歴史・時代小説ってご存知ですか?有名どころでいうと司馬遼太郎の『燃えよ剣』とか『龍馬がゆく』とか。池波正太郎の『剣客商売』をご存知の方もいるかもしれません。でも、もしかすると、おじさん・おじいさんが読むものだと思っている方も多いのかも。
歴史・時代小説って、ある程度歴史の知識がないと読みにくかったり、聞き馴染みのない単語が多くて理解するのが難しかったりして、若い人にはとっつきにくい。考えてみたら、20代、30代の人が歴史・時代小説を好んで読んでいるところをみたことがありません。でも、世代を問わず読んでほしいんです。
歴史・時代小説のどこがいいって「日本の歴史を勉強したい」「小説を読んでリフレッシュしたい」「感動して泣きたい」という3つの欲求を同時に叶えられるんですよ。
さらに、現代の生活の便利さに感謝するきっかけになったり、反対に、不便な時代ならではの豊かさを知ることになったり。ある時代のある出来事のお陰で今の私たちがあるのだと気づいたり、この出来事がなかったら今の私たちはどうなっていたのかななんて妄想してみたり。
歴史と今の自分のリンクが、気持ちいいのです。
そこで、どんな世代の方にも読みやすくて泣けちゃう歴史時代小説を2作品をご紹介します。
羽州ぼろ鳶組(今村翔吾著)
火事が日常茶飯事で、ひとたび起こると死活問題だった江戸時代。侍火消の松永源吾の活躍を描いた物語です。最大の魅力は、ともかく登場人物が熱いこと。感情が心にぐわーって入ってきて、揺さぶられて、泣けます。主人公は武士なのに偉ぶったところがなく粋でかっこいい。なのに、妻にしっかり尻に敷かれているところが微笑ましい。
主人公とその妻以外も、キャラが濃くて魅力的。私の推しは、普段は頼りなくて抜けたところだらけだけど、刀を持たせたら最強の鳥越新之助くん。他のキャラもみんなどっかしらかっこいいので、読んだら推しができること、間違いなしです。
著者の今村さんが「江戸時代から現代に至るまで、火事の原因で最も多いのが「放火」です。つまり、その裏にはさまざまな人間ドラマがあったはずです」と言う通り、火事にまつわる事件ばかりなのに、背景や人々の思いが違うからか飽きずに読めちゃいます。火事という緊張感も相まって、手に汗握る展開が次々訪れ、ページをめくる手が止まりません。
歴史・時代小説を読んでいると「聞き慣れない単語が多すぎて、何言ってるかわかんない」となることもしばしば。対して『羽州ぼろ鳶組』は、文章表現がわかりやすいので歴史・時代小説初心者さんにもおすすめです。
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壬生義士伝(浅田次郎著)
浅田次郎といえば、2023年6月に神木隆之介主演で話題になった『大名倒産』、『プリズンホテル』などが有名ですが、イチオシなのは『壬生義士伝』です。
盛岡県の脱藩浪士、新撰組隊員の吉村貫一郎を主人公にした小説。吉村貫一郎は実在の人物です。近藤勇、土方歳三、沖田総司、斎藤一もちゃんと出てくるから、新撰組が好きな人にはぜひ読んでほしい。
と、ここまで書いて、一旦読み返すことにしました。いちばん最近読んだのはかれこれ2年前。上巻から読み直す時間はなさそうなので、下巻を手に取ります。
軽く読み直すつもりが、3時間経ってしまいました。涙で目の前が真っ白になり、文字が見えない。『壬生義士伝』の表紙の帯には「涙で文字がにじんだ」とありますが、にじんだどころではありません。なんも見えなくなった。目を開けていられない。途中でティッシュを取りに行きました。しかも、泣けたのが一部分だけならまだ良かった。下巻の80ページから物語が終わる435ページまでの間、ずっと顔をくしゃくしゃにしながら読むことになりました。久々に自分の嗚咽を聞いた。目尻が痛い。明日は目が腫れるでしょう。
本書で描かれているのは、薄っぺらい言葉で言えば、家族愛、友人愛、武士道、人としての正しさ、といったところでしょうか。愛ってどこまでも深くて、優しいんだななんて感じます。
ひとりで、静かな部屋で、他のことを考えなくて良い時間に読んでほしいです。盛岡の雪を眺めながら読めたなら、主人公の気持ちが心に入ってきすぎて、しばらく身動きが取れなくなりそうです。
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歴史を知らなくても大丈夫、ロマンがあるから
今回紹介したのは、歴史・時代小説のなかでも感情に訴えかけてくるシーンの多い2作品です。チャンバラシーンはそこそこに、心理描写が豊か。そのため、歴史の知識がなくても問題なく楽しめちゃいます。むしろ、感情を揺さぶられながら読み進めているうちに、気づいたら歴史の知識が身についてしまうんです。感動しつつ、教養が深まる。歴史・時代小説って、すごいんです。
騙されたと思って、ぜひ一度、歴史・時代小説を手に取ってみてください。