2024年3月7日、株式会社しかくいまるはインタビュアー・ライター・編集者の方を対象としたイベントを開催しました。30余名の方にご来場いただき、大盛況で幕を閉じることができました。本レポートでは各セッションをハイライトで振り返ります。
イベント開催の背景
株式会社しかくいまるは人々の感性に着目し、「心を動かす」コンテンツ制作を軸にさまざまなクライアント案件を対応してきました。
AIで完結できない仕事という意味でもインタビュアーとして活躍できるライターの需要は増えていくと言われています。インタビューサービス「聞き手クリエイション」とWEBメディア「Sense of…」のローンチをきっかけに、個人向け・スモールビジネス向けに乗り出した理由や今後の展望を、編集者・インタビュアー・ライターという職業を通してみなさんといっしょに考える機会を設けたいと考え、今回の開催に至りました。
第1部トークセッション「聞き手クリエイション体験談」
MC:株式会社しかくいまる代表 伏見香代子
語り手:石田博貴さん
聞き手:サトートモロー(ライター・フォトグラファー)
――インタビューを受けた時期、ちょうど人生の節目となる出来事があったという石田さん。実際に伺ったお話のなかには、少々際どい内容も含まれていたそうです。生い立ちに深く関わっているお父様やお兄様との関係性も印象に残っていますが、まずは当時の制作過程について話しました。(実際の記事はこちら)
トモロー 編集・ライターとして関わるのであれば、読みやすいものを作るのが大前提だと思っています。でも、読みやすくした結果、取材対象者が自分ごと化できない記事になってしまったら意味がない。だからこそ、そのバランスは意識しました。初稿の段階では石田さんから「もう少しマイルドに…」ってご指摘が入ったりもして。笑
伏見 現在のお父様との関係性と当時の気持ちを調整していく感じでしたね。これに限らずインタビューにおいては“言質をとる”といったりしますが、ご本人の表情や言葉のセレクトから、文字にしたときの表現をどう決めていくかが重要かなと思っています。
――なかなか聞くことのないインタビュー後のお話も。
石田 Facebookに投稿して、いいねやコメントをたくさんもらいました。記事を読んで、自分のことを「よく理解した」と言ってくれる人がいたり、個人的にLINEで連絡をくれた古い友人もいたり。記事の内容は当時は誰にも話せなかったことなので、多くの反響がありました。
トモロー 反響があったと聞いて、単純に嬉しいです。僕が普段担当しているのはビジネス寄りの記事が多いので、今回のようなドキュメンタリー的な内容を書かせてもらったのは初めてだったのですが、こういった内容も読んでくれる人がいるものなんだなというのがまず驚きでした。あとは、僕はわりと大人しく生きているので、石田さんのお話を聞いてもっと命を燃やさないとなと思いましたね(笑)。
――“個人の物語”を書いてみてトモローさんが感じたこととは?
トモロー シンプルに、「これ(個人の人生の振り返り)、みんな残したほうが良いよね」と思いました。インタビュアーとしてはじめましての人間が質問して、深掘りしていくと、意外と今まで喋ってなかったことが出てくるんですよね。そしてそのなかに、その人が本来人生の中で振り返るべきことが潜んでいたりもする。インタビューを受けた本人にとってもときどき振り返りたくなるようなコンテンツになるんじゃないかなと思いました。
伏見 そうですね。自分の話をして整理をしたいという需要は増えるんじゃないかな?と思っています。継続的に行うカウンセリングやコーチングよりもライトな世界観でインタビューを使っていただけたら嬉しいです。記事コンテンツは過渡期にあって、AIの普及や動画コンテンツの増大でそのポジションはやや危うい部分があるかもしれません。ライターという職業に疑問や不安を感じる場面が増えていくことも考えられます。そんななかで、“誰しも物語を生きている”ということを残せるような、文化を創っていくような気持ちでこのサービスを始めました。我ながらむずかしいことをしているなーと感じていますが、その価値をトモローさんが言葉にしてくれて嬉しく思っています。
――じつは石田さんはトモローさんへ伝えたかったことがあるようです。
石田 トモローさんに直接言いたかったことがあって。自分、初稿を読んだときはけっこう気恥ずかしかったんですよね(笑)。でも、再校を読んだときにはずいぶんと感情移入していて。文章にも起伏があって切ない気持ちになったり、がんばろうと思ったり。なので、まずはその起伏を生んでいただいてありがとうございます。ついこの間も読み返しました。元々、自分のことを振り返る癖はあるんですけど、記事という形になっているとパッと読み返してすぐ認識できる。当時の感情の起伏とオーバーラップして、自分の落としどころを見つけやすくなるというか、納得できます。なので、改めてありがとうございます…!!
伏見 今回石田さんには20代の反省や、これから30代をどう生きていくかなどについて想いを込めてお話いただきましたが、この記事がこれから先の人生で当時の気持ちを整理された形で振り返られるような存在になったのであれば、すごく嬉しいです。『聞き手クリエイション』は、終活や家族の記録などのテーマも想定しています。七五三で家族写真を撮る文化がありますが、そこにエピソードやそのときの想いなどを込めて残していく…そんなことを広げていけたらなぁと思って活動しています。ご自身の想いや家族の記録に、ぜひご活用いただきたいです。
第2部 ディスカッション「これからのインタビュアー・ライター」
MC:株式会社しかくいまる 取締役 藤島由希
そもそも「ライター」とは? “作家・文筆家・物書き”と表現できるけど、もっと分解していくとどうなるの? 編集・ライター歴20年を超える藤島が紐解きながら、参加者のみなさんとディスカッションを。
――これからの「ライター」を分解すると?
創造者 … 自己の内なる世界を形にする
・独創性や感性、個性を求められるからハードルが高い
・難易度に伴い報酬も高くなる
・自己発信で有料化できる
取材者 … 一次情報を取得し、それをもとに執筆する
・媒体ルールに則り情報を正確に言語化すればいいからハードルが低い
・人を選ばないので報酬は上がりにくい
・参入障壁が低いからライバル多数
藤島 これからのライターは大きくこの2つに分解できると思います。実際には“取材者”の方が多いのかなと思いますが、こうなると「ライター」で生計を立てるには?という話になりますよね。ライバルが多い、報酬が上がりにくい、となるとこれからは専門性が必要になってくるんじゃないかと。私も女性誌を担当していた当時、幅広くなんでも書けるようになってしまって悩んでいました。その他大勢のライターにすぎないというか…。そのときにインタビュアー専門へ方向転換して、インタビューのスキルを磨いたんです。そうすると、徐々にお声がけいただけるようになってセルフブランディングになったんですよね。ライターさんは、撮影・多言語などのテクニックを習得したり、金融・テクノロジーなど専門ジャンルをつくって深掘りしたり、そんな専門性のつけ方があると思います。
――結局、引く手あまたのライター・インタビュアーとは?
藤島 結論、“いい人”なんですよね。一緒に仕事をしたいと思う人って、だいたい“いい人”。「おはようございます!」「お疲れ様です!」とか元気に言える人。原稿が早い人も人気者ですが、早くて“いい人”がいちばん人気者かなと思います。私がインタビューの現場でよく言われていたのは、「早く来るよね」です(笑)。タレントさんが緊張しているときなど、場を和ませる座持ち感を褒められたこともありました。結局それだけでやってきたかなと思います。
参加者 わかります。“いい人”って、単なる性格の良い人というのもあるし、相手をちゃんと乗せて、アウトプットの質を高めることができる人ということだなと思います。
藤島 本当にそうなんです!誰にお願いしようかな?と考えたときに、会いたくなる人ってことなんですよね。編集さんはスケジュールなどに追い詰められているし、味方になって寄り添ってくれるライターさんはすごく大事ですよね(笑)あと、昔インタビューをした女優さんに「私、今日すごく緊張してるんです…。」と言われたことがあって、目から鱗でした。自分ばっかり緊張していると思っていたのに、喋る側の人も緊張するのか!と。それからは緊張しなくなりました。良い話を引き出すって、相手がいかにリラックスできるか、喋りやすい空気感を出せるのが重要です。インタビューが終わった後に、「あの人“いい人”だったな〜」と思ってもらえると、結局初稿もスムーズに進みますしね(笑)。
懇親会
後半の懇親会では、ケータリングとお飲み物をご用意。みなさま自由にご歓談いただきました。
まとめ ※グラレコあり
参加者の方からは、このような声をいただいています。
- 「経験豊富なライターさんのセッションがとても勉強になりました。」
- 「トークセッションやディスカッションでのお話は共感するところも多く、とても楽しかったです。」
- 「取組みとしてとても有意義と感じましたので、今後も続けていただければ素敵だなと思います。」
初の主催イベントということもあり、至らぬ点もあったと思いますが、参加者のみなさんにとって有意義な時間になっていたならば、スタッフ一同嬉しい限りです。
最後に、今回のイベントの内容をあーちんさんがグラレコにまとめてくださいました。
とてもわかりやすく、素敵にまとめてくださりありがとうございました!