寒さとあたたかさ、雪と晴れ、さまざまな落差のなかで【今週の選択肢 #11】

「心が動く瞬間」という、わかるようなわからないことを切り取って言語化したい。

そんなことから心が動いた瞬間、とくに「選ぶ」ということに着目した連載をしております。

編集長自らの一週間のなかから“選んだ”ことをまとめた「今週の選択肢」。
第11回をお届けします!

しじみのチカラ(2月3日10時54分)

この日は愛犬ドレ(7.5キロ)を背負って、父親の誕生日祝いに吉祥寺まで。
遅めの時間帯でわんこOKカフェのランチを予約してあるのに、朝ごはん抜きのお腹が何か入れろとうるさい。

犬を連れているとコンビニなどには入れないし、ランチを控えているのもあって駅のホームに並ぶ自動販売機を覗き込む。

駅のホームに立つとピリッとした風が頬を打つように寒い日で、おのずと選択肢は「あったかい」ドリンクに絞られた。空腹を落ち着かせてくれそうな面々が出番を待っている。

いつもだったら迷わずコーンポタージュのボタンを押すところなんだけど、ラインナップの豊富さに逆に目を奪われる。しばしのにらめっこ。

選んだのは、かの有名な「しじみ70個分のちから」ブランド。

この前日はイタリアンでワインをかぱかぱ空けた。胃腸の疲れを感じていて、ほんの少し自分の身体を気遣う気持ちが働いた。ギュッと濃縮…と謳うだけあって、その塩気が空きっ腹に染み渡る。

さて、ずっしり重いウチのドレくん。いつもよりもおとなしく犬用リュックに収まって、無事目的地に到着。
なんだか不満げなのはバッグに入れられての電車移動があんまり好きじゃないせいかも。

このあと元気な姪っ子が合流してたくさん遊んだから、帰りの電車はよく眠っていて、体重を預けてくるドレの重さはさらにずっしりと感じた。

スープストックトーキョーに救われる朝(2月6日8時07分)

プチ出張で西船橋のビジネスホテルに宿泊。
前日に降った雪の影響か、慣れないホテル泊のせいか、不思議と早く目が覚めた。

テレビでは各地の雪の様子を延々と流していて、代わり映えしない情報が続いている。雪国の人から見れば呆れるような内容だろうけど、やっぱり少しわくわくしちゃうわたしがいる。

朝は大の苦手だけど、早起きできた。知らない土地で朝から行動してみるのもいいじゃない?と思い立つ。朝食なしプランだったのでそそくさと身支度を済ませ、早めにチェックアウトすることにした。

ホテルを出ると雪はしっかりと層をなしていて、歩道には点々と足跡が並んでいる。車道からぐずぐずと溶けはじめていくのがなんだかもったいないように感じた。

雪になじみのない東京生まれ東京育ちのわたし。関東での雪は何度目になるだろうか。
子どもの頃は年に一度くらいは大雪が降って、校庭で雪合戦をしたり、かまくらをつくってみたり、そんな記憶がうっすらとあるが、大人になってからの雪の記憶はほとんどない。

履いてきた長靴が沈む様子を楽しみながら歩いていたけど、駅に近づくにつれて人の多さと雪の白さは反比例していく。束の間の雪遊びはおしまい。通勤の人の流れに乗って駅の構内に入った。

ホテルを出る前にGoogleマップで「朝食」を検索しておいた。
開店時間と駅ナカの立地がちょうどよく、選んだのは…みんな大好き!「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」

野菜と鶏肉のトマトシチュー、とうもろこしとさつま芋のスープ、白胡麻ご飯のセット

外の寒さと温かいスープの落差も楽しい、雪の日の朝ごはん。
「近隣出張と雪と早起き、そんな掛け合わせはもうきっとないだろうな」なんて思いながら、ラップトップを開いて少し仕事をした。

横浜の街を歩く(2月8日14時39分)

一応…会社の経営者だったりもするので、たまにはこんなところにも行く。横浜地方法務局。
事務手続きが好きになることも得意になることもきっとないけど、普段行かない場所に行くっていうのはそう悪くない。

こんな天気のいい日ならなおさら!

桜木町駅から馬車道方面へ。
新旧さまざまなビルが連なるなか、抜けるような空が覗く。

このあたりでもレトロな雰囲気が目立つ、横浜第二合同庁舎。以前から街歩きするたびに気になっていた。横浜地方法務局はこの建物内に入っている。

横浜市認定歴史的建造物に認定されているとあって、その重厚感に背筋が伸びる。警備員さんとすれ違って会釈を交わせば、なんだか大人気分が味わえた。まぁ、事実いい大人なんだけど。

調べてみると、横浜にはこの歴史的建造物の認定が下りている建物が100以上もあると知る。

当たり前に歩いている風景のなかで歴史を感じられるっていいな。横浜の街並みが素敵なわけだよね。

法務局での手続きは自分でするにはちょっとむずかしくて面倒だったけど、司法書士さんに頼らずやってみたのもわたしにとっては貴重な選択のひとつだった。

まだまだ大人気分を味わえるシーンがあるということ。それは、自分の伸びしろを感じることでもあるんだな。

伏見 香代子

「Sense of…」編集長/聞き手クリエイション責任者/1979年、東京都生まれ。文学少女からコギャルを経て、広義の編集者に。WEBコンテンツ&クリエイティブ、マーケティングに関わること20年超。感性至上主義。好きな映画は「カラー・オブ・ハート」って答えることにしている。