コロナ禍が変えた“誘うハードル”と「楽」でいられる友人関係【遊び場の変遷 #3】

学生時代、地元の定番だったあの場所は今どうなっているだろう。
社会人になってすぐの頃はまだ学生時代の延長みたいな遊び方をしていたのに、何が変わったかよくわからないうちに遊ぶ人も場所も変わった。

環境が変わっただけ?それとも、わたし自身が変わったの?
そんなエピソードを手繰り寄せて。

遊び場の変遷は、あなたの変遷かもしれない。第3回をお届けします。

七海さん(35歳)の場合

中・高生時代

休日は原宿、渋谷が定番ルート。
原宿のアイドルショップで待ち合わせ、プリを何枚か撮って、プチプラの雑貨やアクセサリーを巡り、合間にそんなにおいしくもないごはんを食べる。

そのままぶらぶら渋谷まで歩いて、喋って、解散!

平日は学校近くのファストフード店で喋るか、ファミレスで延々とドリンクバーで粘る日々。

専門学校時代

休日はコンビニバイトばかりしていた。

目的としては、食費や娯楽費がお小遣いだけでは賄えず、今で言う“推し活”資金として必要だったため。コンビニバイトって覚えることがけっこう多い。レジ以外にも宅配便の受付やコーヒーの補充など多岐に渡って、飽きることはなかった。

平日は時間が空いたら学校の近くにあったカラオケに行きまくる日々。
そのとき流行っていた曲を適当に歌うこともあったけれど、基本的にはアイドルソングやアニメソングが中心。

周りの友だちもわたし自身も「お互いに知っている曲、盛り上がれる曲」よりも「自分が歌いたい曲、あるいは布教したい曲」ばかりを選曲していた。たとえば、アルバムにしか収録されていないソロ曲を入れても誰も気にする素振りはなかった。

振り返ってみると“何をするにも一緒でお互いに合わせる”ようなことはなく、“たまたま同じ時期に同じ学校に通っているからなんとなくつるんでいて、そこまでお互いに強い興味はない(でも仲はいい)”…みたいな関係性だった気がする。わたしもそれが楽だった。

(もしかしたら友人側はまた違う捉え方をしていたのかもしれないけれど、卒業したあとはいつの間にか疎遠になったから、大きく認識違いがあるわけでもないように思う)

カラオケ以外では、ひたすらコンサートやライブ観劇に通っていた。

20代

新宿、渋谷、池袋…
どこからでもアクセスしやすい駅やお互いの中間地点で集まることが増えた。
友だちと一日中遊ぶようなことはあまりなかった。

専門学校時代は同級生と遊ぶことが多かったけど、卒業してからは自然と疎遠になり、別のオタク友だちと遊ぶことが増えた(当時mixiで繋がった子とか)。

朝から待ち合わせて夜までずっと一緒に過ごすみたいなことはほとんどなくて、ランチかディナーどちらかの食事に合わせて数時間を過ごすことが増えた。

30代~現在

新宿、渋谷、有楽町…
職場の人と定時後そのまま飲むか遊ぶかというのが楽になり、それまでの友人たちとは年イチで会うか会わないかくらいになった。

社会人生活が長くなり、だんだん体力も減ってきた。それに、20代から仲がいい子とはすでにたくさんの時間を過ごしてきたから、がっつり遊ばなくてももう関係を保てることがわかった。お互いのライフステージの変化も大きい。

昔は一日中ライブDVD鑑賞会とかしていたけれど、今はライブには行ってもDVDまでは一緒には見ない。

コロナ禍以降、知らないうちに感染させてしまったらと思うと自分から人を誘うことが怖くなった。
職場の人はいつも会っているから、その延長で食事に行く心理的ハードルは低い。

学生の頃みたいにイチから友だちを作る環境にないから、同じ職場を選んだ人とはそれだけで会話の内容や感性が噛み合うことが多く、話しやすいと感じる。

それでも昔からの友だちはあちらから「そろそろ会おうよ」と言ってくれる。感染症の心配もあるし、自分の体調面の事情もあって「相手が迷惑と思っているかもしれない」という気持ちが強いため、自分からはなかなか誘えない。こんなわたしとそれでも会いたいと言って、関係を切らないでいてくれる友だちには感謝しかない。

あとは共通の好きなアーティストがいる友だちとは年イチのライブツアーの日に会場で会っている。
これはまだしばらくは続きそうな関係だ。

*
保守的にも思える七海さんの友人関係だけど、その時どきで自分が過ごしやすいようにちゃんと選んでこれてるみたい。

友人は多ければいいわけじゃなくて、ちゃんと続いてる関係性にこそ意味がありそう。これからも無理のない友人関係が続いていきますように。

遊び場の変遷は、あなたの変遷かもしれない。

※この記事はアンケートをもとにご本人にお話を伺い、筆者がまとめたものです。

伏見 香代子

「Sense of…」編集長/聞き手クリエイション責任者/1979年、東京都生まれ。文学少女からコギャルを経て、広義の編集者に。WEBコンテンツ&クリエイティブ、マーケティングに関わることそろそろ四半世紀。好きな映画は「カラー・オブ・ハート」って答えることにしている。感性至上主義。