新大久保に、魅せられて

若者で埋め尽くされ、活気に満ちた通り。カラフルな色使いの飲食店にコスメショップ。店頭ではK-POPが流れ、ハングルで表記された看板が街を彩る。

新大久保駅から大久保通りに足を踏み入れると、韓国の繁華街に迷い込んだような錯覚を覚える。ここは、都内随一のコリアンタウンだ。

韓国が恋しくなったときは、新大久保を訪れると心が満たされる。現地に近い味の韓国料理を楽しめる上に、ソウルで流行しているコスメを手に入れることもできる。

今年の1月に韓国を訪れて以来、新大久保にほぼ週1回のペースで通っている。今回の記事では、この街の楽しみ方をいくつかご紹介したい。新大久保散策の参考になれば幸いだ。

新大久保ってどんな街?

訪れたことがない方に向けて、この街の立地から説明したい。新大久保は東京都新宿区に位置するエリアで、電車を使う場合はJR山手線の新大久保駅で降りると便利だ。

新大久保駅は、新宿駅の隣駅である。そのため、散歩がてら新宿駅から歩くこともできる。駅と駅の間は、徒歩で約20分ほどの距離だ。歌舞伎町のメインストリートを通り、ホテル街を抜けていくルートとなるので、東京の艷やかな表情を垣間見ることができて面白い。

目的地によっては、東京メトロ副都心線や都営大江戸線が通る東新宿駅や、西武新宿線の終点である西武新宿駅が最寄りになる場合もある。JR中央・総武線の大久保駅からも比較的近い。

新大久保エリアには、2本の大通りがある。ひとつは、新大久保駅を出たところにある大久保通り。もうひとつは、大きなドン・キホーテがある職安通りだ。

大久保通りと職安通りを歩くだけでも、軒を連ねる飲食店の数に圧倒されてしまうが、加えて2本の大通りをつなぐ路地もチェックしておきたい。路地にはイケメン通りや西大久保公園通りといった名前がついており、こちらにも人気の飲食店が多く立ち並んでいる。

気になった店にふらりと入る楽しみ方もあるが、有名店は混雑しがちなので、どうしても食べたいものがあるときは予約をして向かうのがよいだろう。

もちろん、食事だけでなく、韓国コスメなどを探し歩くショッピングも楽しい。同じシートマスクが、ソウルで買ったときよりも安く売られていて驚いた。

新大久保で、本場の味に出会いたい

毎週のように新大久保に通う中で、お気に入りの韓国料理屋さんが何店舗も見つかった。何度も訪れたいと思えるお店をここで紹介する。

美名家

『美名家(みなや)』は、新大久保でいちばん好きなお店だ。何を食べてもおいしい。メニュー数が多く、いろいろな料理を試してみたいのだが、もう一度食べたいメニューも多数あるので毎回注文の際に悩んでしまう。

店員さんのおすすめは、茹で豚を野菜で包んで食べるポッサムと、揚げたホタテにたっぷりと甘辛いソースをまとわせたヤンニョムホタテだ。ホタテには卵もついており、濃厚な味わいがお酒に合う。

『美名家』では、セリチヂミもぜひ食べてほしい。「生地よりもセリの分量の方が多いのではないか?」と思えるほど具だくさんで、とても香りが高い。他では出会ったことのない、満足感の高いチヂミだ。

看板メニューのポッサム

明洞タッカンマリ

タッカンマリとは、鶏を1羽丸ごと煮込み、ぶつ切りにして食べる鍋料理だ。ソウルの東大門には“タッカンマリ横丁”と呼ばれる通りがあり、タッカンマリを提供する食堂が多く軒を連ねている。

『明洞(ミョンドン)タッカンマリ』は、本場韓国のタッカンマリ横丁内に本店があるという。現地の雰囲気を感じられる店内は、活気に溢れて居心地がよい。鍋やコンロも、韓国で目にしたものと同じで趣がある。ニンニクの効いた鶏のスープがたまらない。

サムスンネ

合鴨料理が食べられる『サムスンネ』は、予約をして訪れたい人気店だ。オモニ(韓国語でお母さんの意)が焼いてくれる合鴨は驚くほどやわらかい。薄く切られた大根の醤油漬けで、肉をくるりと巻いて食べる。

オモニにスンデ(豚の腸詰め)を頼んだところ、「スンデよりも燻製鴨手羽先を食べた方がいいよ」と、半ば無理やり注文の内容を決められてしまう。そんなやり取りは、とても現地感があって、なんだか楽しい。おすすめいただいた燻製鴨手羽先は、燻製の香りが素晴らしく、お酒が進むおつまみだった。

合鴨の塩焼き

トシオブ

「韓国料理を食べるとなると、いつもお肉になっちゃう」という方におすすめしたいのが、『トシオブ』だ。“韓国刺身専門店”という表記のとおり、海鮮料理のメニューが豊富にある。

特に感動したのは、ムルフェだ。少し辛みのある冷たいスープに、野菜とお刺身がどっさり入った料理である。韓国でよく食べられているホヤまで入っており、本場感がある。ヘルシーで、暑い日にも食欲を増進させてくれるムルフェは、家でも時々は作るものの、やはり『トシオブ』で定期的に食べたくなるのだ。

珍味好きなら、エイも試してみてほしい。「世界で2番目に臭い食べ物」とも言われているエイには、強いアンモニア臭がある。これをポッサムとキムチと合わせて食べる。強烈な香りに驚くが、癖になってしまうから不思議だ。

ムルフェ

家で韓国料理を作るなら

新大久保には、韓国食材を扱う大型のスーパーマーケットが2店鋪ある。『ソウル市場』と『韓国広場』だ。国内のスーパーマーケットでは見つけにくい品も手に入ることが魅力である。

たとえば、マッコリや韓国焼酎などお酒類の品揃えが多く、また、キムチの種類も豊富だ。“エゴマの葉のキムチ”など、珍しいキムチが棚にずらりと並ぶ。キンパ(海苔巻き)やスンデなどの惣菜もあるので、手間なく自宅で韓国料理パーティーを開催できる。

家でサムギョプサルを作りたいときは、ここで豚バラブロックやサンチュを買う。豚バラブロックは家の近所のスーパーでは売り切れていることもあるのだが、新大久保のスーパーでは在庫が豊富なので必ず手に入る。スライスされたにんにく、カットされた青唐辛子、辛味噌がセットになったパックも売られているので、とても便利だ。

他にも、韓国の冷凍食品やレトルト食品、お菓子などが多数あり、見飽きることがない。新大久保を訪れたときは、立ち寄りたいスポットのひとつだ。

自宅でサムギョプサル

実は韓国だけじゃない、新大久保の魅力

新大久保と言えばコリアンタウンのイメージが強いが、ベトナム人、ネパール人をはじめ、東南アジアやインド周辺、中国等からの移民も多い街だ。

新大久保駅を出て斜め左に進んだ辺りには、ハラルフードを扱う店鋪が立ち並んでいる。“イスラム横丁”と呼ばれるエリアだ。ここでは、カレーに使えるスパイスなどを手に入れることができ、韓国の雰囲気が漂う通りとはまた違った魅力がある。

また、イスラム横丁の近く、大久保通りに面した場所には、中国食材を扱うスーパーマーケット『華僑服務社』がある。本格的な中華を自宅で作りたい人は、ぜひ訪れてみてほしい。地下1階、2階、3階と、3フロアに渡って、中国を中心としたアジアの食材や調味料、酒類などがずらりと並ぶ。私は火鍋の素を買って帰ることが多い。本場の火鍋の素は、国内ではなかなか出会えない辛さで、癖になるのだ。

室橋 裕和さんの著した『ルポ新大久保 移民最前線都市を歩く』では、移民の街としての新大久保が詳しく紹介されている。国際都市としての新大久保に興味のある方へおすすめしたい。

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魅力たっぷりの新大久保は、一回訪れただけでは楽しみ尽くすことが難しい。ぜひ定期的に通って、この街のさまざまな表情を発見してほしい。

東樹詩織

食や旅の領域でPR・ブランディングに携わる傍ら、執筆活動を行う。アートと本にのめり込み、「as human footprints」名義でZINE出版を開始。写真と動画の撮影・編集も。最近の関心事は、アジア各国のカルチャー、映画、海外文学、批評、3DCG、AI。キャンプ好きが高じて、東京↔︎信州・上田で2拠点生活中。