いい夫婦の条件

11月22日は、“いい夫婦の日”。

私と夫は、結婚してからもうすぐ7年になる。他人同士がひとつの家で暮らすのは、決して簡単なことではない。衝突したことだって、数しれず。

それでも、ふたりで一緒にいる意味ってなんだろう。どんな関係性であれば、“いい夫婦”と言えるんだろう。そんなことをずっと考えてきた。

ぶつからない相手

家では、できるだけ笑顔で過ごしたい。そのためには、夫婦でぶつかる頻度を減らし、仲のいい関係でいられることが大事だ(それも、お互いが我慢をすることなく)。

では、どのような相手であれば、衝突せずに済むのか? “金銭感覚”、“衛生観念”、そして“余暇の過ごし方”についての価値観が合っているとぶつかりにくいのでは、というのが、私の長年の仮説だ。

金銭感覚は、人によって大きく異なる。どのぐらいから「お金を使いすぎている」と捉えるか、という支出の多寡についての感覚もそうだし、「何にお金を使いたいか」という優先順位や、理想の貯蓄額など、ずれが生じる余地は大きい。

我が家は幸いなことに金銭感覚が似ていて、子どもが生まれるまでは「宵越しの金は持たない」の精神で、貯金もせずにふたりで浪費を重ねてきた。使う先は、外食やワイン、調理器具など、ふたりで楽しめる食に関するものがほとんど。車やカメラといった大きな買い物でも、すんなり意見が一致した。ここの価値観が合っていなかったら、ぶつかることも多かったのではないかと思う。

衛生観念は、ずれていると綺麗好きな方がストレスを溜めることになりがちだ。自分ばかりが掃除をしているという感覚に陥り、家を汚くしたまま放っておける相手にイライラが募ってしまうだろう。「どのぐらい家がきれいであれば満足できるか」という基準が夫婦で揃っていると、家事の問題でぶつかることが少なくなるはず。

余暇の理想の過ごし方も、人によってさまざまだ。たとえば、休日。できるだけ友人と遊びに行きたい人もいれば、必ず家族で過ごしたい人もいるだろう。私の場合は、幼い頃から週末は家族で過ごす決まりになっていたこともあり、今は当たり前のように夫と過ごしたいと思っている。家族で丸一日過ごせる時間は、休日しかないのだから。もし、夫が頻繁に友人と遊びに行くタイプだったら、衝突してしまっていただろう(幸いなことに、夫は家族の時間を大切にしてくれている)。

最近は、上で述べた3点に加えて、子育てに対する価値観も大事だと思っている。どのような分担で育児をするか、子どもを育てるうえで何にこだわるか、など。産後に関係が悪化する夫婦の話もよく聞く。完全に意見が一致することなどあり得ないけれど、似た感覚の人と子育てができれば、心穏やかに日々を過ごせるだろう。

仲直りの仕方

もちろん、どんなに価値観が似通っていても、喧嘩になることはある。そんなときに、こじらせることなく前向きに仲直りができる夫婦は、いい夫婦だと言えると思う。

感情の昂りが一旦落ち着いたら、建設的に話し合う。これがとても難しく、私は感情的になりがちだったけれど、最近はまあまあ上手くやれていると思う。

大事なのは、話し合いの最中に相手を責めないこと。何が嫌だったのか、何が悲しかったのか、という事実を淡々と伝え、相手の言い分も聞く。その上で、これからどうするかを前向きに話し合う時間を多く取る。伝えたいことは事前に文章にしておくと、「相手を傷つけてしまう内容はないか」というチェックができるのでいい。

人生は短いのだから、大切な人と喧嘩をしている時間はもったいない。それよりも、笑って過ごせる時間を増やしたい。問題が生じたら、冷静に話し合って解決し、すぐに仲直りをする。怖いのは、喧嘩をしたまま家を出て、そのまま何かのきっかけで二度と会えなくなってしまうこと。どんなに腹が立っていても、顔を見て「行ってらっしゃい」と声をかけたい。

互いに尊敬し合うこと

夫にも、「いい夫婦ってどんな夫婦だと思う?」と聞いてみた。彼の答えは「お互いを尊敬し合える夫婦かな」だった。

気心がしれた相手だからこそ、ついからかったりしてしまうこともある。たとえば、「最近、太ったんじゃない?」みたいに。でも、そんなコミュニケーションが常態化してしまうのは怖いことだ。一番近くにいる人同士で、互いを下げ合って、いいことなどひとつもない。お互いが、自分を一番高めてくれる存在であるのが理想だと思う。それが、夫婦で一緒に過ごす意味にもなる。

自分はどうだろう、と振り返ってみた。夫が理想とする夫婦を実現できているだろうか。もちろん、彼の尊敬すべき部分はたくさん知っているし、それをなるべく口にするように心がけているけれど、日々一緒に過ごす中でからかってしまうこともよくある。夫の優しさに甘えず、改めないとな、と反省。

ふたりでいる意味

赤の他人だったふたりが、一緒に暮らすというのは大変なことだ。どうしても合わない部分はあるし、ぶつかることだって少なくない。それでも一緒にいることを選んだのだから、謙虚な気持ちでその意味を探っていきたい。

夫婦となったふたりは互いに、これまでの人生で「得意」や「好き」を見つけてきたはず。その領域を尊重し合い、無理のない範囲で乗っかってみる。相手のおかげで知らない世界に飛び込めて、その楽しさを知れたなら、そこにふたりが出会った意味が生まれる。

夫婦が互いの関心事に興味を持ち、ふたりで一緒に世界を広げていく。ひとりでいるよりも、ふたりでいる時間の方が楽しくなる。それが、私の考える理想の夫婦だ。

私たちは、夫婦になってまだ7年。これからもきっと、たくさんの課題に直面することだろう。それらを乗り越え、数十年後も夫婦で楽しく過ごせていたら、それほど幸せなことはない。

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執筆:おだりょうこさん
執筆:南かいりさん

東樹詩織

食や旅の領域でPR・ブランディングに携わる傍ら、執筆活動を行う。アートと本にのめり込み、「as human footprints」名義でZINE出版を開始。写真と動画の撮影・編集も。最近の関心事は、アジア各国のカルチャー、映画、海外文学、批評、3DCG、AI。キャンプ好きが高じて、東京↔︎信州・上田で2拠点生活中。