ここ数年ブームの、万年筆やつけペン用のインクにハマり、たくさん集めたくなるインク沼。「文字や絵をかかないし、自分には関係ない」という方もいるだろう。でも、わたしは感性が豊かでこだわりが強い人はインク沼にハマる才能があると思うのだ。
自身もインク好きであるわたしが、インク沼にハマりやすい特徴を5つ挙げてみた。もしかしたら、あなたも当てはまるかもしれない。
わたしのこと
- 年齢:30代
- 性別:女
- 職業:ライター
- ライフスタイル:誰かと同居、インドア派、リモートワーク/色の違いに敏感
1. 色の違いに敏感な人
「美術の授業のとき、絵の具で描きたい色の再現にこだわった」「雑誌で見て欲しいと思った服の色が、店舗で見たら理想と違うので買うのをやめた」など、色の微妙な違いにこだわりはないだろうか。他の人からは「違いがわからない」と言われるような色の違いに敏感な人ほど、インク沼にハマる素質がある。
“筆記欲に従ったら“万年筆”がわたしの正解でした”の記事でも取り上げたが、実は、万年筆やつけペン用のインクは色数が驚くほど豊富なのだ。そのうえ、同じ“ブルーブラック”という名前のインクでも、メーカーによって暗い青や明るい青、赤みがかった青や緑がかった青、さまざまなバリエーションが存在する。
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セーラー万年筆 ゆらめくインク 寒暁(KANGYOU)
さらに、インクの濃淡や時間経過、書いた用紙によっても発色が変わるのがインクのおもしろさである。そのなかでも、セーラー万年筆の『ゆらめくインク』は、色変化を楽しむために開発されたインク。インクを紙に乗せた瞬間から色が変化し、さまざまな表情を見せてくれる。
インクの持っている色の違いや筆記具による発色の違いは奥深い。だからこそ、色の違いに敏感な人のこだわりを満たしてくれるだろう。
2. ネーミングやモチーフが気になる人
「好きな漫画やアニメのキャラクターの名前の由来を考えてしまう」、「キャッチーな商品名を見るとうれしくなる」ような、ネーミングやモチーフが気になる人もインクを楽しめる。インクには、色に合わせた印象的な名前が付いているものがあるのだ。
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パイロット iroshizuku-色彩雫(いろしずく)
左:月夜(tsuki-yo)右:春暁(syun-gyo)
いくつか例を挙げると、パイロットの『iroshizuku-色彩雫(いろしずく)』シリーズは、日本の美しい情景を名前に採用している。『月夜(tsuki-yo)』や『春暁(syun-gyo)』など、日本語ならではの自然や季節感を表す言葉は、インクの色と相まって景色が目に浮かぶよう。
アメリカのMonteverde(モンテベルデ)は、さまざまなテーマを取り上げたインクのコレクションがある。そのうちのひとつに、人間の感情を表現した『ミニボトルインクエモーション』がある。『ジョイセピア (喜び)』や『カインドネスピンク (親切)』など、自分自身の感情の色と近いか比べてみるのもおもしろい。
物語そのものがインクのモチーフになっているものも。例えば、大阪の筆記具を扱うネットショップのペンハウスが展開している『Pent コトバノイロ』。日本の近代文学をテーマにしており、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』や夏目漱石の『こころ』など、物語に思いを馳せながらインクを使ってみたい。
色と併せて、インク名に惹かれて手に取るのも選び方のひとつ。豊富なインクの名前は、ネーミングやモチーフが気になる人の好奇心を刺激してくれるはずだ。
3. コレクション欲がある人
限定品やご当地アイテムに目がない人は、インク沼の住人になる素質がある。インクには、その時期やイベントでしか手に入らない限定色や、地域の文具店でしか購入できないインクが数多く存在するのだ。
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文具女子博オリジナルインク
左:#018 どきどき!シティブルー 右:#019 きらきら!ネオンピンク
文具を取り扱う代表的な催しと言えば、日本最大級の文具イベントである女子文具博。メーカーの方たちと直接会話しながら文具を検討できるのが魅力だが、オリジナルアイテムにも注目したい。2024年から2025年にかけては、開催テーマ“どきどき!ネオ文具シティ”をイメージしたインクを2種類販売している。
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felissimo chocolate museum×Kobe INK物語 特別色 ストロベリーチョコレート
地域の文具店でしか購入できないインクは、その土地の風景や特産品をモチーフにした“ご当地インク”がおもしろい。ご当地インクやショップオリジナルのインクの先駆けといえば、兵庫県の老舗文具店ナガサワ文具センター。2007年から販売している『Kobe INK物語』は、神戸の風景を色で表わしている。
「イベント限定の一本を狙う」「旅行先で見つけたインクを記念に購入」など、インクとの巡り合いがコレクター魂に火をつけてくれるだろう。
4. 美しいものに惹かれる人
インクの魅力は色だけではない。ボトルのデザインや形状、美しいパッケージなど、その見た目にも心を奪われる人が多い。中にはキラキラと輝くシマー(ラメ)や、香り付きのインクなど、ひと味違うアイテムもある。
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Ferris Wheel Press FerriTales™ Collection Tears of Sapphire
カナダの筆記具ブランドFerris Wheel Press(フェリスホイールプレス)のインクは、香水瓶を思わせる優美なボトルデザインとインクの世界観を表すパッケージで、思わず集めたくなってしまう。シマー入りのインクを振ると、スノードームのようなきらめく輝きが楽しめる。
エルバンの『香りつきインク』は、『レモングリーン』や『カカオブラウン』など、植物をモチーフにした色と香りが楽しめるインク。ふたを開けたとき、つけペンで文字をつづるとき…自分の好きを視覚と嗅覚の両方で満たしてくれるインクなのだ。
「美しいものを手に取って楽しみたい」そんな気持ちを満たしたい方は、ぜひインク集めを検討してみてほしい。インクはデザインを見ても楽しい、実際に書いてみても楽しい芸術品なのだから。
5. オリジナルアイテムが好きな人
「自分だけの特別なもの」が好きな人にも、インクはぴったりである。カスタムインクを作れるサービスや混色できるインクを利用すれば、自分好みの色のインクを手に入れられるのだ。
プロに目の前で調色してもらいたい方
自分で用意した印刷物や画像、主催者が用意した色見本を元に、作りたい色のイメージを相談しながらインクを混ぜ合わせて作ってもらう。
- セーラー万年筆『インク工房』
全国各地の販売店に、インク調色のプロであるインクブレンダーが訪問。開催場所は、セーラー万年筆公式サイトのイベント情報や販売店の公式サイトやSNSをチェック。 - Tono&Lims『Ink Lab』
“との”さんと“リム”さんが立ち上げたインクユニットTono&Lims(トノアンドリムズ)。主催するイベント『A Space Walk(宇宙遊泳)』やコラボインク販売店にて、『Ink Lab』を実施。開催場所は、Tono&Lims公式Xや、コラボインク販売店の公式サイトやSNSをチェック。
自分でスタッフと相談しながら調色してみたい方
- カキモリ『Inkstand by Kakimori』
東京都台東区の文具店、カキモリにて実施。自分で17色の混色キッドを使い調色し、スタッフが制作。公式サイトにて予約が必要。
自宅で調色してみたい方
基本的に市販のインクは、異なるインク同士を混ぜ合わせることができない。理由は、インクの中に含まれる薬剤が化学反応を起こす可能性があるため。しかし、混ぜることを前提とした調色を楽しめるインクもある。
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ink-café 上:ピンク 中:イエロー 下:ブルー
- プラチナ万年筆『ミクサブルインク』
- セーラー万年筆『STORiA MiX』
- 呉竹『ink-café』
先に挙げたインク以外にも混色できるものがある。ただし、混色できるインクでも別メーカー同士の組み合わせは推奨しない。
インク作りを体験すれば、一滴色を加えるたびに表情を変える、インクの奥深さに気づくだろう。自分の思い出や大好きな推しをテーマにした色を作れば、そのインクは世界にひとつだけの宝物だ。
感性が豊かな人はインク沼の才能がある
正直なところ、文字を書くだけなら黒インクひとつあればいい。それでも、些細な色の差やネーミングが気になる人、シチュエーションで色を変える人は感性が豊かな人だと思う。
まずは、気になる一本を手に取ってみてほしい。その色があなたの日々にどんな彩りを加えてくれるのか。それを確かめる才能があなたにはあるのだから。