困ったとき、海は助けてくれないから【遊び場の変遷 #1】

学生時代、地元の定番だったあの場所は今どうなっているだろう。
社会人になってすぐの頃はまだ学生時代の延長みたいな遊び方をしていたのに、何が変わったかよくわからないうちに遊ぶ人も場所も変わった。

環境が変わっただけ?それとも、わたし自身が変わったの?
そんなエピソードを手繰り寄せて。

遊び場の変遷は、あなたの変遷かもしれない。

Aさん(32歳)の場合

中・高生時代

とにかくプリクラ。今や廃れた八戸市の中心街で、1日5枚とか撮ってた。
プリ帳に貼って、コピー機で印刷、交換。エンドレスプリクラ

田舎なので限られたコンテンツを楽しむほかなく、たい焼き屋の新しい味(ベーコンマヨとか)に歓喜したり、時間を持て余して3時間歩いて帰ったり、生きることは暇つぶしだった。

振り返るとなんだか無理して楽しもうとしていたと思う。
ほんとはこんなの好きじゃないのになーと思いながらプリ撮ってた

海にもよく行ってたけど、塩くさいしそんなに好きじゃない。
あと「困ったとき、海は助けてくれない」と思ってた。友だちになれん。

専門学校時代

上京して爆発。いろんな街に遊びに行った。
裏原の古着屋で散財。

…とはいえ、専門時代からはテレビ局でバイトを始めて、深夜に帰宅する日々。
結局そんなに遊んでなかったのかも。

学校の近所(蒲田)に友だちがたくさん住んでいた。蒲田でたくさん飲みに行った。
汚い街だなと思ってたけど、みんな自由な気がして楽しかった。

20代

就職すると、20代前半は夜勤もしていて、不規則を極めていた
土日の休みもなく、仕事で朝帰り…なんてこともけっこうあった。

友だちと休日が合わなくなり、平日休みの美容師とかとバーベキューしたり、渋谷のクラブにいたり。そんな感じだった気がする。

本当は貯金して海外旅行に行ったり、スーツを着たサラリーマンと合コンとかしたかったけど、なんか無理だった。社会のセグメントを感じたのもこのあたり。記憶に残るようなキラキラした遊び方はしてなくて、遊ぶのは夜ばかりで、けっこう沼ってたかも。

20代後半は、仕事もプライベートも全部うまくいかなくて、なんか疲れ果てて、温泉とか銭湯によく行った。遊ぶというより、リラックスを求めはじめた。

ツーカ遊ぶってなんだよ、ちゃんと働けよ、そんで休め」的にみんな敵だと思ってた。
いま考えると、そんな自分がちょっとウケる。

30代~現在

失恋や家族の介護・死別など30代に入ってからもいろいろあるけど、自分の個性と合いそうな街に引っ越したことにより身近なところで遊んでも満足できるようになった。

近所のケーキ屋さんでかわいいケーキ買って楽しい。
近所の友だちと鍋して楽しい。
散歩して楽しい。
通りかかった雑貨屋に寄って楽しい。
イケメンとすれ違って楽しい。

*
これからのAさんにはどんな街でどんな出会いが訪れるのでしょうか。
またいつか、別の街に移り住んだりするのかな。

どこの街にいてもきっとあなたはあなただけど、それでもAさんが「楽しい」って思えてたらすごくうれしい。

遊び場の変遷は、あなたの変遷かもしれない。

※この記事はアンケートをもとにご本人にお話を伺い、筆者がまとめたものです。

伏見 香代子

「Sense of…」編集長/聞き手クリエイション責任者/1979年、東京都生まれ。文学少女からコギャルを経て、広義の編集者に。WEBコンテンツ&クリエイティブ、マーケティングに関わることそろそろ四半世紀。好きな映画は「カラー・オブ・ハート」って答えることにしている。感性至上主義。