ある日、パンに恋をした

「主食」と言ったらお米と麺。パンは、この世になくたって困らない。だって、なんだか甘ったるくて太りそうだし、そのわりにおなかに溜まらないから。

35年間ずっと、そう思って生きてきた。パンと親しく交わることのなかった私の人生。

ところが、そんな私が突然パン党、いや、パン狂に転身してしまった。きっかけは、妊娠を機に甘いものが好きになり、スイーツの延長で菓子パンを買い求めるようになったこと。そして、引っ越した先の町に人気のパン屋さんがあったことだ。

パンの“ここ”がいい!

パンの魅力って、なんだろう。もちろん、「パン」と言っても世界中にさまざまな種類のパンがあるけれど、あえてここではまるっとまとめて考えてみたい。

ひとつは、手軽に食べられること。バゲットや食パンを買って家に置いておけば、茹でたり炊いたりといった工程抜きで主食を準備できる。サンドイッチや惣菜パンなど、それだけで立派な食事になるパンもある。片手で持ってかぶりつけるから、屋外でも食べやすい。

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食事として、おやつとして。さまざまなシーンで食べられるのも魅力だ。主食になるのはもちろんのこと、たとえばブルスケッタのように副菜としても食卓に出せるし、甘めのパンなら食後のスイーツにもなる。これは、お米や麺とは違うところかな、と思う。

私は、休日の夜ごはんとしてパンを食べるのが好きだ。買い込んだたくさんのパンを食卓に並べると、ちょっとしたパーティーのような雰囲気が出る。

合わせるのは、スパークリングワインや赤ワイン(今は授乳中なのでノンアルコールワインを)。近所の専門店で買ってきたハムを切り、それからちょっとしたサラダも作る。パンの量が足りないときは、パスタを茹でてもいい。

パン屋さんを巡る

パンが好きになったおかげで、“パン屋さんめぐり”という新たな趣味ができたのは喜ばしいことだ。外へ出かけるときの楽しみが、またひとつ増えた。どの町を訪れる際も、まずはGoogleマップで目的地周辺のパン屋さんを探すことが習慣になっている。評判のいいパン屋さんが2軒も3軒も見つかると嬉しい。

子どもが生まれるまではラーメン屋さん巡りを趣味にしていたけれど、胃の容量にも限りがあるので、頑張っても1日3軒しかいけなかった。子どもが生まれてからは、ベビーカー移動が基本なので、ラーメン屋さんに入店すること自体なかなか難しくなってしまった。

パン屋さんはテイクアウトが基本なので、少しずつ買えば5軒でも6軒でも巡ることができる。買いすぎてしまった場合は、日持ちするパンを次の日以降の食事に回せばいい。

また、口頭でオーダーするタイプの広い店舗であればベビーカーでも入りやすい。子どもとのお散歩の途中に、ふらりと立ち寄れる。小さな店舗では、抱っこ紐を使うか、夫婦で行ってどちらか片方が入店するようにしている。

まだ0歳の子どもを連れて京都旅行に行ったときも、パン屋さん巡りが楽しいコンテンツになった。買ったパンはホテルに持ち帰り、ノンアルコールワインも買ってお部屋でパーティー。外食よりもお部屋食の方が気楽だから、子連れ旅行にパンはとても相性がいい。

パンを深堀りする

種類も多く、奥の深いパンの世界。最初はボリュームのある惣菜パンばかりを買っていて、「具のおいしさがパンのおいしさだ」と思っていた。ところが、さまざまなパンを食べていくうちに、生地自体が味わい深く個性豊かであることに気付く。

もっと、パンの製法や種類に詳しくなりたいと思って読んだのが、渡邉政子さんの『パンのおいしい物語』だ。20年前の本だけど、今読んでも面白い。パンの保存方法やおいしい食べ方も学べ、ページをめくっていると無性にお腹が空く。

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数々のパンの中で、夫婦で夢中になっているのはクロワッサン。訪れたパン屋さんの棚に並んでいたら、必ず買って帰る。同じクロワッサンでも、軽やかなタイプやどっしりしたタイプなど、パン屋さんによってさまざまな個性がある。私は、中がしっとりもっちりしているものが好き。かぶりついて引っ張ると、若干のねばりすら感じるような。外側は軽やかで、口の中に刺さらない程度のサクサク感があるといい。

これまで食べた中で一番好きなのは、桜新町にあるベッカライブロートハイムのクロワッサン(クロアソンという名前で売られている)。1987年創業の人気店で、前述した『パンのおいしい物語』でも紹介されている。ここのクロワッサンは私の好みにぴったりの食感で、毎日でも食べたいぐらい。サイズも大きく、食べごたえ十分。

用賀にあるMAISON KUROSUのクロワッサンも好き。バターをしっかり感じるジューシーさで、まさに“ごちそう”の味わい。

どちらも東急田園都市線沿いなので、近くを訪れることがあればぜひ試してみてほしい。

用賀『MAISON KUROSU』

おわりに

パンと出会ったことで、家でも外でも、楽しみの幅がぐんと広がった。訪れたいパン屋さんは無数にあるし、家でのパン作りにも興味がある。パンの種類や製法、歴史などももっと深堀りしていきたい。しばらくは、パンのことで頭がいっぱいになりそうだ。

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執筆:織詠 夏葉さん
執筆:織詠 夏葉さん

東樹詩織

食や旅の領域でPR・ブランディングに携わる傍ら、執筆活動を行う。アートと本にのめり込み、「as human footprints」名義でZINE出版を開始。写真と動画の撮影・編集も。最近の関心事は、アジア各国のカルチャー、映画、海外文学、批評、3DCG、AI。キャンプ好きが高じて、東京↔︎信州・上田で2拠点生活中。