プチ移住。2年ぶりの京都長期滞在、変わらないもの、変わったもの。

以前、8か月ほど京都に長期滞在していたことがあった。『京都国際マンガミュージアム』でまんがを読み耽るためだ。

そして2年後の今また、4か月程度の滞在予定で京都に来ている。

来た理由はやっぱり“そこにまんががあるから”だけれど、2年ぶりの京都で変わらないものも変わったものもあり、時の流れを感じながらまんが以外の京都生活も満喫している。

まんがのためのプチ移住

京都の烏丸御池には、約30万点の資料を所蔵する『京都国際マンガミュージアム』がある。わたしの京都滞在の一番の目的は、ここで貴重なまんがをひたすら読むこと。

2年前にも同じようにミュージアムでまんがに埋もれる日々を過ごしたが、また京都で暮らしたくなって先日戻ってきたのだ。

長い旅の感覚

今回の滞在は、6月末にこちらにやって来て、10月末までいる予定。

知人のツテで紹介していただいた部屋や、フリーアコモデーション(ゲストハウスの住み込み)を利用して、京都市内を何か所か渡り歩いている。

最小限の荷物をリュックに詰めて持ち運び、必要なものはその都度調達するスタイルで、引っ越しというより”長い旅”の感覚だ。

前回は京都の地理もまったく分からず、知り合いもほとんどいないまま来てしまったので、正真正銘の部外者状態だった。

そのため住居とマンガミュージアム以外の居場所ができるまでは気が滅入りがちだったが、今回は一度目でできた拠点や知人がいるので気も軽く、2年前より一層京都という街を楽しむ余裕が出てきたように思う。

一番の目的はまんがだけど…

京都での生活はまんがを中心に回っているので、こちらに来てからほとんど週6日のペースでマンガミュージアムに入り浸っている。

前回読み切れなかった閉架資料や、他の土地を巡っているうちに新たに知った作品など、読みたいまんがは山のようにある。それらすべてを読み切ることはできないだろうが、「少しでも沢山読みたい」「好きだと思える作品に出会いたい」その一心で日々励んでいる。

でも、もちろんまんが以外にも楽しみがあれこれある。それらには、多少馴染みのある土地に帰ってきたからこそのものもあれば、新しく発見したものも。

こうして懐かしくも新鮮な気持ちで生活を楽しめるのは、街もわたし自身も、ガラッと変わったわけではなくても、少しずつ変化しているからなのだろうなと思っている。

2年という時の流れ

前回の滞在を終えてから、京都には移動の途中で1日、2日寄ることはあっても、がっつり旅行で来るということはなかった。ましてや、こんな長期滞在は久しぶりだ。

けれど京都の街は2年の空白を感じさせない温かさで迎えてくれ、以前来た時よりも日々が充実しているように感じる。

変わったものも変わらないものもあって、そのどちらもわたしにとって大切なものなので少しご紹介したい。

変わらないもの

京都にプチ移住してきてすぐ、通りをぶらぶらしていて思ったのは、街の基本的な雰囲気は変わっていないなということ。

歩いている人や居並ぶ店舗は変わっていても、道や川の流れ、山並みやランドマークになるような建物といった街の大枠は以前と変わらない姿であってくれるので、歩いていると“帰ってきた”感覚になる。

京都は長い歴史を持つ土地。わたしが京都を去って戻ってくるまでの2年などまるで問題にならない、伝統の醸し出す安心感が街全体に流れているように思う。

前回は初めての京都長期滞在だったこともあり、やはり行ったことのない観光スポットは押さえておきたいと、平等院鳳凰堂や金閣寺、醍醐寺などに足を運んだ。

今回は寺社仏閣などの観光はほとんどしていないけれど、たとえ訪れなくてもいつも変わらずそこにあると信じられることが、安心感に繋がっている。

今は二条城の近くに住んでいるので、しばしば横を通る二条城や京都御苑の姿に、歴史に思いを馳せる日々だ。

また、歴史ある場所以外にも、お気に入りのパン屋さんやよく通った書店なども変わらぬ佇まいだったのがほっとした。

そして京都に帰ってきて何より嬉しかったのは、久しぶりに会った京都の人たちがわたしのことを覚えていてくれたこと。

アルバイト先で出会った人たちや、馴染みのお店で知り合った方が、わたしを温かく迎え入れ、すぐに時を感じさせない態度で接してくれたのだ。連絡を取り合う仲でもなく、数回会った程度の知人でも、再会を喜んでくれた。

人との縁は途切れることなく、再会すればまた元のように接することができるのだと身をもって体感し、とても感激した。

変わったもの

変わらないものが多くある一方で、変わったものもちょこちょこある。

残念ながらなくなってしまったお店もあるが、その分新しくできた、これから何度でも通いたいお店もある。

前回住んでいたのとは違うエリアに住んでいるから、見える街の顔も違う。普段使う道もお店も変わったので、その場所にずっと存在するものでも、わたしにとっては初めて知った“新しいもの”だ。

素敵な人やお店との出会いもいっぱいあって、わたしの中の京都像がどんどん更新されていく

夏の京都も初めてなので、祇園祭や五山送り火などの夏の風物詩を見られたのもよかった。季節が違うと街も装いを変えるのだと、しみじみと実感した。

最近は京都で少女まんが読書会を開いたり、詩の展示をしたりとあれこれ新しい挑戦もしている。

街の変化もあるけれど、折に触れて自分自身の変化にも気付かされている。

暮らすように旅をする

それなりに長く同じ土地に身を置き生活を営みながら、あくまでも旅人の視線を持つ旅のスタイルは、わたしのお気に入りだ。暮らしの中に満ちている新しい発見にわくわくしながら、その土地に住む人たちと揺るぎない関係性を築くことができる。

日々魅力を発見する

暮らすような旅は、日常でありながら非日常でもある。

京都の街はまだまだ知らないことだらけなので、いつも違う道を通ったり、出歩く時間帯を変えてみたりして、日々新しい魅力を発見することができる。風情のある町屋も多く、京都ならではの雰囲気を味わいながらの街歩きもとても楽しい。

またこの滞在では、観光をしない代わりに夏祭りや下鴨納涼古本まつりなど、地域のイベントに積極的に参加している。

地元に根差したイベントではそこに暮らす人の素顔に触れられるうで、ますます京都が好きになった。

大切にしたい人とのつながり

二度目の京都滞在をこれほど楽しめているのは、何より人に恵まれたことが大きいと思う。

自分のことを知ってくれている人や仲の良い人がいると、いつ来ても帰ってきた気持ちでくつろぐことができる。慣れない土地で寂しくて途方に暮れることもない。

かけがえのない友人・知人たちは、長期滞在をして何度も会って話す機会があったからこそ出会えた人ばかりだ。

ありがたいことにご縁があって、いくつも紡ぐことができたつながりの糸を、これからも大切にしていきたい。

日常の中にも旅のこころを

観光地を巡るだけの旅に飽きたなら、生活の延長線上にある旅の仕方がおすすめだ。

ただ、暮らすように旅をしてみたいと思っても、なかなか難しいという方もいらっしゃるだろう。そんな方はぜひ、日常の中にこれまで気付かなかった魅力を探してみてほしい。

視点を少し変えるだけで、きっとそこには新たな発見があり、新しい場所や人とのつながりも生まれるはずだから。

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執筆:はしもとかほさん
執筆:東樹詩織さん

逆盥水尾

さかたらいみおと読みます。昭和の少女漫画が好きで、最近はもっぱら漫画を読みふけりながら普及活動をする日々です。