかつ圧倒的文化系の私でも、楽しむことができるイベントだ。まず、たいていの場合、屋内で開催されるというのがうれしい。夏は涼しく、冬は暖かいので、余計なストレスを感じず、メインの催し物に集中できる。

また、たとえば、アニメやマンガなど、好きなエンタメ作品の展示なら、その世界観に浸れるだけでテンションが上がるし、詳しくない分野でも、新たな知的好奇心が刺激されて、とてもワクワクする。

そうやって、自分の心と頭にたっぷりと栄養を送れるような気がするので、興味を引かれる展示系のイベントには、なるべく足を運ぶようにしている。

この夏も、酷暑に耐えてでも行ってみたいと思えるイベントがいくつかあった。

1. 「レオ・レオーニの絵本づくり展」

出典:株式会社東急文化村

まずは、東京・渋谷で開催中のレオ・レオーニの絵本づくり展。レオーニが描いた絵本といえば、日本でも『スイミー』がとくに有名ではないだろうか。

私も小学生のとき、国語の教科書で読んだ記憶がしっかりと残っている。兄弟を亡くし、孤独に海をさまよっていたスイミーが、ようやく出会った仲間たちのために知恵を絞り、みんなで一緒に泳いで大きな魚のふりをすることで、天敵のマグロを撃退する。個の力では及ばなくても、周りと手を取り合えば、大きなことを成し遂げられる。そんなメッセージがストレートに心に響いた。

出典:株式会社東急文化村

また、赤い体の仲間たちのなかで唯一、黒くて小さなスイミーが、その個性をいかして目の役割を果たすという展開にも、子どもながらに感動したことを覚えている。

とはいえ、細かい話は記憶が薄れてしまっているのが正直なところ。それでも、ずっと『スイミー』のことを忘れないのは、たくさんの赤い小さな魚が集まって、大きな魚の形になっている、あの美しいイラストを今でも鮮明に思い出せるからだ。

レオーニは世界的な絵本界の巨匠だが、私は『スイミー』以外の作品にふれたことがない。それでも、あの一枚の絵のインパクトが強すぎて、その世界観をぜひ見に行きたいと思った。

出典:株式会社東急文化村

貴重な原画の展示だけでなく、レオーニの世界観に没入できるような仕掛けがたくさん取り揃えられているらしい。レオーニの絵本づくりの技法を体験できるワークショップもあるそうで、とても心を引かれる。

会場の写真を少し見てみると、『スイミー』のあのイラストのように、夏の日差しのような明るい爽やかさを感じるカラフルな空間で、とても素敵だった。

出典:株式会社東急文化村

また、会場となっている渋谷ヒカリエ内の飲食店で、コラボレーションメニューも提供されているらしい。ぜひとも制覇したいところだ。

【開催概要】
レオ・レオーニの絵本づくり展
会期:2025年7月5日(土)〜8月27日(水) 
休館日:7月24日(木)
会場:ヒカリエホール(渋谷ヒカリエ9F)
開場時間:10:00~19:00(最終入場は18:30まで)
主催:Bunkamura、朝日新聞社
企画協力:Blueandyellow, LLC、コスモマーチャンダイズィング
協力:好学社、あすなろ書房、至光社、印傳屋上原勇七
後援:J-WAVE
お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会HP:https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/25_leolionni

2. 「おいでよ!にんぱく動物園~かわいいどうぶつ大集合~」

出典:さいたま市

つづいては、埼玉県・さいたま市にある「若槻人形博物館」で、7月19日(土)から開催予定のおいでよ!にんぱく動物園~かわいいどうぶつ大集合~」

ポスターを見て、真ん中のかわいいハチワレ犬のビジュアルに心を奪われてしまった。なんともいえない表情で、見ているだけで癒やされる。ほかにも、クリっとした瞳の虎や、仲の良さそうな猿と熊、コテンと首をかしげる猫など、どの人形も魅力的だ。

この「若槻人形博物館」は、江戸時代から人形作りがさかんで、「人形のまち」と呼ばれる若槻の人形作りの技を紹介したり、日本の人形文化を広く伝えて継承していくことを目的に、2020年2月に開館したそう。

出典:若槻人形博物館

ふだんは雛人形をはじめ、“ひとがた”の人形が多く展示されているようだが、動物をモチーフとした人形や玩具も多数収蔵されているのだとか。今回の「おいでよ!にんぱく動物園~かわいいどうぶつ大集合~」では、それらを、毛並みが再現された「毛植人形」、武家や公家で遊ばれていた「御殿玩具」、各地の風土が反映された「郷土玩具」の3つのジャンルに分けて展示するとのこと。

さらに、8月27日(土)には「御殿玩具」のひとつ、「ふくら雀」の絵付け体験も行われるという。こういう文化的な体験ができるイベントは大好きなので、参加できたらうれしい。

【開催概要】
おいでよ!にんぱく動物園~かわいいどうぶつ大集合~
開催期間:2025年7月19日(土)から9月7日(日)まで
場所:岩槻人形博物館(さいたま市岩槻区本町6-1-1)
観覧料:一般/300円(200円)、高校生・大学生・65歳以上/150円(100円)、小学生・中学生/100円(50円)
※( )内は20名以上の団体料金。障害者手帳をお持ちの方と、付き添いの方1名は半額。
※本展会期中、ワークシートを利用すると、小学生は観覧料が無料になります。
問い合わせ先:048-749-0222(さいたま市岩槻人形博物館)
岩槻人形博物館公式ウェブサイト :https://ningyo-muse.jp

3. 「動き出す妖怪展 NAGOYA 〜Imagination of Japan〜」

出典:株式会社一旗 HITOHATA,INC.

そして、名古屋で7月19日(土)から開催予定の動き出す妖怪展 NAGOYA 〜Imagination of Japan〜も気になっている。私は子どものころから、「妖怪」というものに不思議な魅力を感じているからだ。

アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』は毎週欠かさず見ていたし、10年ほど前に大ブームとなった『妖怪ウォッチ』にもハマっていた。それに、妖怪をテーマにした京極夏彦の小説「百鬼夜行シリーズ」も大好きだ。

妖怪は、人間に害をなす恐ろしい存在でありながら、悲しい由来を持っていたり、どこか間が抜けていたり、ときにかわいらしく見えたり…と、とても多面的だ。また、その妖怪が生まれた背景には、その時代特有の歴史的な状況が関係していたりもして、なかなか奥が深い。

そして、高校生のころ国語の教科書で読んだ小松和彦の評論「妖怪と現代文化」の「妖怪は暗闇にしか住めない」という内容も、ずっと頭に残っている。妖怪は人間が暗闇に感じる不安や恐怖から生まれるもので、だから夜道ですら明るい現代では、妖怪が絶滅の危機に瀕しているというようなことを言っていた。

この評論を読んだとき、妖怪は人間の心の写し鏡のような存在なのだなと思った。そこからまた、妖怪への興味が一気に深まった気がする。

出典:株式会社一旗 HITOHATA,INC.

そんな私が、心引かれている「動き出す妖怪展 NAGOYA 〜Imagination of Japan〜」は、さまざまな絵師によって描かれた、「百鬼夜行絵巻」「百物語」「鬼」「天狗」「河童」「付喪神」など、日本の妖怪美術を最先端の映像技術と立体造形で表現。その世界観に没入できる「イマーシブ体感型デジタルアートミュージアム」になっているという。

3DCGやプロジェクションマッピング、ホログラフィックスクリーンといった技術を駆使しているそうで、リアルでダイナミックな妖怪の世界を楽しむことができるとか。目の前に多種多様な妖怪たちが現れることを想像するだけでワクワクしてくる。しかも、一緒に動画や写真撮影もできるそう。お気に入りの妖怪を見つけて、ぜひ2ショットを撮りたいものだ。

出典:株式会社一旗 HITOHATA,INC.

また、歌川国芳による妖怪の浮世絵版画の実物展示に、江戸・明治時代に描かれた「百鬼夜行之図」や「百物語」など、貴重な妖怪美術の歴史的かつ文化的な解説も行われるとのこと。すみずみまで楽しんで、私のなかの“妖怪熱”をもっと高めたいと思う。

【開催概要】
動き出す妖怪展 NAGOYA 〜Imagination of Japan〜
日時:2025年7月19日(土)〜9月23日(火・祝) 9:30〜20:00(最終⼊場19:30)※期間中休館日なし
会場:金山南ビル美術館棟(旧名古屋ボストン美術館)(愛知県名古屋市中区金山町1丁目1−1)
主催:動き出す妖怪展 NAGOYA 実⾏委員会(テレビ愛知、一旗、時事通信社)
共催:中日新聞社、日本経済新聞社
後援:愛知県、名古屋市、名古屋市教育委員会、FM AICHI、ZIP-FM
特別協力:西尾市岩瀬文庫、妖怪美術館(小豆島)
企画制作:一旗、テレビ愛知
動き出す妖怪展 公式ウェブサイト:https://www.yokaiimmersive.com/

たまには自室を飛び出して世界を広げてみるのもいい

今年の夏は本当に暑い。もともとインドア派の私の外出ハードルはとてつもなく高くなっている。でも、自分の趣味嗜好や興味関心に、ど真ん中で刺さる展示系イベントなら、酷暑のなかでも行ってみたいと思うのだ。

もちろん、クーラーの効いた自室から一歩も出なくたって、夏を楽しんでいないわけではないけれど、たまには外に出て世界を広げてみるのも気分転換になっていい。

私のようにインドア派かつ文化系の人にこそ、自分好みのイベントを探してみることをおすすめしたい。

近藤世菜

1990年生まれ、東京都出身。フリーランスのライター、インタビュアー。エンタメ系の記事が得意。趣味は美容と推し活。楽しいことにはいつも貪欲でありたい。