「わたしの香り」を見つけよう!興味深いニッチフレグランスの世界

香水の世界は奥深い。試そうと思ったら香料の組み合わせはほぼ無限だし、ブランドも銘柄も数え切れないくらいこの世にある。

だからこそ「自分の香りはこれ!」といえる香水に出逢えたらうれしい。

自己表現の手段として、そして気持ちにそっと寄り添ってくれるお守りとして、わたしは日々好きな香りを纏う。

なぜ香水が、そして香水選びが好きなのか。ニッチフレグランスとの出逢いも交えながら言語化してみる。

そろそろ自分の香りが欲しくない?

ほぼ無限といってもいいくらい世の中に存在する香水。

有名なブランドの香水や定番ものはいろいろ試してきて、お気に入りの銘柄もいくつか見つけていたけど、いつも漠然と思っていることがある。

「これが自分の香り」って言える、アイコニックなアイテムに出逢いたい!

香りそのものはもちろん、ボトルのデザインや銘柄の名前、込められた意味も含めて、しっくりくる1本を見つけたい。

この欲求を紐解くと、多分こう。

何度もリピートしたくなる大好きな香水を、名刺のように“自己紹介(=自己表現)の一部”として持っておきたい。

わたしは街を歩いている他人や知らない人と香りが被るのはそんなに気にならないし、むしろ好きな香水はレビューを読んで「これ、いい香りだよね!」って共感したいくらい。

でも、身近な人とはあんまり被りたくない。できればブランドも違うものを使いたい。

自分に自信がないから、比較されるのが怖いのかな?

それもあるけど、“どのジャンルでも自分が好きなものの傾向を言えるようになりたい”という欲求が根底にある気がする。

コーヒーでも、お酒でも、入浴剤だって“わたしのお気に入り”を言える自分でいたい。

だから自分の好きな香りも把握しておきたいし、“今のわたしらしい香水ってどんなもの?”を探してみたいのだ。

今回はわたしなりの香水との付き合い方や、よりニッチな香水に出逢えるようになったきっかけを深掘りしてみる。

初めて好きな香水を買った記憶

あなたは初めてつけた香水を覚えているだろうか?

初めて自分のお小遣いで買った香水の香りを、そのときの気持ちを、今も鮮明に思い出せるだろうか?

わたしが初めて香水を買ったのは高校生のときだった。

少し背伸びする気持ちでボトルを眺め、テスターを手にとって嗅ぎ比べる。おしゃれに疎かったわたしにとってはブランド名も銘柄も知らないものばかりで、手に取るものすべてにワクワクした。

ひとつ試すたびに、知らない世界が開けていく。

百貨店やハイブランドのショップに行く勇気はなかったけど、ドラッグストアや量販店、街角の香水専門店あたりをはしごして選ぶだけでも十分に楽しくて、今思えばこの時から“自分の好みは何か”に興味津々だった。

そのうちにトップノート、ミドルノート、ラストノートという概念を知り、どんな香調なのか構成を見ては好きな香りの共通点を探した。いまでも香調を見てどんな香りなのか想像する瞬間はとても楽しい。未知への探究心が刺激されるからかな。

ちなみに学生時代からのお気に入りで長く使っていた銘柄は「ブルガリ プールオム(BVLGARI POUR HOMME)」

名香と称される逸品だから、「自分も使ってた!」という方も多いかも。メンズでもレディースでも使いやすい香りは嫌味がなくて、シーンも選ばないから学生でも違和感なく身に纏えた。

思えばこの頃からウッディ、フローラル、ムスク系の香りが自分の好みだ。

自分の香りに迷ったら、初めて選んだ1本や初めて長く使った1本に立ち返って分析してみるのもアリ。

わたしが香水を纏う・使い分ける理由

香水はいわゆる嗜好品。

言い換えれば、使っても使わなくても自由で、義務じゃない

でもわたしは使うし、何種類も集めて気分で使い分けている。

じゃあ、どうして香水を纏いたくなるのか?どんなシーンで使っているのか?改めて理由を考えてみる。

  • 自分らしさを表現する手段として
  • 好きな香りで毎日を彩るため
  • 何かするのが億劫なとき、気分を上げたいときに
  • シーンに合わせて自分のモードを切り替えたいときに
  • 薄いベールを纏う感覚で、お守り代わりに
  • 思い出を香りでも残しておきたいときに

こうしてみるとわたしは、“こう振る舞いたい”と思った理想の自分に言動をチューニングするために香水を使っている。

それはきっと、自分というものが多面的だから。

向き合う人によって、あるいは仕事なのかプライベートなのかの場面によって、どんな自分が相応しいのかは違う。

だから使い分けるし、お気に入りの銘柄はひとつじゃなくたっていい。

名刺をデザイン違いでいくつも持ったっていいように、いくつか肩書きを持っている人がシーンによって名刺を使い分けるように。

ごく親しい人に見せる自分と、社会的な場面での自分の振る舞いを無意識に切り替えているように。

「自分=この香り」も、ひとつに絞らなくたっていいのだ。

実際、わたしは仕事モード用の香水はなるべくプライベート用と分けている。

香りの記憶って不思議なもので、有名なある曲の歌詞でも表現されているように、昔使っていた香水や印象的な香りをひと嗅ぎするだけで、一瞬で当時の気持ちが蘇ってくると知っているから。

靄がかかっていた記憶がクリアになって、自分がそのときにタイムスリップしたような浮遊感を味わう(これは少し、音楽とも似ている)。

仕事が楽しい記憶ばかりだったらいいのだけど、ときには悔しい思いや理不尽な思いだってする。そういうときは、仕事モードでキリッとした自分になれる(気がする)香水に受け止めてもらっている。

「新世紀エヴァンゲリオン」に出てくるATフィールドのように、自分と世界を隔てる壁、あるいは盾のような役割といえるだろう。

香水探し〜ニッチフレグランスとの出逢い

プライベート用でも仕事用でも、「自分といえばこの香り!」が欲しい。まず香水を選ぶこと自体が好きだし、数年ごとに“今の自分に合う香り”にアップデートしたくなる。

何度目かの香水探しをしていたとき、香水専門店「NOSE SHOP(ノーズショップ)」の存在を知った。ニッチフレグランスを多く取り扱うショップで、東京都内だと新宿や渋谷、有楽町、池袋、麻布台などに展開している。

ニッチフレグランスの定義は諸説あるが、生産量が少なかったり、世界観を重視していたりするものが当てはまる。メインストリームのブランドとは異なるものの、世界的な有名ブランドや名香を手掛けた調香師が携わっている銘柄もあるから面白い。

知ったきっかけはX(旧Twitter)に流れてくるフレグランス紹介のツイートだったかな。

こちらのお店、とにかく感性に訴えかけるような紹介文が魅力的。気になる人はぜひ公式オンラインショップの商品ページや各店舗のXを覗いてみてほしい。

香水のブランドや銘柄一つひとつにストーリーがあって、どんな物語が自分に刺さるかは出逢うタイミング次第。NOSE SHOPはそんな当たり前のことを思い出させてくれる。

ここでもわたしは気になった銘柄の香り成分に思いを馳せて妄想し、試してみたい香りをいくつか見つけて、すぐにショップ店頭へ足を運んだ。

平日の夜でも入れ替わり複数のお客さんが立ち寄っていて、思い思いにサンプルの漏斗を嗅ぎ比べている。わたしに接客してくれた店員さんに好みを告げると何種類も提案してくれて、知識量に驚かされた。

店内を見渡しても、わたしがこれまで試してきたブランド名はどこにもない。

どれもこれも新鮮で、人生で初めて香水を選んだときの気持ちをまた体験できるなんて!この時点でかなり心を奪われていた。

NOSE SHOPの香水ガチャが楽しい!

いくつか候補を肌乗せしてから、人気だという香水ガチャをやってみることに!(※実施店舗が限られているので、行く前に公式サイトで確認がおすすめ)

これはミニサイズの香水がランダムで出てくる、いわばお試し&運試しのガチャガチャ。月毎にいろいろテーマがあるらしく、出る香水は季節に沿ったものやブランド縛りなどそのときによってさまざまだ。

オンライン限定のガチャもあったけど、店舗で引いたらその場で店員さんが解説してくれて、ブランドや銘柄がもつストーリーへの理解が深まるのがうれしい。

2回引いてわたしの元にやってきたのはド好みのバニラ系と、自分では選ばなかったであろう「ゴミの花(※)」という衝撃的な名前の香水。

かなり端折って説明するが、アップサイクルで香料の残滓を活用しているからこの名前になっているよう。これが嗅いでみるとフルーツのような優しさと甘さのある香りでさらに驚き!

意外な出逢いを楽しめる上、1回1,000円前後かつ少量だから「毎月違う香りを試したい」なんて欲も満たしてくれる。

わたしの香水体験に新たな選択肢が加わった瞬間だった。

人と被らない香りがほしい人や、自分で選ぶといつも似たような香りになってしまう人に香水ガチャはおすすめだ。

※Etat Libre d’Orange「レ フルール デュ デシェ — アイ アム トラッシュ|ゴミの花」

「自分といえばこの香り」…探求は続く

NOSE SHOPに行ったわたしはいろいろ香りを試して、なんとその日に即決で「これ買います!」と100mLボトルを購入するほど好みな銘柄に出逢った(バリバリに現役で使っているため銘柄は伏せる)

さっそくプライベート用の一軍に仲間入り。“楽しみレベル:高〜最高”の日にヘビロテしている(ということは、“そこそこ楽しみな日”や“無難に用事をこなす日”の香水が別途必要だ。香水探求には終わりがないのである)。

人と被ったことは今のところない。

ただ店舗では人気ランキングが掲示されている=ニッチフレグランスの世界に興味のある人がたくさんいるし、肌乗せしているお客さんもよく見かけるから、香水好きな人が身近に現れればもしかしたら被ることだってあるかも。

でも、よく考えたらニッチフレグランスの中でさらに同じ銘柄が好みなんて、かなり感性が近いのでは?

きっとその人とは話が合うはずだ。出逢う可能性があるならそれはそれでちょっと楽しみになってきた。

ニッチフレグランスの世界は想像よりもずっと広大。近くで同じ香水が漂ってきたら、心の中でワクワクすることにしよう。

明日はどんな香りを纏って“自分”を生きようか?

香水探しの旅は続く。

織詠 夏葉

おりえ なつは。暮らしのメディア、おでかけメディアにてライターを務める。約3年間エディターやコンテンツディレクターとして稼働し、個人でも執筆活動を開始。映画や音楽、ファッション、雑貨、香水、推し活などに広く浅く興味津々。